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オスプレイの設計は見事、そして鳥人間の罠

オリンポス・四戸哲社長インタビュー(第6回)

2018年5月10日(木)

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 物理的な原理原則が分かると、今まで見えていたものと全く違う世界が見えてくる――過去30年以上、航空機開発一筋できた四戸哲氏にかかると、今まで漫然と理解した気分になっていた飛行機のあれこれが、まったく違った方向から光を当てられる。取材の中で出た本筋以外の話題をまとめ、四戸氏の了解を得てここに掲載する。

※上の写真は前回などで触れた、米国の「自作飛行機好きのコミケ」的なイベント、EAA AirVenture Oshkosh(オシコシ、オシュコシュ)。主催のEAA(EXPERIMENTAL AIRCRAFT ASSOCIATION)へのリンクはこちら。写真提供は八谷和彦氏(こちら

松浦:ついでにといっては申し訳ないのですが、せっかく四戸さんから話をお聞きするチャンスなので、MRJや日本の航空産業から離れたテーマについても、質問してしまいましょう。

 私には、空を飛ぶ道具がものすごい変革期に来ているんじゃないかという気がするんです。具体的には電動モーターとバッテリー、そして制御です。

 ドローンは、今や実用に使われるようになりつつあります。4つから8つのプロペラを上に向けて飛ぶことが、電動モーターと制御の技術でできるようになったからです。

四戸:マルチコプターというやつですね。プロペラ4つならクワッドコプター、8つならオクタコプター……。

松浦:そこで世界中を見渡してみると、人が乗れる電動のマルチコプターを作って飛ぼうとする計画がどんどん出ています。YouTubeを見ると彼らの動画がたくさんあります。それこそ、搭乗者の腰のあたりでプロペラを回すような危ない機体もあって、「ひとつ間違ったら胴体切断だから止めろ」と思ったりもしますが。あれ、四戸さんはどのように見ておられますか。

バッテリーと制御技術が飛行機械を変革する

四戸:おっしゃる通りだと思います。きっかけはまずバッテリーの進歩ですね。バッテリーのエネルギー密度が高くなって、より軽く、より大容量になりました。この結果、電動で空を飛ぶことが現実的になってきたわけです。

松浦:30年前にラジコンの模型飛行機で起きたことと同じパターンですよね。それまでエンジン機だったところに、バッテリーの進歩で電動モーターが使えるようになり、はるかに扱いやすいものだから、ラジコン機の電動化が一気に進みました。

 今回はバッテリーに加えて、もう一つの技術要素があります。制御です。制御技術の進歩でクルマの自動運転が出てきたわけですが、自動運転は、実は地上よりも空の方がはるかにやりやすい。

四戸:障害物がないですからね。自動運転の無人航空機は区分けされた空域、つまり3次元のブロックの中を、厳密に外れることなく飛行できます。

松浦:今や、ドバイでは警察用に有人マルチコプターを試験的に導入しようとしているじゃないですか。ひょっとしたら電動モーターと自動運転を組み合わせた飛行機械は、人間のモビリティ、動くための道具の革命になるんじゃないでしょうか。飛行機という機械の概念自体がひっくり返るかもしれない。

四戸:そうですね。ただし、2乗3乗の法則を皆さん失念されています。

編集Y:なんでしたっけ……。

松浦:面積は寸法の2乗に比例して大きくなるけれども、重量は3乗に比例して大きくなるという法則ですよね。マルチコプターも人が乗るほど大きくなると、成立しにくくなるということですか。

四戸:今話題になっている、無人で宅配便を配達するとか、上空から無人で交通違反車両を監視するといった用途に使おうとしているマルチコプターは、みな小さいですよね。積むのは比較的軽いカメラとか宅配の荷物などで、人間という重い荷物を積む必要はありません。マルチコプターはプロペラの推進力で浮上します。人を積むために大型化すると2乗3乗則でどんどん重くなりますから、大きくて重い機体ほど高出力のモーターと大容量のバッテリーが必要になります。

 では、なぜドローンでマルチコプターがここまで流行したかというと、松浦さんの言う通り電動モーターの制御が容易になったからです。

ドローン:無人航空機の総称。英語のdroneはハチの羽音のことで、ブンブンと音を立てて飛ぶことから無人航空機もドローンと呼ぶようになった。

マルチコプター:複数、通常は4つ以上のプロペラを上に向け、下方に吹き付ける空気の流れで浮上する航空機の総称。

回転翼とプロペラ、そしてサイクリックピッチコントロール

Y:人間の移動手段として使うには、2乗3乗則があるからモーターとバッテリーでは力不足、ということなんでしょうか。

四戸:現状ではその通りなんですが、もう一つ大きな問題があります。マルチコプターはプロペラを上に向けて浮上していますよね。マルチコプターとヘリコプターの違いって分かりますか。

Y:プロペラの数ですか。

四戸:ヘリコプターの上についているのはプロペラではないです。回転翼です。ヘリのことは日本語で回転翼機というじゃないですか。もっと具体的に言うとプロペラは連続的にねじれていますよね。ヘリの回転翼はねじれていません。あれは回っている翼なんです。

Y:……そういえば、そうですね。じゃ、マルチコプターは回転翼じゃなくて、プロペラなんですか。

プロペラ(左、カーチスP40戦闘機)はねじれているが、ヘリコプターの回転翼(陸上自衛隊のAH-64攻撃ヘリ)はねじれていない(写真:松浦晋也)

四戸:ヘリコプターもマルチコプターも回転面に平行に飛びます。ところがマルチコプターの場合は、この飛び方は非常に非効率的なんです。

Y:水平飛行が苦手、なぜでしょう。

コメント48件コメント/レビュー

T-2のスポイラーは操舵時に薄翼の一部が上方に回転して翼下面から上面に気流が吹き抜けるタイプなので、たとえ迎え角がゼロでもマイナスでも通常のロール操縦が可能です。
記事全般は非常に興味深く読ませて頂きました。(2018/05/21 20:05)

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「オスプレイの設計は見事、そして鳥人間の罠」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

T-2のスポイラーは操舵時に薄翼の一部が上方に回転して翼下面から上面に気流が吹き抜けるタイプなので、たとえ迎え角がゼロでもマイナスでも通常のロール操縦が可能です。
記事全般は非常に興味深く読ませて頂きました。(2018/05/21 20:05)

>(2018/05/15 12:31)様
(2018/05/14 14:14)です。

>迎え角をゼロ乃至マイナスに取って、翼の揚力と(負の)機首軸線方向が釣り合うために結果として垂直降下できている

機体によって違うので厳密には言えませんが、主翼の揚力がほぼゼロである時、本来主翼よりかなり小さい胴体揚力も、垂直降下時は普通エンジン絞りますから推力の分力としての機体鉛直成分も無視出来ます。
「(負の)機首軸線方向」というのが何をイメージされているのか解りませんが、垂直降下中であれば機体軸線≒地平に対し垂直、これに対し垂直降下中の揚力は地平に対し水平方向に作用します。この揚力=地平に対する水平成分が、迎え角(進行方向に対する主翼の取り付け角度)をゼロあるいはマイナスによってほぼゼロになる、と言う事です。

以前、坂井三郎氏の著書「大空のサムライ」で、「急降下で逃げる敵機に対し、零戦は何故か浮くようで機銃が当たらない」と書かれていたのが思い出されます。これは、ネガティブGつまり揚力ゼロで自由落下に近い状態で降下する敵機に対し、これを照準器に捕らえようとすると機体特性の違いから零戦は主翼に迎え角が残ってどうしても軌跡が機体上方に逸れる(零戦でネガティブG降下するなら、もう少し機首を突っ込まないとイケない)ので撃っても当たらない(弾が敵の上を通る)、進行方向を合わせると今度は機首がやや下を向く=射軸がズレてやはり当たらない(弾が敵の下を通る)、と言う事だったのだと理解出来ます。

あと、オスプレイが美しくないとおっしゃる方が複数いらっしゃいます、美意識は個人差がありますから否定も意見もしませんが、私は同様にA-10やスーパーグッピーにもつきつめた機能美を感じます。(2018/05/16 15:39)

>垂直降下時には、揚力が発生してしまうと機体は地面に垂直な線≒想定する飛行経路に対し、機体の上方向つまり想定経路に対して>>鉛直方向に移動してしまいます。なので、本当に垂直降下したければ、主翼が揚力を発生しないように迎え角をゼロかマイナスにしないとダメです。

主翼は揚力を発生させているため、迎え角をゼロ乃至マイナスに取って、翼の揚力と(負の)機首軸線方向が釣り合うために結果として垂直降下できているということですよね。
つまり、その状態でも翼面に揚力は発生しているはず。であれば、スポイレロンの操作で片翼の揚力が変化すれば、垂直降下中でもロール軸方向に姿勢が変化するのでは? と思うのですが。(2018/05/15 12:31)

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