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「先生も生徒も数値で”仕分け”」 超効率主義で朽ちる学校

“尊敬の対象”が“底辺の存在”に変わるまで

2015年8月4日(火)

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 「生活指導を担当することになりまして。……僕、あまり得意じゃないんですよね……」

 30代前半の男性は、仕事を辞めた理由をこう答えた。彼は、ある地方都市の公立中学校の教師だった。中学のときの先生が、「人間は宇宙にあるガス(元素)と同じものでできている」と教えてくれたことがきっかけで、理科の先生になった。

 「教師にも数値目標っていうのがあるんです。親のクレームの数をいくつまで減らすとか、問題行動をとる生徒を何人まで減らすとか、遅刻する子供を減らすとか。これ以上、その数値目標のために仕事をしたくなかったんです」

 効率化、マネジメント力、リーダーシップ、明確なビジョン――。これらは先日文部科学省から発表された「学校現場における業務改善のためのガイドライン」の中に登場する言葉だ。ならば、数値目標があったっておかしくない。

 つまり、もはや学校は学校ではなく、単なる「企業」ということなのか? 

 だとしたら、都合のいいときだけ先生を“聖職”扱いしたり、「子供がかわいそう」という呪いの言葉で罵倒するのは御門違いだ。

 学校、教師の、表と裏。学校って、教師って、先生の存在価値っていったい何? ホント何なのだろう?  

 そこで今回は、「教師という仕事」についてアレコレ考えてみます。

 まずは、男性教師の話からお聞きください。

 「僕は子供たちに理科の楽しさを教えたいと思って先生になりました。といっても、採用の段階からつまづいた劣等生です。正規採用がなかった。なので20代は非正規で、やっと4年前に正規で採用され、今の学校に赴任しました。よし! これで腰を落ち着けて子供たちと向き合える、と思ったんですが、現実は違いました」

 「“雑用”って呼んでるんですけど、先生の仕事って提出書類がやたらと多いんです。何をやるにも計画書を出さなきゃだし、教育委員会とか文科省とか提出書類が山ほどあります。しかも、それらはすべて、上の先生の許可が必要。ベテランの先生に見てもらって、次に主任に見せる。オッケーが出ると、教頭、副校長にそれぞれハンコをもらい、最後にやっと校長に提出です」

 「僕は理科の楽しさを教えたいと思い、教師になった。だから、さっさと授業の準備をしたいんですが、学校では雑用の方が優先順位が高い。なので、授業の準備は後手になります。いつも夕食に弁当をもってきて、それを食べて。“さっ、やるぞ!”って感じでした」

 「周りからは、“毎晩、残業で大変だな”なんて心配されるんですけど、僕にとってその時間はとても幸せな時間でした。これは去年やってうまくいかなかったから、こうやってみようとか。こないだの授業で出た疑問も分かるようにするには、こうしようとか。お金がないから、教材もあれこれ工夫して。子供たちの顔を思い浮かべながら、準備するのは楽しい。だって、理科ってちょっと外に出れば身近な教材が山ほどあるので、子供たちは目をキラキラさせるんです」

 「でも、生活指導担当になったらその時間を削らなくてはいけなくなる。もちろん生活指導も大切な教師の仕事だってことは分かっています。でも、僕には……、そのなんていうか耐えられる自信がなかったんです」

コメント16件コメント/レビュー

だれに責任があるの?
文科省?(2015/08/04 15:53)

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「「先生も生徒も数値で”仕分け”」 超効率主義で朽ちる学校」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

だれに責任があるの?
文科省?(2015/08/04 15:53)

高2と中2の息子の父親です。
高校も中学も公立に通わせておりますが、二人とも塾に通わせております。
何故塾に通わせているかは、突き詰めれば「周りが通わせているので同等以上のレベルをキープするため」に他なりません。嗚呼、なんたる主体性の無さ。しかし、欧米がどうあれ関係なくこれが現実です、決して不幸なことだとは思っていません。私は神奈川県在住ですが、近所の塾は千客万来の様です、競争も激しいみあいですが。
翻って、今回のお題。よく聞く話ですね、先生は「もっと子供に触れあいたいし勉強を教えたい。しかし『雑用』でそれどころの話ではない」と。とてつもなく穿った見方ですが、文科省は「故意に公立学校の先生たちに学業指導の妨害をしている」と考えると、合点がいきます。(例外を除いて)公立学校の学業指導パフォーマンスを落とすことによって、私立学校進学の選択肢と塾通いの必要度を上げる。すると、私立学校と塾の商売が上手くいく。。。。冒頭の話は、正にそうです。
あくまで想像ですが、‘教育ロビイスト’‘教育献金’が暗躍していませんかね?(2015/08/04 15:17)

基本的には河合氏の意見に賛成である。ただし,大きな矛盾も抱える。教師に「強化に関するプロフェッショナル」に徹してもらうためには,親がしっかりと道徳やその他社会生活に必要な知識を子に与える,すなわち「躾」ができることが前提になる。ところが,両親共働きの家庭では,これが「できない」という,ある意味「言い訳」が存在する。本来ならば,良心は子に対する躾を行う責任があるはずだ。しかし,今その部分が曖昧。大人がずるいのだ。子供はその犠牲者ともいえる。
やはり社会構造として「子育て優先,子を設ける」組と「仕事優先,子供なし」組に分ける仕組みを作る必要があるのではないかと思う(子をもうける組に十分な補助も行うという前提)。そうじゃないと,いつまでたっても「仕事で忙しいのだから,学校で躾も教えるべき」とかわけの分からない親が続出すると思う。(2015/08/04 14:41)

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