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車載電池のグローバル市場揺さぶるCATL旋風

迎え撃つ日系電池各社はどのように闘うか

2018年6月14日(木)

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 そうかといって、今さら電池セル製造まで行うかといえば、ここはジャーマン3も避けて通ろうとしている。それもそのはず、電池産業で一番利益を出しづらいのがセル製造プロセスであるからだ。図には電池研究の上流から電池の国際標準、あるいはサービスに関わるスマイルカーブを示す。

電池研究からビジネスまでのスマイルカーブ

 すなわち、セルの製造プロセスが底に入る構図で、上流側と下流側に大きなビジネスチャンスが存在する。また、セル工程での製造不良、例えば、モバイル用で頻発しているパナソニックのリチウムイオン電池(LIB)のリコールなども、製造過程での異物混入という説明が終始なされている。この製造段階ではリコールになり得るリスクを抱えているにもかかわらず、利益を押し上げるプロセスではないところが課題の1つだ。

 日本や韓国勢の電池メーカーをベンチマークして、セル事業から着手するのは、いくらジャーマン3といっても、利益率を確保できる可能性が高くない割には参入障壁が高いといえる。

 一方、独勢各社は電池用新素材の研究開発にも余念がない。基礎研究での知財を目指し、可能ならセルメーカーに知財をライセンスするところまで進めることができる可能性を狙っている。BMWは、ミュンヘンに電池素材研究センターを建設中で2019年から本格稼働させる計画だ。

 メルケル首相が打って出た第2のトップ外交は、より強烈であった。それは、2016年に中国政府が打ち出したエコカーライセンス制度に関するものである。BYDや上海汽車のようにEV生産に実績のある企業は、このライセンスを取得しなくても良いとされている一方、それ以外では20社に限定してライセンスを供与することで、電動車の生産と販売を許可するというプロセスである。

 17年の秋口までは20席の指定席のうち、14社の中国ローカル自動車メーカーと部品メーカーにライセンスが供与されたが、外資系企業は全くライセンスを得られていなかった。

 中国市場で外資系自動車メーカーのトップはVWである。同社が中国市場でのEVシフトに乗り遅れれば、それだけに影響は甚大だ。同社は上海汽車と第一汽車との間で、既に2つの企業と合弁事業を展開していた。エコカーライセンス政策にマッチするEVなどを市場に供給するには、新たな合弁が必要となっていた。しかし、中国政府は外資企業の合弁相手を2社までしか認めていなかったのである。ところが急遽、17年の秋口にその規制を緩和し、合弁相手を3社まで例外的に認める方針を表明した。これはVWへの大きな配慮であった。

 その結果、VWと中国ローカルのJACとの合弁(江准大衆)設立が可能となって、20席の指定席で15番目に、JAC-VWがライセンスを正式に受けることになった。では、何がそれを可能とさせたのか? VWの事業が中国で好調な事業を展開し続けないと、ドイツ政府にとっても大きな痛手となる。そこで動いたのがメルケル首相だ。中国の習近平国家主席とのトップ外交を通じて実現させた背景がある。

 残り5席の指定席には、未だにVW以外の外資がライセンスを受けたという話は無い。日系ビッグ3もやきもきしているのだろうが、一方で、合弁企業を立ち上げる際の外資側の比率を50%以上まで引き上げることを認める方針を、今年になってから中国政府は打ち出した。その背景には、テスラが中国にEVとLIBの生産拠点を構えることに配慮したこと、外資が新エネルギー車(NEV)を積極的に中国市場で展開しなければ、中国のローカルメーカーは技術や事業で成長できないという判断をしたからのようだ。

 もっとも、エコカーライセンスそのものが現在も神通力になっているのかどうかは不明である。昨年の秋以降、このライセンスに関しての新たな進展、すなわち16番目のライセンス供与の話は聞こえて来ない中、規制緩和は進行している。日系自動車メーカー各社にしても、大きな障壁ともとらえていなさそうであることを鑑みれば、その政策方針の実効性が気になるところでもある。

 ともかく、中国政府が打ち出しているエコカーライセンス政策に対し、また電池産業のドイツ内事業への取り込みなどに対し、メルケル首相が積極果敢に動いている事例と実績は如実に存在している。

コメント4件コメント/レビュー

車メーカーが電池メーカーとせっかく立ち上げた合弁会社をどんどん切り捨てているよう
に見えていましたが、今回の記事で、(車メーカーにとって)価値の高いモジュール化以降を抑えて、過当競争になるセル生産は電池メーカーがシェア争いをしやすくして(車メーカーの系列にかかわらず売って戦ってもらい)コスト低下に任せるという業界の流れなのかなと理解しました。全個体電池などの高容量、低価格の次世代電池にならないとEVが普及しないのは明らかなので、電池メーカーも、車メーカーも今はかじ取りが難しいですね。中国メーカーは自国分だけでも吸収できる(政策のゴリ押しがある)ので投資できるようですが、液晶パネルや古くは半導体(DRAM)の例に見るように、レッドオーシャンとなる見込みの分野に金をつぎ込むのは日系メーカーの誰しも避けたいところ。EVの時代はやがて間違いなく来るが、次世代電池の開発ができるまでは普及が足踏みするのも仕方ない時なのでしょうね。EVの時代が来た時にFCVの必要性がどれほどあるか、(FCVがEVを超える価値を提供できるのか)が改めて問われるのでしょう。(2018/06/15 10:59)

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「車載電池のグローバル市場揺さぶるCATL旋風」の著者

佐藤 登

佐藤 登(さとう・のぼる)

名古屋大学客員教授

1978年、本田技研工業に入社、車体の腐食防食技術の開発に従事。90年に本田技術研究所の基礎研究部門へ異動、電気自動車用の電池開発部門を築く。2004年、サムスンSDI常務に就任。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

車メーカーが電池メーカーとせっかく立ち上げた合弁会社をどんどん切り捨てているよう
に見えていましたが、今回の記事で、(車メーカーにとって)価値の高いモジュール化以降を抑えて、過当競争になるセル生産は電池メーカーがシェア争いをしやすくして(車メーカーの系列にかかわらず売って戦ってもらい)コスト低下に任せるという業界の流れなのかなと理解しました。全個体電池などの高容量、低価格の次世代電池にならないとEVが普及しないのは明らかなので、電池メーカーも、車メーカーも今はかじ取りが難しいですね。中国メーカーは自国分だけでも吸収できる(政策のゴリ押しがある)ので投資できるようですが、液晶パネルや古くは半導体(DRAM)の例に見るように、レッドオーシャンとなる見込みの分野に金をつぎ込むのは日系メーカーの誰しも避けたいところ。EVの時代はやがて間違いなく来るが、次世代電池の開発ができるまでは普及が足踏みするのも仕方ない時なのでしょうね。EVの時代が来た時にFCVの必要性がどれほどあるか、(FCVがEVを超える価値を提供できるのか)が改めて問われるのでしょう。(2018/06/15 10:59)

EVにシフトしたからと言ってトヨダに勝てると思うのは甘すぎる。

現在、テスラが抱えている問題がそもそも「自動車量産技術」という、まさにトヨタに代表される既存大手プレイヤーの得意領域だからだ。つまり、「電池とモーターさえあれば自動車(EV)なんて簡単に造れる」という思い込みこそが大きな間違いだ。

トヨタがEVを造ることは簡単。だが、新規プレイヤーは違う。まずは「自動車」を造れる様にならないといけない。また、既存プレイヤーにしても、誰が一番効率的に優秀な「自動車」を量産できるかが重要であって、特にEVに先行メリットがある程の技術的難易度はない。トヨタ先行はEVシフトじゃ崩せないよ。

あるとしたら、今までの自動車の延長線上には無い、新しくて高難度な技術だろう。すぐにトヨタが追い付けるようなものではだめだ。(2018/06/14 14:26)

中国は先端産業に関しては、中国内生産とパートナーへの技術移転を条件に進出を許可し、中国側のパートナー企業が力を付けたら合弁相手企業すら競争相手に国際市場に打って出る。世界一の規模を誇る中国市場を得るためには、何でもやる。特に西欧諸国は政府も企業も中国の軍事的な驚異に曝されていないので『ビジネス第一』で積極的に中国に売って出る。日本政府が同様に対応できないのは、一つには中国の『脅威』であり、二つ目には数年後には強力な競争相手になる可能性が高いことにある。日本政府には、常に『独裁中国を今以上に強力な国にして良いのか?』という懸念があるため、ドイツのように思い切ったアプローチが出来ない。逆に、英独仏の様に中国市場を手に入れるためならどんな協力もする国々が10年後20年後に後悔する日が来ないことを祈りたい。(2018/06/14 13:06)

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