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トランプ欧州歴訪が示したポピュリスト帝国主義の脅威

2018年7月20日(金)

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 米国のドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が7月16日に行った共同記者会見は、欧米の多くの政治家、報道関係者を改めて戦慄させた。トランプ氏は「建設的な会談だった。これまで最悪だった米ロ関係が、この会談以降は大きく変わる」と断言。シリアやウクライナなどで継続する国際紛争をめぐってロシアを批判することを避け、友好的な態度を貫いた。プーチン氏が米ロ首脳会談に先立ち貿易や防衛予算をめぐってドイツをはじめとする西欧諸国を厳しく批判した態度とは対照的だった。

 プーチン氏にすり寄るかのような米国大統領の態度は、米国の保守派政治家たちの眉をひそめさせた。米国大統領の欧州歴訪は、ポピュリストが権力の座に就いた時に国際社会に生じる危険な「ねじれ」を浮き彫りにした。

 ねじれ現象とは、冷戦時代に固い結束を誇っていた米国と西欧諸国が対立し、米国の大統領がかつての敵ロシアに対し奇妙なほど宥和的な態度を見せる状態だ。これまでの敵・味方の概念が通用しなくなりつつある。

(写真:The New York Times/Redux/アフロ)

 トランプ氏の今回の欧州歴訪での発言はしばしば変化し、多くの報道関係者を混乱させた。たとえば7月11日の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議でドイツなどを批判したかと思うと、翌日にはNATOを称えた。だがその直後の7月15日にはロシアと中国だけでなく欧州連合(EU)をも敵と呼んだ。米国大統領がEUをロシア・中国と同列に並べて敵と形容したのは初めてのことである。

ロシアの拡張政策を批判せず

 トランプ氏の態度が最も激しくねじれているのは、ロシアに対する関係だ。私が住んでいる欧州の主要メディアは、プーチン氏を「危険な独裁者」と見ている。同氏は2014年に国際法を破ってクリミア半島をロシアに併合し、ウクライナ東部で続く内戦で分離独立派を支援している。このため欧米諸国はロシアに対して経済制裁を続けている。

 さらにロシアはシリアの独裁者バシャール・アサド大統領を支援し、ロシア空軍の戦闘機に反体制派を攻撃させている。アサド氏は、数回にわたり毒ガスを使って市民を攻撃した疑いを持たれている。2015年10月にはシリアの北西部で病院が爆撃されて13人が死亡した。国際人権擁護団体アムネスティー・インターナショナルは「この爆撃はロシア空軍が行った」と主張している。

 またロシア軍はバルト3国への圧力を高めており、これらの国々との国境地帯でしばしば大規模な軍事演習を実施している。このため北大西洋条約機構(NATO)は2017年、バルト3国に初めて戦闘部隊を常駐させ始めた。NATOは、「西側に対するロシアの姿勢が敵対的な性格を強め始めた」と分析している。

 だがトランプ氏はプーチン氏と会談した後に開いた記者会見で、ウクライナやシリア情勢をめぐってロシアを批判しなかっただけではなく、プーチン氏を持ち上げる態度すら見せた。会談の前日にロシアを敵と呼んだことを忘れたかのようである。

 北朝鮮の非核化についても、「私はプーチン氏に金氏との会談内容と非核化計画について話した。プーチン氏とロシアはこの問題の終結を切望していると思う。ロシアの協力に感謝したい」と極めて表面的なコメントをしただけだった。

 シリア内戦については「シリア危機は極めて複雑だ。米ロ間の協力が数千人の命を救うだろう。我々は過激派組織・イスラム国を掃討したが、イランが漁夫の利を得ることには反対だ」と述べ、ロシアがアサド氏を支援していることやシリアで空爆したことには触れずに、批判の矛先を自分が敵視するイランに向けた。

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「トランプ欧州歴訪が示したポピュリスト帝国主義の脅威」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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