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自分の「譲れない一線」を勝負どころで守れるか

作家の手嶋龍一氏「人生の価値はそこだ」

  • 日経ビジネス編集部

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2017年9月7日(木)

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(日経ビジネス2017年5月29日号より転載)

 外交官の責務は交渉の記録を刻むことにあり──インテリジェンス小説と評していただいた『ウルトラ・ダラー』にこう書いたことがあります。機微に触れる外交のさなかは、交渉内容も厳秘とされますが、精緻な記録は残しておくのが鉄則です。後年、その記録の機密が解かれ、すべての外交官が歴史の審判を受けることになります。

(写真=大槻 純一)

 この物語を読んだある読者から「外交官といえど、上司や周囲の意向を忖度して、虚偽の記録を紡いでしまうケースもあるのでは」と尋ねられました。

 その通りです。目先の出世がちらつき、職場の空気に配慮したりして、事実を曲げ、書くべきことを伏せた文書などいくらでもある。僕も大組織に身を置いた経験がありますから、常に筋を通せとは言いません。でもプロフェッショナルとして、勝負どころで安易に妥協するなら仕事をする意味がない。どんなに怖い上司でも懸命に説得すべきです。なにも外交官に限りません。公認会計士でも、営業マンでも、生き方を懸けて「断じて譲れない一線」があるはずです。

 譲らないひと──として忘れ得ない存在は、土光敏夫、という経済人でした。第2次臨時行政調査会を率いて行財政に大胆なメスを入れたのですが、会長を引き受けた条件はたった1つ。「増税なき財政再建」でした。中曽根内閣も官僚機構も、幾度か増税という毒饅頭に手を伸ばそうとして、「ならばやめる」という土光さんの前にすごすごと退散しました。

 行革の最大のヤマ場である、国鉄の分割民営化の答申の骨格をまとめた時のことです。この人の真骨頂を垣間見たことがありました。

 当時私はNHK政治部の記者として土光臨調を担当し、答申の内容を何としてもつかもうと必死でした。どうやら骨子がその日の会議で固まったらしいという情報はあったのですが、厳しいかん口令で内容は漏れてこない。

 土光さんは雲の上の存在で、夜回り取材をしないのが内閣とメディアの暗黙の了解でした。しかし、後輩記者が「こうなったら土光さんに直接尋ねる以外にありませんよ」と主張し、結局、深夜の自宅に電話してしまったのです。むろん、ご高齢の土光さんはすやすやとお休みでした。「なにか緊急の案件ですか」と、これまたご高齢の夫人が起きてこられました。ああ、いま思い出しても身が縮む(笑)。夫人は「主人を起こしてまいりますのでお待ちください」と──。

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