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東京医大事件と「女医と患者の死亡率」のねじれ

ジェンダー・バイアスは組織の隅々まで

2018年8月7日(火)

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東京医大で女子の合格者数を抑えようとする得点操作が発覚した(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 今から5、6年ほど前だろうか。
 ある医療系学会の基調講演の講師に呼ばれた時、「女性医師が増えて困っている」とこっそりと教えてもらったことがある。

 「うちの教室(医局)には女性医師はいらない。入れないでくれ」と訴える先生も多く、困っている、と。

 「育児中の女性医師は常勤勤務から非常勤になるケースが多い。世間からはセレブな女医に見られるからプライドだけは高い。そういった面からも女性医師は嫌われてしまうんですよね。
 あとこれは昔からあることですが……女性医師というだけで差別をする男性医師がいるのは事実です」

 こう「嫌がられる理由」を話していた。

 であるからして、例の東京医大での、女子の合格者数を抑えようとする得点操作問題は残念だし憤りを覚えたが、さほど驚かない自分もいた。

 ただ、一部の報道では「緊急の手術が多く勤務体系が不規則な外科では、女性医師は敬遠されがち」「医師のブラックな現場がそもそもの問題」との意見が散見されたが、女性医師を嫌うのは外科だけでも、ブラックな現場だけでもない。

 だって冒頭の医師は、

 「早くから女性医師が働きやすい職場にしようと取り組んできた結果、女性医師が増え、逆に女医医師が嫌われることになってしまった」
と、頭を抱えていたのである。

 つまり、「女性医師」という存在そのものが面倒くさい存在だ、と。

 「女性医師というだけで差別する男性医師がいる」。この一言こそが問題の根っこに深く深く広がっていて、
「結婚や出産でやめてしまうから」
「育児で緊急時対応できないから」
「だから女性ではなく男性」
というのは言い訳でしかない。

 とどのつまり「女性医師」の存在そのものへの嫌悪感が「入口から排除しよう」と点数削減という動きに繋がったのだ、と個人的には理解している。

コメント27件コメント/レビュー

中間管理職で部下を持っていますが、能力的には男女に差は無いと思います。(ただし、職場で出産/育児という点だけを見ると、男性社員の方が安心して採用できます。) しかし、テストはあくまでスキルを評価をするためのものですので、ここには不公平性を持ち込むべきでは無いと思います。(2018/08/09 21:07)

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「東京医大事件と「女医と患者の死亡率」のねじれ」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

中間管理職で部下を持っていますが、能力的には男女に差は無いと思います。(ただし、職場で出産/育児という点だけを見ると、男性社員の方が安心して採用できます。) しかし、テストはあくまでスキルを評価をするためのものですので、ここには不公平性を持ち込むべきでは無いと思います。(2018/08/09 21:07)

数年前、「正常化の偏見」と言う言葉を防災安全会議で聴く機会があり、何のことだろうと思って調べたことがあります。英語で「normalcybias」と言うそうですが、日本語に訳すと微妙なニュアンスが違って聞こえるようです。各個人が持つ、自分目線で物事を捉えてしまう。何の根拠もないのに偏った考え、行動を指示する。と言った意味のようです。ここで、自分の持つ「性差」は他人の持つ「性差」を理解できず公平な判断ができなくなることでしょうか?。女性医師の問題はNBOの中山先生のコメントが卓越しているように思います。文部科学省の問題から明らかになった東京医科大学の問題。「医師」は素晴らしい職業だとは思いますが、地位、収入が我々平凡会社員から見て、特権的階級で維持していることも問題ではないでしょうか?(2018/08/09 08:08)

問題と対策をごっちゃにしてると何時まで議論しても、解決に結びつかないでしょう。今回、受験の採点に差別があったというのは、それを女性医師の離職率の高さと言う問題の対策に採用したことが間違いだったというのが核心であって、受験の機会や採点の均等は保証した上で、正しい方法で、女性医師の離職率の問題に対策を講じればよかった。離職する分を見込んで女性医師を増やすべきか、女性医師の離職を止めるべきか、離職する女性医師より男性医師を増やすべきか、に始まり、具体策も、男女別に受験者募集枠を設定すべきか、増やすべきか減らすべきか、就業条件を規定して男女の別なく医師の就労を管理すべきか、男女別に科別に医師数(受験枠数)をコントロールすべきか・・・。と言った前向きな議論が必要だ。安易に採点を操作し、裏で病院都合の医師数操作をしたことと、男女の医師数、科別の医師数の是正を混同して論じると、タレント女医のような安易な是認論が出る事につながる。(2018/08/08 15:41)

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齋木 昭隆 三菱商事取締役・元外務次官