• ビジネス
  • xTECH
  • クロストレンド
  • 医療
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

「消費税還元セール」解禁がもたらす日本の未来

自民党内では若手が「消費減税」も議論

2018年5月15日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

2014年の増税時、店頭では増税セールが目立った(写真=AP/アフロ)

 大型連休期間中に出てきた消費税率引き上げ関連の報道には、注目に値するものがいくつかあった。

 5月6日の朝日新聞朝刊によると、2019年10月に予定される10%への消費税率引き上げの前に「消費税還元セール」を解禁する方向で、内閣府や財務省が調整に入った。1997年4月の5%への増税時は還元セールが全国で相次いだ。しかし、値下げ分が納品業者にしわ寄せされた疑いや、「税は負担しなくてもいいもの」との誤った認識を消費者に与える可能性が問題視された。

 そこで政府は、14年4月の8%への増税時に還元セールを禁止した。だが、増税分を転嫁する値上げが増税直後に集中し、駆け込み需要とその反動が大きくなった。政府内からも「政府がそこまですべきでなかった」との声が上がっているという。そこで、還元セールを解禁して、英独の場合のように事業者の価格設定の自由度を高め、実際の値上げ時期の幅を広げることを狙うという。

 上記より前にも、ロイター通信が4月13日に「〔MOFウォッチャー〕政府の消費増税対応、価格転嫁の監視弾力化へ 給付金も選択肢」を配信。「政府は次回の消費増税時に景気変動を最小化させることを最重要課題と位置付けている」「政府は前回増税時に増税分の価格転嫁を厳しく監視した方針を転換。今回は価格転嫁を強制せず、値上げ・値下げの判断を小売業者に委ねる方向で、検討が進む見通しだ」としていた。

景気の振れを極力小さくしたいのは分かるが…

 さらに、翌14日には日本経済新聞が朝刊に「消費増税の転嫁 柔軟に 政府、法改正視野に検討」と題した記事を掲載。「増税時に一斉に価格を引き上げるのではなく、増税前から少しずつ商品やサービスの価格を引き上げるよう小売業者に促す。増税前後の景気の変動を少なくする」「増税前のセールの自粛を要請したり、増税後に住宅や耐久財の消費刺激策を設けたりすることも検討する」としていた。

 消費増税前後の景気の振れを極力小さくする、あるいは小売業者による価格設定の自由度を増すという政策目的は、たしかに十分理解できる。だが、政府を中心とする世の中全体がそうしたテクニックの面にこだわり過ぎると、以下に列挙する「もっと大事なこと」を見落としてしまう恐れがあるように思う。

 (1)消費増税による景気悪化要因で最も重要なのは「実質所得減少」(増税をうけた値上がりによる家計の購買力目減り)であって、駆け込み需要とその反動それ自体は持続性のある悪化要因ではない。

 この点にもう少し説明を加えると、消費増税をうけた個人消費(実質ベース)の動きで最も重要なのは、14年3~4月における指数の大きな振れ(日用品などの駆け込み需要による3月の急上昇と、その反動による4月の急低下)ではない。そうしたアップダウンを経た上で、実質消費のベースラインが、一段切り下がったことである<図>。

14年4月の消費増税前後の個人消費と実質賃金(1人当たり)の動き
(出所)内閣府、厚生労働省

 そして、消費水準のシフトダウンを引き起こしたのは、消費増税や円安などをうけた財・サービス値上がりによる、1人当たり実質賃金の減少である。雇用者数が増加することによる所得全体の押し上げが加わっても、消費総合指数が14年1月に記録した105.5に消費増税の後で再度たどり着いたのは、3年10カ月後の17年11月だった。

 (2)還元セールの有無や販売価格への増税分転嫁の時期の早い遅いにかかわらず、消費税による負担増加を、家計は遅かれ早かれ意識せざるを得ない(ちなみに14年4月の消費増税では、スーパーやファミレスの経営者が「6月下旬消費変調説」を唱えた。当コラム14年11月5日配信「ファミレスは今やセレブ向けレストラン? 最新業績動向から読み解く『6月下旬消費変調説』」ご参照)。

コメント10件コメント/レビュー

PB黒字化が達成できない間、次世代に手渡す『負の資産』である日本の借金は膨れ続ける。しかも、次世代の所得は初任給こそ良かったものの、何年働いてもほとんど増えないから子供でも生もうものなら子供の成長に連れて生活はどんどん苦しくなり、国の借金を減らすことなど出来る訳がない。『日本の国債は殆どが国内で買われているからデフォルトはあり得ない』なんて事を経済の専門家が言うから皆が本気にしている。せめて日本経済が発展すれば次世代の負担も少しは楽になるのだが、最も長期にわたって政権を担当してきた自民党も、既得権を保護する事を続けているから『日本発』の新ビジネスは出る訳がない。中国は『何でもあり』で既得権保護が殆ど無いから、誰でも競争に参加できるし、何でも出来る。共産党独裁の国よりも経済政策が保守的でがんじがらめだということに自民党識者は気付いていないのか!耳障りの良いキャッチコピーばかり次々と出て来るが、何一つ『成功』していない。本気で経済発展したいなら、既得権保護の政策を全て可及的速やかに全廃すべきだ。消費者も『お上が守ってくれる』なんて妄想を捨てて、自分の生活は自分で守る気概を持て、と言いたい。大災害があれば『国がなんとかしてくれる』と思い込み、『サポートが全然足りないし、復興も全然進んでいない』などと不平を言っている場合ではない。日本の財政は破綻寸前で復興に湯水のように資金を投入する余力など何処にもないのだ。結果『負の遺産』ばかりが大きく膨らみ続けている。次世代にどの様な顔を出来るのだ!(2018/05/15 19:38)

オススメ情報

「上野泰也のエコノミック・ソナー」のバックナンバー

一覧

「「消費税還元セール」解禁がもたらす日本の未来」の著者

上野 泰也

上野 泰也(うえの・やすなり)

みずほ証券チーフMエコノミスト

会計検査院、富士銀行(現みずほ銀行)、富士証券を経て、2000年10月からみずほ証券チーフマーケットエコノミスト。迅速で的確な経済・マーケットの分析・予測で、市場のプロから高い評価を得ている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

PB黒字化が達成できない間、次世代に手渡す『負の資産』である日本の借金は膨れ続ける。しかも、次世代の所得は初任給こそ良かったものの、何年働いてもほとんど増えないから子供でも生もうものなら子供の成長に連れて生活はどんどん苦しくなり、国の借金を減らすことなど出来る訳がない。『日本の国債は殆どが国内で買われているからデフォルトはあり得ない』なんて事を経済の専門家が言うから皆が本気にしている。せめて日本経済が発展すれば次世代の負担も少しは楽になるのだが、最も長期にわたって政権を担当してきた自民党も、既得権を保護する事を続けているから『日本発』の新ビジネスは出る訳がない。中国は『何でもあり』で既得権保護が殆ど無いから、誰でも競争に参加できるし、何でも出来る。共産党独裁の国よりも経済政策が保守的でがんじがらめだということに自民党識者は気付いていないのか!耳障りの良いキャッチコピーばかり次々と出て来るが、何一つ『成功』していない。本気で経済発展したいなら、既得権保護の政策を全て可及的速やかに全廃すべきだ。消費者も『お上が守ってくれる』なんて妄想を捨てて、自分の生活は自分で守る気概を持て、と言いたい。大災害があれば『国がなんとかしてくれる』と思い込み、『サポートが全然足りないし、復興も全然進んでいない』などと不平を言っている場合ではない。日本の財政は破綻寸前で復興に湯水のように資金を投入する余力など何処にもないのだ。結果『負の遺産』ばかりが大きく膨らみ続けている。次世代にどの様な顔を出来るのだ!(2018/05/15 19:38)

理屈では、消費税は課税分を価格に転嫁し、消費者が負担するもの。
一方、還元セールは、イベント営業であり、増税イベントに合わせて生産者の儲けを削った値引でシェア拡大を図るもの。
これが無視できない程の広がったことが8%増税時にカルテル容認など転嫁に拘った原因。還元セール常態化は、上流メーカーの儲けまで削る。家計負担の税との消費税導入時の理屈と齟齬が生じ、経済界も一斉転嫁を望んだのであろう。
増税前セール自粛など転嫁を分かりにくくしても増税の影響が薄まるわけではなく、ないものねだりはその通り。
支出過小・貯蓄超過経済の下では、増税は経済縮小の素でしかなく、また、無意味な規律に囚われ、増税により政府債務を減らしても国民の資産減少と相殺するだけである。自民党若手の提言に正しい部分もあるが、実現は先ず無理。増税延期も杞憂に過ぎない。
一方、与党の若手議員は、日本経済が直面する最大の問題を認識できていない。20年以上成長が止まる停滞は、高賃金・高付加価値産業が一向に拡大せず、産業競争力低下が続いているため。原因の多くは企業行動にある。闇雲に政府支出を増やすことは解決策とならない。安易に就かせ、競争力を低下させる場合もある。最大の憂慮は、若手政治家の分析力・発想力の劣化である。(2018/05/15 15:31)

筆者は恐らく、「国の負債が増えて財政危機なのに、日銀の国債買い入れのせいで金利が上昇せず、警告機能が正常に働かない。」と思っているだろうが、大きな見当違いをしている。

そもそも警告機能は死んでいない。仮に金利上昇を日銀が無理矢理に抑えこんでいるのであれば、インフレ率の急上昇という「警告装置」が作動し、その歪みが表に出るはずである。インフレ率に上昇の兆しすら生まれず、何も歪みが出ていない(=市場が更なる国債発行を容認している)ということは、今は筆者が考えているような財政危機でも何でもない、ということになる。今回提言した若手議員達は、その点を理解しているからこそ、こういう動きに出たのであろう。

財政の「真の実情」を見ようともせず、「日本という国は「苦い薬」を飲み続ける必要がある」などという、現実を見ない理論を振り回す筆者よりも、私は彼ら若手議員達の方が遙かに信用できる。

筆者のように、現在の様々なシグナルを真面目に見ようともせず、金科玉条の如く財政出動を「財政規律の緩み」として忌み嫌う姿勢こそが、日本の没落を加速している。その事をそろそろ、真摯に受け止めて欲しいと思う。(2018/05/15 15:07)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

不満や不安を明確にすると、 解決案を見つけやすくなる。

ジェレミー・ハンター 米国クレアモント大学経営大学院准教授