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虚偽の科学や技術はコンプライアンス欠如が原因

三菱自動車の燃費不正事件を事例に

2016年5月12日(木)

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 1990年代の米国ユタ大学から発信された常温核融合事件(後に、Bad Scienceと称された)、2004年に韓国ソウル大学の元教授ファン・ウソクが発表したヒト胚性幹細胞(ES細胞)捏造事件、そして最近のSTAP細胞事件に至るまで、科学論文にまつわるデータの捏造、改ざん、あるいは盗用、そしてそれに伴う撤回、論文誌からの抹消等々、科学の世界では、過去に多くの不正事件が世界を駆け巡った。

 もちろん、大半の科学は人類や社会のために多くの貢献をもたらし、生命活動を高い次元から支えてきたことに相違はない。しかし、一連の不正な科学が、科学自体の信ぴょう性を低下させてきたことも事実である。

 科学は再現性によって信ぴょう性が担保されるべきものだが、捏造や改ざんは第三者の追随実験で確認されてきた。すなわち再現性がないことが指摘されて明るみになってきた。論文の捏造、改ざんや盗用は後を絶たず、今後も科学の世界では、このような不正事件が起こり得るだろう。

 第三者が追随実験をすれば大概、正しいのか不正なのかはわかることだから、結局は研究者自身の倫理に委ねられる部分は多い。しかし、そこを無視して事件を起こせば、研究者としての道は閉ざされてしまうこと、そして社会的に大きな責任を負うことの認識が不足しているのだろう。

技術の嘘は長続きしない

 では、「技術」はどうだろうか。実際に起こった独フォルクスワーゲン(VW)でのディーゼル排ガスと二酸化炭素排出不正問題、そしてつい最近の三菱自動車の燃費虚偽申告事件は典型的なものだ。

 VWは乗用車部門のエンジン開発部門が、苦戦していた米国事業を立て直すために、ディーゼル車の排ガス試験の時だけ排ガス量を減らすソフトを適用する判断をしたという。

 そもそも、米国における窒素酸化物(NOx)排出基準は、欧州の基準より厳しく、開発側には大きな負担となっていた。そのような中、米国ウエストバージニア大学が実施した実際の路上想定での試験の結果、NOx基準値の35倍を検出したことが分かり、不正ソフトの存在が発覚した。一方の三菱自動車の場合は、協業している日産自動車での試験によって明るみに出た。

 消費者からの指摘ではなかったのだが、これは無理もない。VWの場合は消費者が走行中に認識できる内容のものではない。そして三菱自動車の場合は、消費者として見れば、「実際の燃費はこんなものか」と認識してしまうことだろうから。それだけ、消費者は自動車メーカーの数値表示を信用して購入しているのである。

 この2つの事件に関して言えば、実際に第三者が測定することでわかったことであり、逆な見方をすれば、第三者が測定しなければ両事件とも、その不正が今なお明るみに出ていなかったかもしれない。

 VWの不正事件が起きてから、筆者は本コラムで2015年10月8日、10月22日、11月12日と3回にわたってとり上げた。その中で、「VWが不正に至った3つの問題」と題した最初のコラムで、「開発陣や技術経営陣が変わる組織体制である中でも、かような事件が起こることは、正に組織ぐるみでなければあり得ない。日本の自動車メーカーでは考えられない事件である。」と記述した。しかし、残念ながら筆者の想いは覆されてしまった。

コメント9件コメント/レビュー

今流行の水素水や怪しい健康食品(大手企業も参入している)、果てはマイナスイオンなどの似非科学に近い情報が氾濫していますから・・・
韓国で言えば、布団掃除機のレイコップが「紫外線でダニを殺す」なんて情報(当然虚偽情報)が飛び交いましたが、結局その総括は行われていない気がしています。(なお、現在は雑菌を死滅させるに変更しているようです)・・・ここで虚偽表示なり錯誤なりで返品運動が起きれば面白かったのですが、価格が価格だけにそこまでは発展しませんでしたね。
個人的には「科学的根拠」や「実証の結果」よりも、形のない流行の方が「商売」としては美味しくなってしまう、と言う問題が顕在しているのではないかと考えます。
更に言えば、自動車の燃費虚偽申告は問題になっても、大手携帯キャリアの通信速度が理論値より大幅に低い状況であっても問題視されて報道されているのを目にしたことはありません。(個人で各駅や地方で実測したデータを上げたサイトなどを参考にするしかない)
虚偽報告や不正データは問題ですが、テストデータと実測値が一致した話など聞いたことがありませんので、参考値を競う世界の話になってしまっており、その結果(実質上はほぼ影響がないので)不正に手を染めたという話に近いのだと思います・・・そのような意味では、三菱自動車よりVW社の方が悪質だと感じますが。
結論から言えば、企業にコンプライアンスは働いていても、それ以上の圧力が働けば「お題目」は悲しい空言になり得るという話です・・・まさに労働法の様に(笑)(2016/05/19 09:47)

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「虚偽の科学や技術はコンプライアンス欠如が原因」の著者

佐藤 登

佐藤 登(さとう・のぼる)

名古屋大学客員教授

1978年、本田技研工業に入社、車体の腐食防食技術の開発に従事。90年に本田技術研究所の基礎研究部門へ異動、電気自動車用の電池開発部門を築く。2004年、サムスンSDI常務に就任。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

今流行の水素水や怪しい健康食品(大手企業も参入している)、果てはマイナスイオンなどの似非科学に近い情報が氾濫していますから・・・
韓国で言えば、布団掃除機のレイコップが「紫外線でダニを殺す」なんて情報(当然虚偽情報)が飛び交いましたが、結局その総括は行われていない気がしています。(なお、現在は雑菌を死滅させるに変更しているようです)・・・ここで虚偽表示なり錯誤なりで返品運動が起きれば面白かったのですが、価格が価格だけにそこまでは発展しませんでしたね。
個人的には「科学的根拠」や「実証の結果」よりも、形のない流行の方が「商売」としては美味しくなってしまう、と言う問題が顕在しているのではないかと考えます。
更に言えば、自動車の燃費虚偽申告は問題になっても、大手携帯キャリアの通信速度が理論値より大幅に低い状況であっても問題視されて報道されているのを目にしたことはありません。(個人で各駅や地方で実測したデータを上げたサイトなどを参考にするしかない)
虚偽報告や不正データは問題ですが、テストデータと実測値が一致した話など聞いたことがありませんので、参考値を競う世界の話になってしまっており、その結果(実質上はほぼ影響がないので)不正に手を染めたという話に近いのだと思います・・・そのような意味では、三菱自動車よりVW社の方が悪質だと感じますが。
結論から言えば、企業にコンプライアンスは働いていても、それ以上の圧力が働けば「お題目」は悲しい空言になり得るという話です・・・まさに労働法の様に(笑)(2016/05/19 09:47)

「『コンプライアンス欠如』が原因ではない。」のコメントに同意。
確かにコンプライアンスを守れば防げた可能性が高いのは事実だが、
守らせる工夫側の事ばかり議論しても、此方は対処療法側の対策。
「何故コンプライアンスが守られないのか」の根本である
「成果の強要」「未達成を許さない」「減点主義」「自動的に上がるハードルの設定が高すぎる」が問題である。
技術開発などは試行錯誤的な面もあって必ずしもコンスタントに成果が出るものではない。
熱効率などでも原理的に上限があり、近づくにつれ賭ける金に対して成果が小さくなる。
経済合理性で言えば注力を止めるべき潮時。
成果を求められる紐付き圧力が適切でないから虚偽が起こる。
まあ、純粋に実験・測定や論理が間違って、虚偽の結論が出ている事もあるけれど。
多くが、本人がわかっていての虚偽なんじゃないかな。昨今の問題になってるのは。
技術経営の話に戻れば、上記に加えて「上からの圧力」「YESマン養成風土」
これらを改善しない限り日本や韓国こそ同様の問題は続出するね。
三菱自動車の例を見ても、結果的にこういうことが最大のリスク。
虚偽に加担した関係者とその上層部への責任だけで留めるダメコンと
コンプライアンス教育しました、個人の責任ですと言い逃れしつつ
違反を勧める圧力について省みる事の無い会社を改善しない経営者が最大の癌(2016/05/15 14:07)

論文だったら試行錯誤の中で失敗もあります。
科学記者の目 核のごみを無害化 「常温核融合」の遺産を利用
2015年6月15日 06:30 有料会員限定 日経新聞
有害な放射線を何十万年も出し続ける「核のごみ」などを、無害な別の物質に変えてしまう「核変換」。
実際に原子転換は観察されていて検証が間違いだったのです。
検査では、実際に動かした燃費じゃなかったから設定でいくらでも都合の良い数値が出ますから誤摩化しが当然視されていて三菱だけの問題じゃないのです。
ゲームでズルが出来るならズルをするひとは出てきますし、サッカーなんか審判が見てなければなんでもあり、違反をしても英雄なんですから批判することが間違いですよ。(2016/05/14 19:34)

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