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中東混迷の原因は「宗教ではなく政治」との声も

村上春樹氏も言及のパレスチナ自治区「分離壁」探訪

2017年8月29日(火)

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 1967年6月5日に始まったイスラエルとアラブ諸国の戦争「第3次中東戦争」は、イスラエルが6日間で勝利した。イスラエルはヨルダンが統治していた東エルサレムとヨルダン川西岸、ガザ地区などを占領した。
 その後の紆余曲折を経て、ヨルダン川西岸地区にあるベツレヘムは1995年以降、パレスチナ自治政府が治めているが、イスラエルが建設した高い壁に取り囲まれ、約10キロメートルほどしか離れていないにもかかわらずエルサレムとの経済格差は大きい。筆者は会社の夏休みを利用して、エルサレムとベツレヘムを今回訪れた。

ベツレヘムで乗ったタクシー運転手が力説したこと

イスラエルとパレスチナ自治区
オレンジ色の部分がパレスチナ自治区(ヨルダン川西岸地区とガザ地区)。ただし、ガザ地区は、イスラム原理主義組織のハマスが実効支配している。

 「問題は宗教じゃないんだ。この街ではムスリム(イスラム教徒)とそれ以外が半々だけど、みな仲良く暮らしているよ。悪いのは政治だ。外国の人にはそれを理解してほしい」。

 夏休みを利用して8月18日に訪れたパレスチナ自治区のベツレヘムで乗ったタクシーの運転手アリ氏は、このことを何度も筆者に力説してきた。

 ナチスドイツによる迫害・ホロコーストを生き延びたユダヤ人たちが1948年に建国したイスラエルと、すでに何百年も前からそこに住んでいたパレスチナ人の対立を、ユダヤ教とイスラム教の根深い宗教対立をベースにして、われわれはとらえがちである。しかし、最大の問題は実は政治なのだということが、現地で状況を見聞きするとよくわかる。

エルサレムとベツレヘムの間の経済格差

 特に問題なのは、イスラエルのヨルダン川西岸などへの入植政策・パレスチナ人分離政策である(分離壁については後述)。地理的にはすぐ近くであるにもかかわらず、エルサレム(特に新市街)とベツレヘムの経済格差のあまりの大きさは、覆い隠しようがない。

写真1
地方政府庁舎の廊下にかかっていた、ファタハの故アラファト初代議長(パレスチナ解放機構議長)の肖像画。(写真=筆者撮影、以下同)

 さらに、パレスチナ側では内部の政治対立が激しくなっている。筆者が今回訪れたヨルダン川西岸地区は、パレスチナ自治政府のアッバース議長(大統領)が率いるファタハが支配している。アッバース氏の前任者は、イスラエルとの共存を前提に中東和平に尽力してノーベル平和賞を受賞した故アラファト議長である。ベツレヘムでたまたま足を踏み入れた地方政府庁舎の廊下には、彼の肖像画がかかっていた<写真1>。

 タクシーのアリ氏も彼を尊敬しているとのことで、車内に写真が飾られていた。一方、シナイ半島の北東部にある小さい飛び地のガザ地区は、イスラム原理主義組織のハマスが実効支配している。イスラエルがガザ地区との境界を封鎖しており、ガザ地区は「天井のない監獄」と呼ばれているという。さらに、一般家庭では1日に3時間しか電気を使えないなど、同地区は過去最悪の電力不足に見舞われている。自治政府のアッバース議長は4月以降、ガザ地区の発電所向け燃料に課税したり、イスラエルからガザへ送られる電力の料金支払いを削減したりして、ハマスに圧力をかけている(8月16日 時事)。

 今回の個人旅行で筆者がたどったコースは、アエロフロートに乗り、モスクワ経由でイスラエル・テルアビブに同日深夜着。1泊してからエゲッド・バスという高速バスでエルサレム入りというものである。エルサレムでは、イスラエルが1967年の第3次中東戦争で占領して併合した東エルサレムにある、城壁と門に囲まれた旧市街の中級ホテルに宿泊した。ダマスカス門の近くで、このあたりはイスラエルが占領する前はヨルダンが統治していたため、宿のスタッフや宿泊客を含めてアラブ系の人がほとんどである。ユダヤ人が多数派で街並みがヨーロッパ並みに近代的な新市街とは、全く別の国の様相を呈している。

コメント6件コメント/レビュー

2年前に巡礼として行ったので、懐かしく読ませてもらった。八メートルの壁の中に入植地をどんどん造成、建設して世界のデイアスポラのユダヤ人が住めるようにしていっている。旧市街地のアラブ人経営のホテルに宿泊した時,若者のダンスをみたがアラブの若者と思ったがユダヤ人の若者だった。私には見分けがつかなかった。人種的にはアラブ人とユダヤ人はハム系の同じ人種だから同じに
見えるときもあるのだ。問題はナクバと呼ばれるアラビア語でアラビア人にとって大災難の意味は
深い。有名なイスラエル首相ベングリオンが軍備をしっかりしておくように後世に言い残したのは
ユダヤ人の入植の仕方があまりにも現住のパレスチナ人を無視したやり方で国連までも公平ではなかったこと。パレスチナのアラファトを含めたパレスチナリーダーの金銭感覚も賄賂を好み前近代的なセンスしかない事も問題。願うことは、お互いを許し合って共存共栄を目指す様になってほしい。(2017/09/01 19:55)

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「中東混迷の原因は「宗教ではなく政治」との声も」の著者

上野 泰也

上野 泰也(うえの・やすなり)

みずほ証券チーフMエコノミスト

会計検査院、富士銀行(現みずほ銀行)、富士証券を経て、2000年10月からみずほ証券チーフマーケットエコノミスト。迅速で的確な経済・マーケットの分析・予測で、市場のプロから高い評価を得ている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

2年前に巡礼として行ったので、懐かしく読ませてもらった。八メートルの壁の中に入植地をどんどん造成、建設して世界のデイアスポラのユダヤ人が住めるようにしていっている。旧市街地のアラブ人経営のホテルに宿泊した時,若者のダンスをみたがアラブの若者と思ったがユダヤ人の若者だった。私には見分けがつかなかった。人種的にはアラブ人とユダヤ人はハム系の同じ人種だから同じに
見えるときもあるのだ。問題はナクバと呼ばれるアラビア語でアラビア人にとって大災難の意味は
深い。有名なイスラエル首相ベングリオンが軍備をしっかりしておくように後世に言い残したのは
ユダヤ人の入植の仕方があまりにも現住のパレスチナ人を無視したやり方で国連までも公平ではなかったこと。パレスチナのアラファトを含めたパレスチナリーダーの金銭感覚も賄賂を好み前近代的なセンスしかない事も問題。願うことは、お互いを許し合って共存共栄を目指す様になってほしい。(2017/09/01 19:55)

上野さんの結論に否定的なコメントしかないことには驚きましたが、
私も、壁をつくることは愚かなことだと言わんばかりの記事の論調には、違和感を覚えました。

中東の情勢は存じませんが、少なくとも米国のトランプさんは、壁でもつくらないと「麻薬密売人」がラクラクと不法入国してくるから、壁をつくると言っているわけですよね。
実現していませんが、ラストベルトの状況は切実であり、麻薬をちゃんと取り締まらない国と国境を接しているという米国の環境下で、壁の是非について、何も知らない第三者が浅慮に意見するべきではないように思うのです。

コメントを読むと、中東情勢もまた、ムスリムは女性の人権を認めない文化であるようで、
それは、壁が必要だという話になるのもわかります。
こちらの壁もまた、何も知らない第三者が浅慮に、人間の愚かさの象徴のように言ってはならない、愛する家族を守りたいという願いの象徴として建造されたもののような気がします。

3メートルでは、2、3人のならず者が肩車したら乗り越えられてしまいますよね。
特別な機材を用意する必要すらなく。
ならず者が数人集まっただけでは乗り越えられない壁でなくては、意味がありません。
だから、8メートルにしたのではないでしょうか。(2017/08/30 10:20)

 <歴史的に複雑に入り組んでいる土地で平和を維持するには、違いを認めた上での妥協と協調>
ユダヤ人の考える正義と、アラブ人が考える正義とは大きく異なります。「違いを認めた上での妥協と協調」が出来ないから、中東和平が難しいのです。
 イスラム教の安息日は金曜日。ユダヤ人の安息日(シャバット)は土曜日。古代の日本と同様に、一日は日没から始まるので、シャバットは金曜日の日没から土曜日の日没までです。これ位は正確に記載して下さい。不正確な事実認識を基に、アラブイスラエル紛争を論じても誤解を広げるだけです。(2017/08/29 14:39)

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