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観光開発に揺れる「駱駝のシャンズ大街」

破壊される古都の風情

2018年1月5日(金)

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 北京の中心に位置する“故宮(明・清代の皇居)”の北に“前海”、“后海”、“西海”の3つの湖で構成される“什刹海(シーシャハイ)”がある。北京の人気観光スポットの一つである“南鑼鼓巷(なんらここう)”は、その什刹海の東側にある。地下鉄6号線と地下鉄8号線が交差する“南鑼鼓巷站(駅)”のA出口を出ると、すぐ目の前に南鑼鼓巷の入り口がある。

 南鑼鼓巷は北京市“東城区”にある市内最古の街区の一つであり、北京市が計画中の25カ所の“旧城保護区(旧市街保護地区)”の中の一つである。南鑼鼓巷は北側の“鼓楼大街(鼓楼大通り)”と南側の“地安門東大街(地安門東大通り)”を結ぶ全長786m、幅8mの“胡同(路地)”を指し、1267年から26年間を費やして元朝(1271年~1635年)が国都として“大都(北京の前身)”を建設したのと同時期に建設されたもので、元代の胡同や“院落(塀で囲われた住宅)”が最大規模かつ完全な形で残された伝統的居住区であった。

北京五輪を契機に変身

 700年以上の長きにわたって静かな伝統的居住区であった南鑼鼓巷は、2008年の北京オリンピックを契機として変身を遂げる。2008年、北京市は1300万元(約2億2100万円)の募金を集めて“南鑼鼓巷商業業態調整資金”を設立し、商業店舗の誘致を働きかけ、2008年以前には50~60軒に過ぎなかった店舗は、2008年以降は飲食店、バー、軽食など各種各様の商店が次々と開店し、店舗数は100軒以上になった。2014年4月25日には中国共産党総書記の“習近平”が南鑼鼓巷にある“雨児胡同”を視察し、2軒の“四合院(中央の庭を囲む4棟からなる伝統家屋)”を訪問して生活状況を聴取したことでも知られるようになった。

 しかし、南鑼鼓巷の名が知られるようになるにつれて、北京市民のみならず全国各地の観光客が大挙して訪れるようになり、瞬間の受け入れ可能数が1.7万人であるにもかかわらず、ピーク時の平均訪問客数が10万人を超えるようになった。こうなると南鑼鼓巷は人の波で溢れて身動きが取れない状態になり、観光客が不満を感じるだけでなく、地元の住民たちは生活をかき乱され、静かに暮らすことが困難な状態になった。一方、観光客が増えれば、抜け目のない商売人たちは北京とは全く関係ない食品や雑貨、服装など店舗を開き、南鑼鼓巷の商業化はかつての伝統的風情を破壊するに至った。2016年4月、南鑼鼓巷は“3A級旅游景区質量(3A級観光地品質認定)”<注1>を自主返納すると共に、観光旅行団の受け入れ拒否を決めた。2016年11~12月、南鑼鼓巷は無許可営業の店舗や違法建築の建物の集中取締りを行い、店舗数を80軒前後に減らし、文化財保護の修繕を展開した。

<注1>最高が5A(AAAAA)で、最低が1A。

 筆者は2016年に南鑼鼓巷を訪れたが、北京とは関係ない飲食店や軽食店、さらには服飾や雑貨小物の店舗が軒を連ねているだけで、新奇な感じはするものの、元朝の胡同といった風情を感じさせるものは全く無かった。目先の経済発展と利益だけを目的とした都市開発や観光開発は古い文物や文化を破壊するだけで、決して得策とは言えないし、後世に誇れるものとはならない。中国の観光地は概ね似たり寄ったりで、古い建築物を改築・改造したり、けばけばしく塗り直したりしていて、古びたことによる良さを消し去っていることが多い。また、そうした場所に地元の特産品や雑貨、あるいは民芸品が売られているなら良いが、どこにでもある関係ない品物が売られていて興醒めすることが多い。

コメント2件コメント/レビュー

10年ほど前、模石口街の近くに住んでいたことがあり、懐かしく読みました。
あの古き良き時代の北京の風情を残す街が、このようなことになっているとは、寂しい限りです。

「低端人口」の追い出しはまだまだ続いているようですが、どこに行きつくのか…。(2018/01/07 18:55)

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「観光開発に揺れる「駱駝のシャンズ大街」」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

10年ほど前、模石口街の近くに住んでいたことがあり、懐かしく読みました。
あの古き良き時代の北京の風情を残す街が、このようなことになっているとは、寂しい限りです。

「低端人口」の追い出しはまだまだ続いているようですが、どこに行きつくのか…。(2018/01/07 18:55)

驚きました。文中にある大野さんとは2004年頃に北京で出合いました。同じメールリングリストのメンバーでオフ会で何度もお会いしてお話を伺いました。その頃大野さんは確か伝媒大学で学ばれており、その後同大学で教鞭をとられていたように記憶しています。
河北省の大学にも行かれていた記憶もあります。
私が2010年にボランティアで青海省の大学に赴任した際も12月に北京で何人かと一緒に食事をしました。
その頃も北京の西側にお住まいでしたが、私が日本へ帰国した後も杭州へ行かれ、また北京へ戻られた際もメールで転居通知をいただきました。
北京も意味のない乱開発が進み懐かしい風景が破壊されて行くのは何とも悲しいですね。(2018/01/06 13:13)

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