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イノベーションに不可欠な「意図的な偶然」

遷ろう「謎かけ」(2)

2017年4月25日(火)

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 この連載は、村上春樹さんの『騎士団長殺し』に刺激を受けた筆者が、まじめにイノベーションについて語ろうという企画である。村上春樹さんの意図はともかくとして、この小説には創造的な経営やイノベーションにとって大切なことがたくさん書かれている。『騎士団長殺し』に出てくるキーワードや暗示が、筆者がつい最近出版した『模倣の経営学 実践プログラム版』と似ているのである。今回は連載4回目の最終回。

(連載 第1回 第2回 第3回 から読む)

村上春樹さんの小説『騎士団長殺し』には創造的な経営やイノベーションにとって大切なことがたくさん書かれていて、筆者がほぼ同時期に出版した『模倣の経営学 実践プログラム版』と内容で共通する部分がある。

 前回は、『騎士団長殺し』の第2部「遷ろうメタファー編」に対応して「創造のための隠喩」や「なぞかけ」について考えてみた。メタファーをイノベーションにつなげるには、「意図的な偶然」があることを述べた。

 意図的な偶然というのは、いかにも矛盾した表現に思われるかもしれない。それでも、このようにしか言い表せない。成り立たないようで成り立つという意味では、これは矛盾ではなく逆説、すなわちパラドクスなのだろう。「意図した偶然のパラドクス」とでも呼んでおこう。

セレンディピティ

 それでは具体的にどうすればよいのか。ヒントは『騎士団長殺し』の主人公の姿勢にある。異次元の世界で主人公は困難に直面しながらも、感覚を研ぎ澄まして立ち向かう。

 「ここは事象と表現の関連性によって成り立っている土地なのだ。私はそこで示されるあらゆる仄めかしを、あらゆるたまたまを正面から真剣に扱わなくてはならないはずだ」(第2部、350ページ)

 たまたまの偶然をバカにしてはいけない。「たまたま」を前向きに捉え、それをきっかけに次々と成功を収めるということがある。学術的にはこれを「セレンディピティ」(偶有性)という。幸運をつかみ取れる人というのは、いつでもその準備ができている人で、幸運の女神の後ろ髪を決して離さない人のことである。だから、真剣に扱わなければ想定外の創造性はもたらされない。

コメント1件コメント/レビュー

幸運の女神に後ろ髪は無いのでは?(2017/04/25 14:02)

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「イノベーションに不可欠な「意図的な偶然」」の著者

井上 達彦

井上 達彦(いのうえ・たつひこ)

早稲田大学商学学術院教授

広島大学社会人大学院マネジメント専攻助教授、早稲田大学商学部助教授などを経て、2008年から早稲田大学商学学術院教授。2012年4月から2014年3月まで米ペンシルベニア大学ウォートン経営大学院のシニアフェローを兼務する。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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幸運の女神に後ろ髪は無いのでは?(2017/04/25 14:02)

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