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「一億総活躍社会」を総括する

2015年10月2日(金)

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 安倍晋三総理大臣は、今月4日からの週に断行する内閣改造で、先月24日に表明した誰もが活躍できる『1億総活躍社会』の実現に向けて、担当大臣を新たに設置する意向を固めた、のだそうだ(こちら)。

 私は、この「一億総活躍社会」という言葉がどうしても好きになれない。例によって「語感だけでものを言っている」と言われるかもしれないが、語感をあなどってはいけない。語感は、相互理解の出発点であり、もしかしたら終着点でもあるかもしれないからだ。

 その点で、私は、安倍首相とその周辺が繰り出してくる言葉のいくつかに、ずっと、なじむことができずにいる。感覚が合わないと言ってしまえばそれまでのようでもある。が、これは、感覚だけの問題ではない。

 対象を拒否する感覚の内部には、独自の論理があり、事実がある。
 ということはつまり、直感的に違和感を覚えるものの背後には、多くの場合、どこか、おかしなところがあるものなのだ。
 今回は、「一億総活躍社会」という言葉について、考えてみることにする。

 まず、「活躍」だが、これは、おそらく、第2次安倍改造内閣が発足した昨年(2014年)の9月に、首相が打ち出した「女性活躍推進」を踏まえた、というのか発展させた言葉で、私自身の違和感も、実はこの時にはじまっている。

 安倍さんが、政権を発足させるに当たって「女性活躍」という新しい概念を打ち出したのには、おそらく二つの理由がある。

 ひとつは、安倍首相ならびに彼の周囲にいる自民党の政治家が、これまで、女性に関する政策の中で使われてきた「女性の社会進出」「男女共同参画」という考え方に、必ずしも賛成していないからだ。

 というよりも、彼らは、そもそも、戦後社会の前提だった「男女平等」「ジェンダーレス」という思想に疑念を抱いている。

 第2次安倍改造内閣発足時の19人の閣僚のうち、15人が所属している(2014年9月時点)「日本会議」のホームページを見ると、「日本会議の活動方針」という文書の中に

《また近年は、夫婦別姓を導入する民法改正案や男らしさや女らしさを否定する男女共同参画条例が各県で制定され、子供や家庭を巡る環境がますます悪化しています。》

 と、「男女共同参画」を明確に否定する文言が書き込まれている(こちら)。

 このことをひとつとっても、安倍政権の女性政策が、「社会」よりも「家庭」に重心を置いたものであることがわかる。

 つまり、安倍政権としては、女性が男性に伍して社会に進出し、同等な権利と条件で働く社会よりは、「3年間抱っこし放題」(←2013年4月の「成長戦略スピーチ」の中で「3年育休」をアピールして使った言葉)に代表される施策で、女性勤労者の家事と仕事の両立をサポートすることをより強くイメージしている、ということだ。

コメント57件コメント/レビュー

私はこの「一億総活躍・・・」をはじめて聞いたとき、「じゃ残りの3千万人弱は活躍しなくていいのね」と感じました。
安部さんの発言は、本音のところで、そんなことを含んでいたりして(笑)
大きな流れに乗れない「非主流」の人は、活躍しなくていいからね。勝手にすれば・・・。
と聞こえてしまった私は、ひねくれものです。(2015/10/09 12:08)

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「「一億総活躍社会」を総括する」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

私はこの「一億総活躍・・・」をはじめて聞いたとき、「じゃ残りの3千万人弱は活躍しなくていいのね」と感じました。
安部さんの発言は、本音のところで、そんなことを含んでいたりして(笑)
大きな流れに乗れない「非主流」の人は、活躍しなくていいからね。勝手にすれば・・・。
と聞こえてしまった私は、ひねくれものです。(2015/10/09 12:08)

今回のコラムに関して言えば「またアンチ安倍botの小田嶋が安倍首相の揚げ足を取ってやがる」的なテンプレコメントは的を射ていないと思う。私も日頃はどちらかと言えば現政権の政策を支持しているし、それに対する小田嶋氏のまともな対案無き揚げ足取りには苦々しく思う方だが、今回に関しては安倍首相をはじめとした現政権の面々の言葉の選び方は相当にマズイと感じている。下のコメントでの「1億総普通に働ける社会」「一億総当たり前に暮らせる社会」の方がよっぽど良い。
難民問題については「金曜動画ショー」も併せて読めばあの発言がいかにマズかったかが、ここよりも良くわかる。
まあ、小田嶋氏ももう少し言葉を選んで、まともな対案を示せればここまで噛みつかれなかったとは思うが。(2015/10/09 09:18)

まず、”活躍”とは何か?です。”活躍”の定義を固めましょう。でないと、何も進みませんし、具体論にも落ちません。言葉尻をとって、「一億玉砕だ!」とか喜ぶお方々が増えるだけですから、まず活躍の定義をすることです。理想的な個人の活躍とは、共同体の本質をなす共同精神や正義が、個人の心情や心性のうちに生き、個人によって運用されるというカタチで、日常の生活意識のうちに共同体と個の統一が成り立っている状態のことを指します。つまり、”活躍”するということは、精神の特徴も伴わなければならず、精神の活躍が伴わなければ、単なる身体上だけの特性になってしまいます。ようは、生気も覇気もなく、目が死んでいるものの、清く正しく仕方なく生きてような日本人は、とても活躍してるとは言えないでしょ。みなが、「日本に生まれてよかった♡」と言える社会を作りましょう。(2015/10/08 13:21)

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