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右派ポピュリスト・ルペンが躍進し決選投票へ

欧州の運命を左右するフランス大統領選挙

2017年4月24日(月)

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決選投票への進出を確実にした国民戦線のルペン候補(写真:ロイター/アフロ)

フランス大統領選挙では、最も恐れられていた極右政党・国民戦線の党首、ルペン氏の圧勝は実現しなかった。だが保守派や社会党の候補者が決選投票に進出できず敗退したことは、伝統的な大政党への警鐘である。国民戦線が前回の選挙に比べて得票率を伸ばしたことも、市民の不満の強さを象徴している。同国の将来を楽観視することはまだできない。

 4月23日に行われたフランス大統領選挙の第1次投票で、右派ポピュリスト政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン候補が、前回の選挙(2012年)に比べて得票率を約4ポイント増やし、5月7日に行われる決選投票に進出することが確実になった。フランスのEU離脱を求めるルペン候補の躍進は、欧州統合についての反感がフランス国民の間でも強まっていることを浮き彫りにした。

 有力紙ル・モンド紙が23日午後10時過ぎに発表した予測によると、首位は新政党「アン・マルシュ(前進)」のエマニュエル・マクロン元経済大臣で、得票率23.9%。ルペン候補は21.7%で2位に着ける。共和党のフランソワ・フィヨン候補は家族を議会職員として雇用し不当に収入を得たスキャンダルが災いして、得票率が20%にとどまる。

 国民戦線が決選投票に進出するのは、2002年以来15年ぶり。この年の第1回投票では、ルペン氏の父親で彼女よりもネオナチ的な傾向が強いジャン・マリー・ルペン候補が16.9%を確保し、保守系のシラク大統領(19.9%)に肉迫した。決選投票では、極右政党党首の大統領就任を阻むべく、社会党が保守派と共闘。シラク氏が82.2%の得票率を記録して圧勝した。

 今回の決選投票でも、保守派と社会党はともにマクロン氏を支援して、ルペン氏の大統領就任を阻止しようとするだろう。

オランド政権への強い不満

 なぜルペン氏は得票率を伸ばしたのか。その背景には、フランス国民のオランド政権に対する強い不満がある。オランド氏が大統領を務めた2012年からの5年間、同氏への支持率は年々低下し、最後は20%前後に落ち込んだ。同氏は富裕層への課税強化、移民が多いバンリューと呼ばれる地区の青少年への支援策など、様々な施策を提案したが、その大半を実行できなかった。

 「Remettre la France en ordre (フランスをまともな国にする)」。ルペン氏が今回の選挙戦で使ったスローガンである。フランスが今抱える最大の問題は、治安と失業だ。「フランスを建て直さなくてはならない」というルペン氏の言葉は、有権者の琴線に触れた。

イスラム・テロの嵐

 フランスの治安は急激に悪化している。第1の争点だ。2012年以来、この国はイスラム過激勢力によるテロに揺さぶられてきた。2012年にはイスラム過激派がユダヤ人学校の前で生徒ら7人を射殺。2015年1月には、テロリストがパリの風刺新聞「シャルリ・エブド」の編集部やユダヤ系スーパーを襲って16人を射殺。同年11月には、テロリストがコンサート会場やレストランなどで市民130人を虐殺するという、同国の歴史で最悪のテロ事件が発生した。

 オランド大統領は、「フランスはテロ組織との戦争状態にある」として、2015年に国家非常事態を宣言。捜査当局は、過激派に対する取り締まりを強化し、数回にわたってテロ事件を未然に食い止めることに成功したが、同国にはテロ事件を起こす危険のあるISの同調者などがまだ約1万人いると推定されている。実際、国家非常事態が宣言されてからも、テロは起きている。

 昨年7月には、イスラム国(IS)を信奉するチュニジア人が、ニースの遊歩道を歩いていた観光客ら84人を大型トラックでひき殺した。同じ月には、イスラム系テロリストがサン・エティエンヌ・ドゥ・ルブレーという町の教会に立てこもり、人質に取ったフランス人神父の首を切断した。

 投票日の2日前には、パリのシャンゼリゼ大通りで、イスラム過激派に属すフランス人が自動小銃を乱射して、警察官1人を射殺したほか、通行人も含む3人に重軽傷を負わせた。

 ルペン氏はこの事件の直後に、既成政党を厳しく批判した。彼女は、「再び警察官の血が流されたことに、私は強い憤りの念を抱いている」と述べ、「これまで政権を担当してきた保守政党、革新政党ともに、テロに対する戦争に敗北した。我々フランス人は、今や目覚めるべきだ。このような野蛮な行為に対して、決然とした態度で歯止めをかけなくてはならない」と指摘した。

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「右派ポピュリスト・ルペンが躍進し決選投票へ」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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