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成功者は成功ゆえに正しいか

2018年6月8日(金)

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 ところが、制度が担保しているのは、一定額以上の報酬を得ている労働者の労働時間の制限を規制の対象から外すということに過ぎない。具体的には、1075万円以上の年収を得ている一定の業種(労働時間と成果が結び付きにくい仕事)について、労働時間の制限を撤廃し、あわせて残業代の支払いも不要とする改革が、「高プロ」の目指すところであるわけだ。

 労基法による規制の一部を撤廃するわけだから、政府の言う「働き方の柔軟性を高める」という説明に、ウソがあるわけではない。自由な時間に出退勤できるとなれば、さっさと仕事を終えて帰れるかもしれない。

 とはいえ、その「柔軟性」は「制限時間を超えて働くことができる」という、より過酷な方向への変化を許すものでもある。しかも、労働時間の規定が取り払われた以上、残業手当が発生する理由も根拠も消滅する。

 安倍総理は、国会答弁の中で、高プロが「労働時間に対してではなく、成果に対して報酬を支払う改革」である旨の説明をしている。ゆえに「優秀な人ならば、短時間で成果を出して、これまで通りかそれ以上の給与を得られる」ということだ。残業代が出ない以上、いやでも効率を考えるようになり、結果的に時短になるということもあるだろう。

 だが、この説明は十分と言えるのだろうか。

 労働時間に対して対価を支払うことへの経営側の義務は外されている。
 一方で「成果に対して報酬を支払う」点については、法案の中に、その基準や評価方法を明記した条文が存在しているわけではない。業種や働き方が違うのだから当然だが、それはつまり、「働かせる側と働く側で話し合ってね」ということだ。

 ということは、「労働時間に対してでなく、成果に対して報酬を支払う」という政府側の説明は、あくまでも、「時間に対して支払うのでない以上、成果に対して支払うと考えるのが自然だよね」という「感想」ないしは「観測」を表明した程度のものに過ぎない。

 それ以前に、「高度プロフェッショナル」という、この、なんだか中二病くさい二つの単語を並べてみただけに見える語感が、すでにしてゴマカシの匂いを発散している。

 「高度でイケてるプロフェッショナルの社員は、残業代がどうしたとかチマチマしたこと気にしないと思うぜ」
 「だよな。ゴルゴ13だとかビヨンセだとかが残業代申請の書類書いてる姿とか、まるで想像できないし」

 と、うっかり者の就活生なら、あるいはそんなふうに受け止めて

「高度プロフェッショナルかっけー」

 てな調子で、残業代ゼロの働きっぷりに憧れてくれるのかもしれないが、世間の労働者のすべてが夢見る就活生でないことは、ご案内の通りだ。

 制度を推進する側の人々が説明しているところによれば、
 「企業側から高プロの導入を打診されても、労働者の側がその申し出を拒絶する権利が保障されているので、労働者が過重労働に駆り立てられる心配はない」
 ってなことになっている。

 私は、この説明には少しく疑問を抱いている。
 というのも、現在の日本の職場環境では、経営側の申し出を拒否できる労働者が多数派であるとはどうしても思えないからだ。

 30年以上前の話ではあるが、私自身、会社側からのオファーを拒絶することの困難さを、身をもって経験している。以下、その時の状況をお伝えしておく。

 1980年の秋、私は、新卒で入社した会社での最初の年の慰安旅行への参加を拒絶した。
 旅行は、建前としては自由参加ということになっていた。
 なので、私は
 「あ、じゃあ、行きません」
 と簡単に答えた。
 ところが、これは、簡単な話ではなかった。

コメント118件コメント/レビュー

対象者は平均年収の3倍以上という大まかな条件がありますが、
具体的な対象となる年収は決まっていないというのが正解です

提案されている法案の第四十一条の二により規定されていますが
読んで分かりますか?
結局のところ、具体的な額は法改正後に作成される
厚生労働省の省令で決まります

ロ 労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を
一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額
(厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月
きまつて支給する給与の額を基礎として厚生労働省令で定める
ところにより算定した労働者一人当たりの給与の平均額をいう。)の
三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること。

なお厚生労働省の用語で毎月きまって支給される額というのは
「きまって支給する給与」(定期給与)とは、労働契約、団体協約あるいは
事業所の給与規則等によってあらかじめ定められている支給条件、算定方法に
よって支給される給与のことであって、所定外労働給与を含む。
だそうです(2018/06/19 10:04)

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「成功者は成功ゆえに正しいか」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

対象者は平均年収の3倍以上という大まかな条件がありますが、
具体的な対象となる年収は決まっていないというのが正解です

提案されている法案の第四十一条の二により規定されていますが
読んで分かりますか?
結局のところ、具体的な額は法改正後に作成される
厚生労働省の省令で決まります

ロ 労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を
一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額
(厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月
きまつて支給する給与の額を基礎として厚生労働省令で定める
ところにより算定した労働者一人当たりの給与の平均額をいう。)の
三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること。

なお厚生労働省の用語で毎月きまって支給される額というのは
「きまって支給する給与」(定期給与)とは、労働契約、団体協約あるいは
事業所の給与規則等によってあらかじめ定められている支給条件、算定方法に
よって支給される給与のことであって、所定外労働給与を含む。
だそうです(2018/06/19 10:04)

成功者の選民思想に触れているところが面白かったです。(2018/06/15 13:23)

誰か教えてください。

年収1,075万以上と語られている、その「年収」とは、総支給額なのでしょうか、それとも総所得のことなのでしょうか。普通、年収と言えば総支給額を意味しますが、この法案の文章表現だとハッキリしません。

一般的な解釈として総支給額とすれば、ギリギリ1,075万のサラリーマンは、総所得は870万程度となり、税引き後の手取りでは600万円台後半となるパターンも普通です。
これが高度プロフェッショナル?既にだいぶ中間層に侵食している気がします。他人事ではない人は相当数居るような気がします。

税引き後の手取り金額1,075万以上であれば、「まぁ、そんなもんかな」とも思えなくも無いですが・・・

24時間働きたいスーパーマンはどうでもいいです。(2018/06/15 10:56)

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