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SNSで知った友人の過労死

組織はなぜ出る杭を打つのか

2017年4月28日(金)

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 かなり長い間、書くべきかどうか悩んだが、やはり書くことにした。2016年初、突然、亡くなった友人Aさんのことだ。まだ40代半ばだった。

 Aさんの死については、奥様が彼のSNSアカウントに掲示した投稿で知った。死後4カ月は経過していただろうか。奥様は、あまりに突然のことで何をすればいいのか分からず、市役所に通って教えてもらいながら各種手続きに追われていたという。彼のSNSアカウントに入るのも、一苦労だったようだ。

SNSは友人の「今」を知るのに便利だが、これほど悲しい知らせを受けたのは後にも先にもこれだけだ

 Aさんとは7年前、取材を通じて知り合った。とあるメーカーの技術者で、何度か取材を重ねるうちに、お互いの興味の対象が似ていたことから、いつしか友人になった。Aさんは東京から離れた場所に住んでいたため、お互いのいる場所の近くで仕事が入ると連絡を取り合って飲みに行ったり、記者が仕事で壁にぶつかった時に相談に乗ってもらったりしていた。

 彼の自慢は、奥様と協力しながら建てた戸建てのマイホームだった。「設計は奥様が担当した」と生前、誇らしげに語っていたのを覚えている。

 「彼女(奥様)は設計なんてやったことのない素人だけど、間取りとか使いやすい動線を考えるのは、(実際に家を使う主婦である)彼女の方がいいと思って。最初はなかなか良いのが出てこなくて、何度も突き返した(笑)。でも、そうこうしているうちに、すごく良いのが出てきたんだよ。『こんな設計、オレでもムリかも』というような素晴らしいのが」

 「へえ~。そうなんですか。どんなお家か、いつか見てみたいなあ」

 こんなやり取りをしたのは5年くらい前だろうか。家を見てみたいという記者の願いは、先日、「Aさんの仏壇に線香を上げる」という悲しい理由でかなうことになった。

家族の温かみを常に感じられる家

 ご自宅を訪問すると、小学生と高校生の2人のお子さんが出迎えてくれた。家はシンプルな長方形の2階建てで、右手角にある玄関を入るとすぐに全体が見渡せる構造になっていた。1階は壁のないキッチンとリビング。中央部分が屋根まで吹き抜けになっていて、2階に続く階段があった。2階にはどうやら、吹き抜けの両側に部屋があるようだった。

 「大豪邸」というわけではないが、木目調で温かみがあり、Aさんが生前に自慢していたように、省エネ効率の良さそうな家だった。中央の吹き抜けから上昇した暖かい空気が家中を駆け巡る仕組み。壁が少なく全体を見渡せるので、家族の温かみも感じられそうだ。

 「良い家だなあ」と感心していると、キッチンから奥様が顔を出した。

 「遠くからわざわざすみません」

 「いえいえ、それよりこんなにもお線香を上げにくるのが遅くなってすみません」

 こんなやり取りをした後、奥様とリビングに座り、コーヒーを飲みながら話した。

 Aさんとは、たくさん取材をさせてもらう中で親しくなったこと、Aさんが奥様やお子さんのことをいつも誇らしげに話していたこと、取材とは関係ないのに親身になって記者の相談に乗ってくれていたこと……。

 しばらくそんな話をした後、どうしても聞きたかったことを聞いた。「Aさんがなぜ亡くなったのか」ということだ。

 正式な病名は長すぎて記憶していない。2015年秋頃から仕事のことで悩み、自宅から病院に通う療養生活を数カ月間、送った頃、自宅で倒れたのだそうだ。

 いわゆる「過労死」だ(参考記事)。

コメント22件コメント/レビュー

「不条理が条理」
会社は組織や人の集合体。様々なことが発生するもの。家族のために不本意な選択をする社員もいると思います。何事も誠実に向き合い続けることは重要ですが、頑張りすぎて一番大事な命を失う危険性がでてきたなら、自分の信念を大事にしつつ、自分を第一に考え選択することを家族や子供には伝えたいと思います。(2017/05/09 15:05)

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「SNSで知った友人の過労死」の著者

池松 由香

池松 由香(いけまつ・ゆか)

日経ビジネス記者

北米毎日新聞社(米国サンフランシスコ)で5年間、記者を務めた後、帰国。日経E-BIZ、日経ベンチャー(現・日経トップリーダー)、日経ものづくりの記者を経て、2014年10月から日経ビジネス記者。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

「不条理が条理」
会社は組織や人の集合体。様々なことが発生するもの。家族のために不本意な選択をする社員もいると思います。何事も誠実に向き合い続けることは重要ですが、頑張りすぎて一番大事な命を失う危険性がでてきたなら、自分の信念を大事にしつつ、自分を第一に考え選択することを家族や子供には伝えたいと思います。(2017/05/09 15:05)

一人の優秀な技術者が亡くなったことはとても悲しいことです。

ただ、記事を読んでいて違和感を覚えた点があります。
他の方も指摘されていましたが、「組織はなぜ出る杭を打とうとするのか」のところです。
記事からは、出る杭が打たれて営業に回されたかどうかはわからないなと思いました。
なぜ、「出る杭が打たれた」と思われたのかが説明が不足していてわかりません。
池松氏の思い込みの可能性もあるのではありませんか。
違っていたらすみません。(2017/05/08 23:54)

胸に迫る。抑制されているが,記者の心根の温かさが伝わって良い。しかし,視線の鋭さにはプロとしての「冴え」があると感じた。「人が働くとは?」という疑問も浮かぶ。「日本的経営」というのが一時もてはやされた。この悲劇はその名残の影のように思う。「人を幸せにするのが経営」だと思う。ここでいう「人」が誰を指すか。この在り方で日本の多くの企業や組織の矛盾・ひずみを感じていたことを思い起こした。「人を活かすのが経営」だと思う。この記事では「短期的には」この人を活かし,業績に結びつけている。しかし,「どれだけの人を,どれだけ深く」幸せにしたのだろうか。「人は苦しむために働くのか。」「苦しむことが,働くということなのか。」以前からの疑問がまた沸き起こる。AIやRPAがヒトを苦役から解放する時代が来るかもしれない。そうしたら人は「働く機会」を失うのだろうか。我々の社会はそんなにも貧しく,さみしいものなのだろうか。記者氏に問いたい。「人のハタラクとは」。「傍を楽にする」だけでない答えを見つけて教えてほしい。今後の記事に期待する。(2017/05/06 16:41)

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