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2018年は「人間とは何か」が問われる年になる

不安の時代に問われる根源

2018年1月1日(月)

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 2018年以降、「AIで多くの仕事が淘汰される」「AIにはできない仕事だけが残る」という議論がますます増えていくでしょう。究極的に言えば、およそ経済合理性を求める分野において、人間がAIに勝る分野などというものはないかもしれません。しかしながらAIによる「人間が従来、人間らしい・人間にしかできないと思っていた領域」に対する侵犯は、おそらく技術の進展と低コスト化が進む中で段階的に実現していくことになるはずです。その過程で、私たちの仕事は、すぐにAIに代替される分野とされにくい分野に分かれていくことになるでしょう。そこで私たちは、私たちにとっての「労働の価値」の反転――例えば、膨大な数の条文や判例を覚えて新しい判断を下すような仕事や、人間の身体を透過した膨大な映像の特徴を記憶して別の映像から病気の兆候を見出すといういうような仕事が、その難易度と付加価値の大きさゆえに、真っ先にコストをかけてAIに代替されていく一方で、接客業などの仕事はAIによる代替が進まない、というような――に直面していくことになるかもしれません。

 人間が、ただ生きる生き物ではなく、誰かのために、何かのために「はたらく」生き物だとするならば、AIの進化はその根底の価値観すらをも覆す可能性を持っていると言えると思います。

終焉した企業と個人の“共犯関係”

 2018年が「人間」を問い直す年になる、と私が考えるもう1つの背景は、昨今の「働き方改革」の議論の進展です。

 経済活動を可能にする資源には、ヒト、モノ、カネ、そして情報があります。企業社会は、サプライチェーンの最適化、直接・間接金融の整備やキャッシュマネジメントの導入、ITの活用によって、モノ、カネ、情報を最適に配分し、活用する技術を磨いて来ました。そして、ほぼ手付かずで取り残されていた分野がヒトのマネジメントでした。

 主として製造業などにおいては、ヒトの生産性を管理する手法がいくつか試みられてきましたが、その多くは、ヒトを生産設備のように見立てて、一定の時間内にいかに品質を落とさずに生産量を最大化するかに眼目が置かれたものでした。ところが今、企業社会や経済活動の中で、経営資源の1つに過ぎなかったはずのヒトが人間としての姿で立ち現れ始めています。ワークライフ・バランスをどう取るか。出産や介護とどう両立するか。働き甲斐をどう感じるか。いずれも生産設備には生まれ得ない悩みです。

 最も扱いの難しいこの経営資源とどう向き合うか。2018年以降、企業経営における最大のテーマの1つになることは間違いないでしょう。

 働けば働くほど豊かになれる個人と、働かせれば働かせるほど成長できる企業。この二者の“共犯関係”は、国全体の成長、全員の成長を前提にしたものだったように思います。しかし、経済のグローバル化が優勝劣敗を決する速度を飛躍的に上げる中で、全員が成長すると思える幸福な時代が訪れることは二度とないでしょう。そこに加えて、一定以上豊かになった個人の中には、「豊かになる」以外の幸せの尺度を持つ人たちも出てきました。さらに、人口減少や少子高齢化によって労働力が減少し、企業と個人の力関係は一変。結果として、共犯関係は失われてしまいました。失われた以上、企業の成長と個人の幸福は、努力なくして一致しないものになってしまったと言っていいはずです。

コメント13件コメント/レビュー

古代ギリシャでは、労働は奴隷に任せて、市民は『哲学』したとか言います。
現代では、その奴隷がエンジンやコンピュータに姿を変えて、途方もなく強力に賢くなってきた。
しかしAIは、どんなに賢くなっても、所詮は過去データの延長線上に未来を描くのみです。
過去のしがらみに囚われないで創造性を発揮することはAIには出来ない。
芸術活動とか、宿命克服とかは、AIがどんなに進化しても対応できない領域ではないだろうか。
そこが、未来の市民が向かうべき『哲学』ではないだろうか。(2018/01/10 16:55)

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「2018年は「人間とは何か」が問われる年になる」の著者

池田 信太朗

池田 信太朗(いけだ・しんたろう)

日経ビジネスオンライン編集長

2000年に日経BP入社。2006年から『日経ビジネス』記者として、主に流通業界の取材に当たる。2012年『日経ビジネスDigital』のサービスを立ち上げて初代編集長、2012年9月から香港支局特派員、2015年1月から現職

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

古代ギリシャでは、労働は奴隷に任せて、市民は『哲学』したとか言います。
現代では、その奴隷がエンジンやコンピュータに姿を変えて、途方もなく強力に賢くなってきた。
しかしAIは、どんなに賢くなっても、所詮は過去データの延長線上に未来を描くのみです。
過去のしがらみに囚われないで創造性を発揮することはAIには出来ない。
芸術活動とか、宿命克服とかは、AIがどんなに進化しても対応できない領域ではないだろうか。
そこが、未来の市民が向かうべき『哲学』ではないだろうか。(2018/01/10 16:55)

記事になるように〝人間〟の存在感がますます問われる時代になったようですが、ここで大切なのは〝個〟の確立とトレンドに惑わされないことだと感じます。
ご指摘のようにAIの進歩は凄まじいものがありますが、一方でマスコミを含めてAIと大量データ処理を明確に意識しないで使っているのが心配です。 今AIと呼ばれているものの大多数は高速大量処理が可能になったコンピーターを使用した大量データ処理で、基本的には過去のデータの傾向で目の前の現象を判断していますので人工知能とは趣が異なります。 即ちこの手法では過去の傾向からの離脱ができないということですが、一方人間の知能は過去のデータから離れたアイデアや作品を作り出せることに特徴があります。
企業が宣伝としてAIを使用するのは構いませんが、マスコミ報道でも何でもかんでもAIと呼んでしまう傾向にあるのは疑問に感じます。
もっと、背景や状況を深く調査し、考慮した発信が望まれます。 さもなくば、SNSで発信されている根拠のわからないニュースと同一レベルになってしまうのではないでしょうか。
民主主義については様々な欠陥があり、いわゆる〝民主主義のコスト〟の強要することが大切です。
適切な解に至るまでの時間とコスト、オーバーシュート、アンダーシュート、トレンドに流されるリスクなどですが、それでも他に比べて優れたシステムだと思います。 ここでも〝個〟の確立が大切です。(2018/01/10 10:46)

人間とは何か。この根本の問いについて自分もここ数年考えてきました。
世間がICTを「操り富を増やせる」ことに舞踊り始めたころから、いつか人間はこうした技術に則られるのではないか、と一抹の不安を抱いていました。
著者のおっしゃる通り、プリミティブな時代は人下が機械化することで、様々な生産活動の効率が飛躍的に上がり、富が増殖していった。しかし、その富の増殖の背景には、豊かな地球資源・環境があったからこその前提。そして富あるところに人間の「欲」が増大し、争いが起こる。その争いにも「技術」が魔の手を伸ばし、人間は欲の果てに自らを死滅させる方向に突き進みつつある・・・。

では、原始に戻ればいいのか?それは無理。地球環境という資源が戻るためには、気の遠くなる時間が必要。それに太陽がもう寿命を迎えてくるので。

人は、いまこそ自分たちの置かれている環境を冷静に判断し、利権争いを即刻やめ、「共有」する世界の実現を考えるべき。(2018/01/10 09:50)

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