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科学データを「漁師の肌感覚」で否定する水産庁

2017年8月30日(水)

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釧路港に並ぶ棒受け網船。棒についたライトでサンマを集める。

日経ビジネスは8月28日号に「ここまで朽ちた 独り負けニッポン漁業」と題した特集を掲載した。EEZ(排他的経済水域)と領海で世界6位の面積という豊かな海洋資源、食の安全・安心というブランド、世界有数の漁業大国としての歴史、そして世界的に膨らむ魚食ニーズ――。これだけ経営環境が揃っているのに、日本の漁業は衰退してきた。しかも、世界的には漁業は成長産業の1つで、日本だけが独り負けの状況だ。その問題の詳細な分析は特集記事をお読みいただきたいが、その一端として、多くの漁師に聞き取りをしていく中で記者が感じた違和感を本稿では紹介したい。

 7月末、サンマ漁の本格化を前に、記者は水揚げ地の釧路港(北海道釧路市)を訪れた。港には20トン級の中型船が8月10日の解禁日を前に居並んでいた。集魚灯で秋刀魚を集める「棒受け網漁」向けの船で、サンマ漁の主力となる。

 しかし、先立って7月8日に漁期が始まっているはずの10トン未満の小型船が見当たらない。潮流に合わせて網を漂わせて魚がかかるのを待つ「流し網漁」の船だ。

 「流し網船の登録は70隻ほどですが、9割が休業状態です」。こう話すのは釧路市漁業協同組合で市場運営を担当している山田将史さん。「漁に出ても走り回ってばっかりで、魚群探知機には(魚影が)映らない。漁に出ても自分たちが船の上で食べる分しか獲れない。燃料代の分損するだけだから、ほとんどみんな家に引きこもっています」

「資源予測なんて信じない」

 水産庁の推計によると、サンマの来遊量は過去最低の昨年をさらに下回る見通しで、棒受け網漁の苦戦も必至だ。水産庁は道東沖の公海でサンマ漁をしている台湾、中国などと計8カ国・地域で漁獲規制の枠組みをつくろうとしている。調査船や漁船の漁獲量を元に資源量を推測し、持続的に獲れる最大量を合計56万トンに定めると今年合意した。しかし、漁師の一部からは冷めた声も聞かれる。

 「資源の予測なんて俺は信じねえよ。魚が獲れる獲れないなんてのは、俺らの腕次第の話だよ」。釧路のあるサンマ漁師の言葉だ。

 この言葉を聞いたとき、毒舌で売るあるタレントが、インタビューで禁煙・分煙の推進に関して寄せたコメントを思い出した。ヘビースモーカーのそのタレントの主張は「俺はこれだけタバコを吸っても癌になってない。だから禁煙・分煙なんて意味がない」という趣旨だった。自身の経験だけを証左に、それもこれからもずっと癌にならないとも限らないのに、データを積み重ねてきた科学的考察を否定するという蒙昧な発言に甚だ呆れた。サンマ漁師の主張もこのタレントと大差がない。

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「科学データを「漁師の肌感覚」で否定する水産庁」の著者

寺岡 篤志

寺岡 篤志(てらおか・あつし)

日経ビジネス記者

日本経済新聞で社会部、東日本大震災の専任担当などを経て2016年4月から日経ビジネス記者。自動車、化学などが担当分野。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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