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働き方改革は「下請けいじめ」になりかねない

生産性を高める「働きがい改革」を

  • 小宮 一慶

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[1/3ページ]

2018年2月22日(木)

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 裁量労働制を巡って厚生労働省が不適切なデータを作成していた問題がクローズアップされている働き方改革ですが、本格的に企業が取り組み始めてから、約1年が経過しました。企業には今、大きな変革の波が押し寄せています。

 働き方改革の大きな柱は2つ、「同一労働同一賃金」と「長時間労働の是正」ですが、並走するように、賃上げ圧力も高まっています。

 帝国データバンクが発表した2018年度の賃金動向に関する企業の意識調査では、正社員の賃金改善を見込むと回答した企業は56.5%(前年度は51.2%)にのぼり、2006年1月の調査開始以降最高の数字となったそうです。経団連も2018年の春闘に向けた指針の中で、「3%の賃上げ方針」を明記しました。

 生産性を上げながら、従業員の残業時間を削減し、なおかつ3%の賃上げを実施する。すべて実現できれば素晴らしいことですが、大多数の企業にとっては極めてハードルの高い目標です。

 そして、私は大企業がこの改革を進めていくと、大きな問題が起こるのではないかと懸念しています。また、本質的には、宅配便の値上げも同じ問題をはらんでおり、すでに下請け企業に影響が出始めています。同じことが大企業の賃上げでも起こることを心配しています。

矛盾する「資本効率の向上」と「賃上げ」、「働き方改革」

 近年、大企業は「資本効率の向上」を大きな目標として掲げています。その大きなきっかけとなったのは、2014年8月、経済産業省が「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクトの最終報告書を発表したことでした。この座長を務めたのが一橋大学大学院商学研究科の伊藤邦雄教授(当時)で、そこから通称「伊藤レポート」と呼ばれています。

 同レポートでは、日本経済の低成長が長い間続いている最大の原因は、日本企業の利益率が低く、資本効率が低いことだと指摘した上で、「日本企業はROE(自己資本利益率)8%を最低ラインとして、その上を目指すべき」と具体的な目標を提示しました。

 その結果、多くの大企業が努力を重ね、昨年の時点で8%の水準は到達しています。一部の企業では、目標値を10%まで引き上げています。私が関わっている上場企業でも、ROEの数値を経営の重点目標としているところが少なくありません。

 賃上げ圧力、働き方改革、ROE目標。この3つが重なりますと、どんなことが起こるでしょうか。

 人件費を上げるということは、コストが上がるということです。その一方で利益率も高めなければなりません。ここで矛盾が生じるわけです。

 もし、経済が順調に成長し、市場が拡大していれば、収益が増え賃金も上がるという好循環を起こすことができます。ところが、残念ながら現在の日本経済の足腰はそれほど強くありません。

 国内市場が十分に成長しない中、経団連が「賃金を3%上げる」と言いますと、株主たちからは、「賃上げをするのは構わないが、利益を伸ばしてくれ」という声が上がります。すると企業としては、人件費以外の経費を削減せざるを得なくなるわけです。

 また、人手不足から、宅配便の値上げが相次いでいます。これも企業にとっては少なからぬコスト上昇要因ですが、それも、売り上げや利益が上がる状況でなければ、他のコストを削ることで対応するしかありません。

 その結果、何が起こるか。私が懸念するのは、いわゆる下請け企業にしわ寄せが向かうことです。宅配便の値上げは政府には関係のないことでしょうが、政府は「下請けいじめ」のリスクを考慮した上で働き方改革を打ち出しているのでしょうか。

コメント16件コメント/レビュー

現場を知らない経営陣、仕事が組み立てられず、経営者の目線だけ見て、部下を死ぬまで働かせる上司。日本ではとても働き改革は受け入れられない。
大企業の不祥事は全て、この問題が原因である。
現在の働き改革法案は大企業のみ実施すれば良い。中小企業はとても受け入れられない。

そして働く人は「命を守る」か「仕事をする」か決めて働くことが一番大事である。(2018/03/05 13:49)

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いただいたコメント

現場を知らない経営陣、仕事が組み立てられず、経営者の目線だけ見て、部下を死ぬまで働かせる上司。日本ではとても働き改革は受け入れられない。
大企業の不祥事は全て、この問題が原因である。
現在の働き改革法案は大企業のみ実施すれば良い。中小企業はとても受け入れられない。

そして働く人は「命を守る」か「仕事をする」か決めて働くことが一番大事である。(2018/03/05 13:49)

必要なのはやりがいではなくカネに決まっています。
経済界は、労働者が消費者でもあることに決して目を向けようとしない。
カネもないのに消費なんかできないでしょう。
適正な労務管理と十分な賃金支払ができない企業は淘汰されるべき。(2018/03/05 12:35)

今の働き方改革の議論は、政治家の言っていることも、行政の言っていることも、産業界の言っていることも、的はずれで、滑稽ですらある。

働き方を変革するためであれ、生産性を向上させるためであれ、大前提となるのは仕事の任せ方である。仕事と時間に対して充足な裁量が与えられていて初めてプロセスに個人の創意と工夫の余地が生まれ、時短や生産性向上が可能になる。

仕事には様々な種類があり、成果が習熟度と時間の量に比例するものもある。そのような仕事では、習熟度に応じて賃金の時間単価が設定されており、労働時間の量が会社や上司によって適切かつ厳格にコントロールされねばならない。

しかし、成果の高さが習熟度と時間に依存しない仕事では、会社や上司の厳格なコントロールはかえって成果を低下させる。そのような仕事では創意・工夫とか、繋がりや連携とかいうものの重みが格段に増す。

もちろん、自由放任、勝手次第というわけではない。まずは、何をどこまでやるかという目標は明確に定めて共有しなければならない。これは絶対的に重要である。一方で、目標を達成するためのプロセス、すなわちやり方や時間の使い方は任せなければいけない。これがなければ仕事は単なる作業でしかない。

日本の会社はここが違っている。上司に権限を持たせ、部下には作業だけをさせる。でも、上司はビジョンを何も語れない。そのくせ、自分は責任は取らず、部下におしつける。逆なのだよ。ビジョンを語り、仕事を任せ、責任を取る。これが上司の仕事。

任されて初めて仕事は価値と意味のあるものになる。人間は仕事な面白さ、楽しさ、やり甲斐を感じる。仕事もそれをする人間の思いに応える。

仕事が自由や喜びではなく、義務や苦痛になっている昨今、働き方改革がヒトと仕事との本当によい関係を取り戻す契機になることを願ってやまない。(2018/02/23 17:01)

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