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新シリア危機、イスラエルとイランが衝突か

2018年4月24日(火)

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イスラエルでは、イランとの軍事衝突に対する危機感が強まっている。(筆者撮影)

 米国のドナルド・トランプ大統領は、日本時間の4月14日に、英仏とともにシリアの化学兵器貯蔵施設などをミサイルで攻撃した。米軍は100発を超える巡航ミサイルを発射。米英仏は、「アサド政権が4月8日、ダマスカスの東にある町ドゥマで、塩素ガスなどを使った攻撃を実施。子どもを含む約50人が死亡し、約500人が重軽傷を負った」と主張している。

 シリア政府と同国を支援するロシアは、米軍などのシリア攻撃を強く非難。ロシアはこれまで「アサド政権は、過去に保有していた化学兵器を完全に廃棄し、現在は持っていない」と主張している。国連で米国とロシアが非難の応酬をする光景は、1980年代を想起させる。筆者がこのコラムで「東西冷戦が再来した」と主張したように、シリアを舞台とする欧米とロシアの対立は深まる一方だ。

イスラエルがシリアのイラン基地を爆撃

 シリアで大きな問題となっているのは、化学兵器だけではない。現在、欧米の安全保障関係者が息をつめて見守っているのが、シリア西部の、レバノンやイスラエル国境に近い地域だ。

 シリアのアサド政権は、ロシアだけでなくイランからも支援を受けている。シリアには、ロシア軍をはじめとする様々な外国勢力が拠点を築いている。イランの革命防衛隊もその1つだ。イランはイスラエルを最も重要な敵国の1つと見ている。

 革命防衛隊の中のエリート部隊とされるクッズ部隊は、レバノンとの国境に近いホムス近郊にT4と名付けられた基地を設置していた。その狙いは、イスラエルに対して睨みをきかせることだ。4月9日の未明、イスラエル空軍がこの基地を爆撃して、滑走路や格納庫を破壊した。この空爆により、クッズ部隊に属するイラン人7人を含む14人が死亡したほか、イラン軍の無人偵察機(ドローン)や、自走式防空管制システムなどが破壊された。

 イスラエル政府は攻撃実施について肯定も否定もしていない。だが、米ニューヨークタイムズのトーマス・フリードマン記者は「T4爆撃はイスラエル軍が実行した」という同国の軍人の発言を引用している。

2月にイランがイスラエルの領空を侵犯

 なぜイスラエルはシリアにあるイランの基地を攻撃したのか。イスラエルのT4爆撃には、伏線がある。シリア・レバノン・イスラエルの国境が集中するこの地域では、今年2月以来緊張が高まっていた。その理由は、2月9日にイラン革命防衛隊が、シリアのT4基地からドローンを離陸させ、イスラエルの領空を一時侵犯したからだ。イランが、シリアの基地からドローンを発進させ、イスラエル領空を強行偵察したのは初めてのこと。

 イスラエル空軍は直ちにF16型戦闘機を発進させてドローンを撃墜した。だが同機はシリア軍が発射した対空ミサイルによって損傷を受けた。イスラエルのF16のパイロットはパラシュートで脱出し、機体はイスラエル領内に墜落した。イスラエル側は、「イランは、シリアに拠点を築きつつあることを誇示したかったのだろう」と分析している。イスラエルは、イランの革命防衛隊がシリアに恒久的な拠点を築くことを防ぐため、今年4月にT4爆撃を強行したのだ。

イラン基地への初の直接攻撃

 シリア・イランと良好な関係を持つロシアのプーチン大統領は4月11日、イスラエルのネタニヤフ首相に電話をかけ「シリア情勢をこれ以上不安定にする動きは避けてほしい。アサド政権の主権を尊重するべきだ」と要請。これに対しネタニヤフ首相は、「イスラエルは、イランがシリアに拠点を作ることを絶対に許さない」と反論した。

 欧米の軍事関係者がイスラエルのT4爆撃に注目しているのは、イスラエルがイランの軍事施設を直接攻撃し、イラン側に人的損害が出た初めてのケースだからである。

 イランは、すでにイスラエルの北隣のレバノンに事実上の拠点を築いている。レバノンのシーア派イスラム過激組織ヒズボラ(神の党)は、イスラエルを敵視している。イランの革命防衛隊からミサイルなど武器の供与も受けている。

 イランではシーア派が多数を占める。革命防衛隊は、レバノンのヒズボラのために武器をシリア経由で輸送してきた。一説によると、ヒズボラは約13万発のミサイルを保有して、イスラエルとの戦争に備えている。ヒズボラのミサイルは、イスラエルの安全保障にとって最大の脅威の1つだ。

 2006年7月にイスラエルがレバノンに一時侵攻した理由も、同国南部にあるヒズボラの拠点を破壊し、ミサイル攻撃の危険を減らすためだった。

 つまりイスラエルは、シリアが「第2のレバノン」となり、イランの前進拠点が増えることに強い警戒感を抱いているのだ。

 イスラエル政府は、シリアが建設した原子炉を2007年に空爆し破壊したことを、今年3月に初めて認めた。現場写真や関連文書もメディアに公開した。この原子炉は、北朝鮮などの援助の下に建設されたものだ。各国の安全保障担当者は、この攻撃がイスラエルによるものと推測していたが、同国政府は公式な確認を拒んできた。軍事行動については肯定も否定もしないのが、イスラエルの常套手段である。

 ネタニヤフ政権が今年になってこの事実を公式に認めた裏には、「イランがシリア経由でイスラエルの安全保障を脅かす場合には、11年前に原子炉を攻撃した時と同様に軍事行動に踏み切る」というメッセージが込められている。

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「新シリア危機、イスラエルとイランが衝突か」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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