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“シンギュラリティ信奉者”の翻意が難しい訳

進歩を信じる人が万能AIを信じる

2018年3月29日(木)

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 ここ数年で最も驚いた出来事について書く。筆者がまったく信じていないビジョンを信じている知人に相次いで会ったことだ。

 2017年の末、30年近い付き合いの経営者と会食した。数年ぶりに会ったため話が弾み、禁酒中を宣言していたにも関わらず相当飲んでしまい、気持ち良くなっていた時、いきなり質問された。

 「谷島さん、シンギュラリティについてどう思いますか。人工知能が進化して世界が一変するという、あの話です」

 調子に乗って楽しく話していたこともあって即答した。

 「サイエンスフィクションとして楽しんでいる人に文句は言いませんが、本気でそう主張する人がいて困惑します」

 彼は頷き、数秒おいてゆっくりと言った。

 「色々な人に聞いていますが私の周囲には谷島さんと同意見の人が多い。でも私はその日が来ると信じています」

 勿論冗談ですよ、と言って笑うのではないかと相手の様子をうかがうと真顔である。しまったと思ったが後の祭りで話を続けようがない。

 「その件を議論すると長くなるでしょうし、ひょっとすると喧嘩になりそうですから次回やりましょう」

 冗談めかした言い方でお茶を濁し、会食を終え、再会を期して別れた。

尊敬する人がシンギュラリティを信じていた

 その人は東証1部上場企業の取締役を経て、米国企業のCEO(最高経営責任者)を務め、現在は自分で作った日本企業の責任者をしている。もともとIT(情報技術)企業に入社した人でテクノロジーに強く、マネジメントもできる。

 失礼な物言いになるが、ちゃんとした人である。修羅場を何度もくぐってきており、騙されない人でもある。それにも関わらずシンギュラリティの到来を固く信じていた。素面に戻るほどと書くと嘘になるが、酔いがある程度覚めるくらい驚いた。

 冒頭の繰り返しになるが、筆者の考えを述べておく。いわゆる「シンギュラリティ(特異点)」の話は出来があまり良くないSF(サイエンスフィクション)であり、錬金術や永久機関の話に近い。

 これも前述の通り、SFを楽しむのは結構である。錬金術や永久機関の試行錯誤を経て科学や技術は進歩してきたとすれば、シンギュラリティを目指したり考えたりする活動から有意義な何かが出てくることは考えられる。

 とはいえ本気で力説されると「永久機関がいよいよできる」と喜んでいる人を見るようで、尊敬している人の場合どう応じたらよいものか困ってしまう。

コメント30件コメント/レビュー

天上天下唯我独尊。自分だけが正しいと思ってる輩(2018/07/22 19:31)

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「“シンギュラリティ信奉者”の翻意が難しい訳」の著者

谷島 宣之

谷島 宣之(やじま・のぶゆき)

日経BP総研

一貫してビジネスとテクノロジーの関わりについて執筆。1985年から日経コンピュータ記者。2009年1月から編集長。2015年から日経BP総研 上席研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

天上天下唯我独尊。自分だけが正しいと思ってる輩(2018/07/22 19:31)

>理性万能をナイーブに受け入れた、説得力の低いものが多いと感じます。

この方のお考えも、非常に感覚的なものでしかなく説得力が低いです。
何より、本文中において強いAIは造り得ないと「断言」する根拠も無く感覚的に信じられているという点で五十歩百歩でしょう。

シンギュラリティが疑似科学か、それともこれから発展する可能性のある「プロトサイエンス」なのかは未だ判断は付きかねますが、少なくとも世界中の電子工学・情報工学技術者やIT企業が多く参画し白熱した技術開発が続く間は、過去の第五世代コンピュータのような状況にはならないはすです(既にその成果は量子コンピュータやディープラーニングはじめ数多く出ていて、各企業とも更なる莫大な投資をしている)(2018/07/16 19:55)

本稿の主旨に賛成です。私が何となく感じていたこととほぼ同じです。反対意見のコメントは、理性万能をナイーブに受け入れた、説得力の低いものが多いと感じます。

概念に少し神秘的な名前をつけて広める動機は儲かるからです。煽られた人やその周辺が本を買ったり高いお金を出して講演を聴いたり「特効薬」を買ったりするからです。近年のITがらみの新語はだいたいそうだと思います。それでお金が回って経済効果もありますから否定はしませんが、「不当に」儲けている人を見ると心の中では何だかなあと思います。プロレスと同じと思えばよいですが、真剣勝負と思っている人が多いのには驚きます。(2018/06/20 22:45)

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