• ビジネス
  • xTECH
  • クロストレンド
  • 医療
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

中国「6歳の宅配少年」は美談ではない

父は死去、母は再婚、無戸籍で学校へ行けず…

2018年1月26日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

6歳の少年が凍える手で大きな荷物を運び回る…子どもたちの辛苦は美談ではなく社会が抱える課題だ

 1月9日から10日にかけて、中国メディアは雲南省“昭通市”の“魯甸県”に出現した8歳の“氷花男孩(霧氷少年)”<注1>に関する記事を挙って報じた。そのほとぼりが冷めやらぬ1月14日から15日にかけて、中国メディアは山東省“青島市”に出現した6歳の“快逓男孩(宅配少年)”に関する記事を一斉に報じたのだった。8歳の少年の後は6歳の少年、中国メディアがこれら少年に関する事項を報じるのは大いに結構だが、彼らはそこに含まれる問題点を掘り下げることをせず、最終的に美談で終わらせるのが常である。

<注1>霧氷少年の詳細は、2018年1月19日付の本リポート『「霧氷少年」が露わにした中国“留守児童”問題』参照。

凍える手とチェスセット

 さて、“快逓男孩(宅配少年)”が報道される契機となったのは下記の経緯だった。

 1月9日の夜、山東省“青島市”に住む“王青偉”は、自宅のドアがせわしなくノックされる音を聞いた。何事だろうとドアを開けた王青偉がそこに見たのは、荷物を載せたカートの横に立つ少年だった。少年は「おじさん、王青偉さん宛ての宅配荷物です。サインをお願いします」と言うと、伝票を差し出した。不審に思った王青偉が「君は何歳だい」と尋ねると、彼は「6歳だよ」と答えた。王青偉がふと彼の手を見ると、その小さな手は凍えて真っ赤になっていた。

 これを見かねた王青偉は、少し暖まって行くようにと少年を自宅へ招き入れた。暖房が効いた室内で一息ついた少年は、テーブルの上に置かれている奇妙な物に目を止めて、「おじさん、これは何」と尋ねた。王青偉が「これは西洋の“象棋(将棋)”で“国際象棋(チェス)”<注2>という物だよ。君はチェスができるかな」と聞くと、少年は「できないよ」と答えたので、「将棋は好きかい」と尋ねると、少年は「うん、将棋は好きだよ」と応じた。王青偉が少年に「それじゃあ、君にチェスのセットを1組あげよう」と言うと、少年は「おカネが要るの」と心配そうに尋ねた。王青偉が「おカネは要らないよ。君にプレゼントするよ。先ず君に駒の動かし方を教えないといけないね」と言うと、少年は「わーい、面白そう」と言ってにっこり笑った。

<注2>チェスを中国語で“国際象棋”あるいは“西洋棋”と呼ぶ。チェスは中国でスポーツに数えられており、“中国国際象棋協会(中国チェス協会)”は中国の半官半民の全国的スポーツ組織である。

 王青偉が「暇な時にお父さんと一緒に習いにおいでよ」と言うと、少年は「うん、だけどもう家へ帰らなくちゃ。今は仕事がなかなかはかどらないから」と答えた。そこで、王青偉が「故郷はどこなの」と尋ねると、少年は「山東省の“棗荘市”だよ」と答えた。王青偉が「そうなのか。チェスが習いたければ、私の所へおいで。君の故郷の棗荘市にも知り合いの先生がいるから紹介するよ」と言うと、少年は「うん、ありがとう。僕はまだ配達があるから、これで失礼します」と答えるとドアを開けて外へ出た。一緒に室外へ出た王青偉が見送っていると、少年は慣れた手つきでカートを押して去って行ったが、その手にはチェスセットの入った袋が大事そうに握られていた。

コメント3件コメント/レビュー

児童への強制労働ではなかったことが、せめてもの救いです。(2018/01/26 16:09)

オススメ情報

「世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」」のバックナンバー

一覧

「中国「6歳の宅配少年」は美談ではない」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

児童への強制労働ではなかったことが、せめてもの救いです。(2018/01/26 16:09)

中国の国民一人当たりの名目GDPは2017年の発表では約8,582.94USドルと言われている。(Global Noteからの引用だが、数字が間違っていれば失礼)ただし、この数字が中国政府の出している数字を元にしていればデータねつ造の国だから信頼性は低いだろう。日本は38,550.09USドルなので、日本の約22%である。統計情報に正確さがなく、籍のない国民が把握できていないようなので、国民一人当たりの名目GDPはより低い可能性がある。相変わらずジニ係数も高い。(最近中国政府が統計操作で低くしたとの情報もあるが)このような状態で貧富の格差だけが拡大傾向であるとすれば、国の将来を確実に危うくする。
また、いくら中国政府が貧困対策を行おうとしても、ほかで覇権拡大のための費用負担の拡大(海外投資や軍事費の増加など)とずさんな海外投資の焦げ付きなどで貧困対策の原資はないのではないかと思う。そもそも、本当にその意思があれば、それ以外の環境問題や公衆衛生、戸籍や農業・水産業などの問題に真剣に取り組んでいたと思う。よって、基地で何を言おうが結果として何もできないということで現状放棄。こうして中国国内での治安の不安定要因が、質と量ともに増していくように思える。(2018/01/26 14:11)

成る程、大陸マスコミ人による最期の良心が、せめて話題にする事なのですね。今後数年で貧困対策を進めると習近平が言ってしまったから、ささやかに不都合な真実さえも次第に報道されなくなりそうです。(2018/01/26 09:31)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

貧乏な家に育ったから、とにかくお金に飢えていた。

神田 正 ハイデイ日高会長