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外国の人にも伝えたい「おもてなし」の心

2017年1月10日(火)

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(写真:AP/アフロ)

 2020年のオリンピック開催地の誘致活動の際、滝川クリステルさんが日本には「お・も・て・な・し」の精神があることをアピールし、それが東京決定の一因となったと言われている。日本流の「おもてなし」が、どのような様式によるべきか、日本人の中でもそれぞれ意見は異なるだろう。ましてや外国人がそれを理解するのは難しい。かなりの日本通の人でも、「おもてなし」と聞けば、日本旅館や高級懐石料理店などの至れり尽くせりのサービスを思い浮かべることが多いだろう。

 郷里の仙台藩主 伊達政宗公は「馳走とは、旬の品をさりげなく出し、主人自ら調理してもてなす事である」と述べたという。自ら調理するかどうかはともかくとして、ここでは旬のものを「さりげなく」お出しすることがポイントである。素材とか、調理法とか、料理人が誰だとか本来は口に出すことではない、この奥ゆかしさが肝要なのだと言いたかったのであろう。

 この伝統にのっとってか、私の田舎では、ごちそうと言えば、華美とはほど遠い餅料理であった。もちろん餅料理と言っても一種類ではなく、懐石膳というと大げさだが、主食としてのあんこ餅、副食としての季節の餅、椀物としての雑煮、そして消化を助ける大根おろしに香の物という取り合わせである。季節の餅は、春なら草餅、夏ならずんだ餅、秋ならくるみ餅という具合である。

 お客様の食事時間に合わせて、餅米をせいろで蒸す。臼でつくのは男手の仕事だが、他は全部女手の仕事である。迎える側の家族にとっては手間ひまのかかる大仕事だったのである。そのためか田舎では、餅のことを「手間ごちそう」と呼んでいた。おいしさもさることながら、その料理にかけた手間や準備が大切なのだ、それがお客様を迎える精神であるという考え方がうかがえる。

 茶人千利休にまつわる面白いエピソードをテレビで語っている人がいた。利休が大阪から京に向かっていた時、途中で知り合いの家に立ち寄ることになった。利休に心酔していた家の主人は、利休の訪問に舞い上がってしまう。先ずは庭のゆずをもいできて、ゆず味噌にして供した。利休はことのほか喜んで食した。その後、主人がいかにも大阪から取り寄せたと思われるお酒を出し、高価な肉料理を振る舞ったところ、利休は途端に不機嫌になり、早々に帰ってしまったというのである。利休の好みと、先の政宗公の描いた馳走には相通じるものがある。

 日本流の「おもてなし」ではお客様のことを十分に考え、好みを「おもんぱかり」、あらかじめ主人が用意するのが普通である。通常、会社の会議でははじめにお茶が運ばれてきて、途中でコーヒーなど別の飲み物が運ばれる。全員に対して同じものが用意されるので、好みでない人は口をつけずに残さざるを得ない。いかにお客様の好みを「おもんぱかる」かは日本流おもてなしの根幹なので、客人の方も、たまたま嫌いなものがあったとしても不快感を示さず、そのまま残しても失礼には当たらない。

コメント6件コメント/レビュー

 中鉢先生の投稿をいつも心待ちにしております。そして、いつもそうであるように、今回も膝を打ちつつ「そうだよ、そうなんだよ!」と言いながら読ませていただきました。
 「おもてなし」と「押し付け」とを勘違いしている人がどれほど多いことか。そもそも「おもてなし」に「(外形的に)こうすればいい」というマニュアルはないはずです。対面する人との間の静かなしっとりしたコミュニケーションの結果としての「心地よい空気感」こそがおもてなしの真髄だと考えます。マニュアルになった途端に「押し付け」ですね。
 本題と同じような議論ができるのが、「プレゼン」の巧拙です。中身がてんこ盛りで迫力のあるのがよいプレゼンだと勘違いしている若者が多い。プレゼンの目的は説明者の達成感ではなく、聞き手がその気になって動いてもらうことです。簡単なことなのですが、このことが分かるまでに私自身も20年以上の歳月を費やしました。(2017/01/10 16:50)

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「外国の人にも伝えたい「おもてなし」の心」の著者

中鉢 良治

中鉢 良治(ちゅうばち・りょうじ)

産業技術総合研究所理事長

1977年、東北大学大学院工学研究科博士課程修了。同年、ソニー入社。2005年、同社取締役代表執行役社長に就任。2013年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

 中鉢先生の投稿をいつも心待ちにしております。そして、いつもそうであるように、今回も膝を打ちつつ「そうだよ、そうなんだよ!」と言いながら読ませていただきました。
 「おもてなし」と「押し付け」とを勘違いしている人がどれほど多いことか。そもそも「おもてなし」に「(外形的に)こうすればいい」というマニュアルはないはずです。対面する人との間の静かなしっとりしたコミュニケーションの結果としての「心地よい空気感」こそがおもてなしの真髄だと考えます。マニュアルになった途端に「押し付け」ですね。
 本題と同じような議論ができるのが、「プレゼン」の巧拙です。中身がてんこ盛りで迫力のあるのがよいプレゼンだと勘違いしている若者が多い。プレゼンの目的は説明者の達成感ではなく、聞き手がその気になって動いてもらうことです。簡単なことなのですが、このことが分かるまでに私自身も20年以上の歳月を費やしました。(2017/01/10 16:50)

受動喫煙の被害に遭わないことも「おもてなし」の一つです。居酒屋を含めてすべての飲食店が禁煙になるよう、罰則付きの法律が制定されることを望みます。

ところで、最後の写真ですが、旅館のような部屋の机の上に灰皿らしきものが置いてあるのが気になりました。宿泊施設も全部屋禁煙になってほしいです。(2017/01/10 14:40)

日本も世界標準の金銭対価に応じたサービスへ変更していくべきである。
少子化も進む中、ブラック企業、過剰サービスを減らしていかなければ、皆が共倒れしてしまう。
個人的には深夜営業での割増料金の義務化、大店法対象の施設は必ず週休もしくは隔週連休を義務付ける、などの施策でサービス業で働く人材の疲弊を減らしていくべきだろう。
これは絶対に政治決断で行わないと、日本では変わらないと思うので、関係各位には頑張って頂きたい。(2017/01/10 12:26)

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貧乏な家に育ったから、とにかくお金に飢えていた。

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