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自動車の電動化における元素戦略と資源争奪戦

リサイクル事業の本格的ビジネスの勝者は?

2018年2月22日(木)

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 自動車の電動化が進む中で、電池やモーターの開発は日々進んでいる。その中で各元素の役割が極めて重要な位置にある。中でも希土類元素が様々な機能を果たすことで重用されている。しかし一方では、このような元素が世界の限られた国や地域に限定された形で存在しており、戦略元素として、資源精製の現場から資源確保の調達ビジネスまで含めて、大きな意味合いを有している。

 歴史を遡れば、筆者がホンダに入社した1978年のこと、自動車業界では排ガス浄化を図る触媒の研究開発が急がれていた。排ガスに含まれる一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)を酸化させ、それぞれ二酸化炭素(CO2)と水(H2O)に変換する機能、そして同時に排ガス中の窒素参加物(NOx)を還元するという酸化還元反応を瞬時に行い、排ガスを浄化させる技術の開発である。

 その触媒が白金(Pt)とパラジウム(Pd)、そしてロジウム(Rh)であることから三元触媒と称される。前二者が酸化機能を発現し、Rhが還元機能を発現する。酸化還元を同時に行うことで、ガソリン燃料と空気の比率が非常に限られたウインドーという範囲内で可能となる、極めて化学量論的には芸術的な世界なのである。

 自動車業界では、1980年頃から実用化され今に至るが、この触媒技術における課題は、いずれも高価な貴金属元素が必要となる技術からの脱却だった。例えばPtを使わなくてもよいような触媒の研究などが進められて来た。ただ、業界関係の長年の努力も空しく、いまだにPtは不可欠元素として君臨している。

 同じような事象は、家庭用や自動車用に適用されている固体高分子型燃料電池(PEMFC)でも存在する。水素-酸素の電気化学反応で発電機能を発現する燃料電池でも、触媒作用がない環境下では水素-酸素の効率的反応が進まない。その仲介的役割を果たすのがPt触媒である。この反応システムにおいてもPt使用量の削減、あるいはPtフリーとなる研究が今でも進められている。

 2000年代前半には、100kWh級のPEMFCに対して100gのPtが必要とされていた。したがって、当時でもPt元素だけで1台当たり20万円ほどが必要とされていた。その後、Pt使用量を1/2から1/3程度まで下げる技術が開発されてはいるが、Ptフリーにまではたどりついていない。20年以上の大きな課題になっているが、脱Ptシナリオ構築の出口は見えていない。恐らく、今後も代替元素の発見は無いかも知れない。

モーターに必要な重金属希少金属からの脱却

 日本のモーター技術は、磁石の技術で先端を走る日本のお家芸の一つである。ネオジム磁石と称されるネオジム(Nd)-鉄(Fe)-ボロン(B)が、モーターに使われるポピュラーな磁石である。しかし、モーターも高温下に晒されると磁石の効率が低下し機能を損ねる。そのために保磁力維持のための耐熱性向上の目的に、ディスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)などの重希土類金属がNdを一部置換する元素として適用されてきた。

 しかし、このような重金属希土類元素は中国が最大の生産国であり、世界的な需要の拡大に伴って、中国政府が輸出や供給に関して関与するなど、その制限を強めてきた。特に、2010年から11年にかけては中国が事実上輸出制限したことで、これらの元素価格が10倍までに跳ね上がる高騰をもたらした。

 現在は価格もやや安定しているとはいうものの、当然ながら今後の調達に関して過敏にならざるを得ない。供給と調達戦略上では極めて不安定な元素であると同時に、今後の価格高騰も常に付いて回ることから、こうした元素に依存しない技術開発が強く望まれていた。

 このような背景からDyやTbを使わなくても、高温でも高い最大磁気エネルギー積(BHMax)を有す高性能磁石の研究開発が進められていた。ホンダでは、この高性能磁石技術を開発し、最新のモーターとして市販の電動車に適用している。

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「自動車の電動化における元素戦略と資源争奪戦」の著者

佐藤 登

佐藤 登(さとう・のぼる)

名古屋大学客員教授

1978年、本田技研工業に入社、車体の腐食防食技術の開発に従事。90年に本田技術研究所の基礎研究部門へ異動、電気自動車用の電池開発部門を築く。2004年、サムスンSDI常務に就任。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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