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私の見たアメリカとこれからの日米関係

2016年11月29日(火)

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 前にも触れたが、1987年春、私はあるコンサルタント会社が主催する3カ月にわたるグローバル人材育成の研修を受けた。当時は日本経済が長期にわたって好調を維持し、「日本的経営」が世界的にも注目されている時代だった。エズラ・ボーゲルの「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が出版されて後、日本でベストセラーになったのもこの頃のことだ。「英語力は他の国の人たちより明らかに劣っている」が、「それが問題にならぬ」ほど、日本の企業も経済にも勢いがあった。

 日本で1カ月間の座学中心の研修を終え、いよいよアメリカとヨーロッパでそれぞれ1カ月間の現地研修を行うことになり、まずアメリカに渡った。

 最初の研修はロサンゼルスで1週間行われ、週末はお隣のサンディエゴで過ごすことになった。英語漬けで疲れた頭を癒すべく、サンディエゴでは思い思いの休日計画を練った。そんな中、夕食は何人かで日本レストランに行くことになった。ロサンゼルスでは一度も日本食を口にしていないから、久々の日本食である。グローバル人材たるもの1週間そこそこで日本食を恋しがるようでは甚だ心もとないとも思ったのだが、誰かが「今晩は日本食にしよう!」と提案したところ、万場一致の同意となった。私はそれまで度々海外出張することはあったが、あまり日本レストランに入ることはなかった。

 アメリカ西海岸は東京24区と言われるほど、日本人には馴染みのある地域である。本場の(?)日本レストランに行くとなって、夕方出発の時間になるとやせ我慢も限界となり、高揚する心を抑えきれなかった。

 店に入ると、そこはかなり広いレストランで、日本人客もいるにはいたがアメリカ人客が圧倒的に多かった。それまでストイックに日本食を避けてきたので、メニューを見ると皆禁断の実をかじるかのように、予算も胃袋のサイズも忘れ一気に盛り上がってしまった。一通り食事を済ませると、店の人から、奥にカラオケルームがあるのでそちらもどうぞとお勧めがあり、案内されるままに移動した。そこには、既に7~8人の先客がいた。その日はサンディエゴ近辺に住む日本人の奥様方のゴルフコンペがあり皆で食事をしに来たというのである。

 彼女たちは海軍兵士であったアメリカ人と結婚し、30年以上もサンディエゴに住んでいた。東京から来たばかりの新鮮な日本人(?)に会話が弾んだ。当然と言えば当然なのだが、彼女たちの英語は日本人の英語とは思えぬほどにネイティブっぽいものだった。チケットはチケ、マシーンはミシン、マクドナルドはマクダナ、ウォルマートはウォルマーに聞こえた。一方、日本語の方は、時々英語が混じるのが気になったが、とても丁寧で美しい、今の日本人が忘れかけていたような日本語であった。私たちの乱暴な現代日本語(?)が少し恥ずかしかった。

 この日彼女たちと同席した私たちは、いずれも好調な日本経済を支えてきた代表的日本企業の社員ばかりだった。彼女たちは、そのような私たちと話すことだけでも誇らしく思われたのか、とても楽しそうだった。日本人は、本当はすごいんだ、皆さんはもっともっと頑張って、日本人が世界で胸を張って歩けるような国にしてほしい、そんな思いを持っておられるのだと感じた。

コメント2件コメント/レビュー

アメリカ社会では日本のバブルの頃よりずっと前から少なくとも建前上は積極的に多様性を受け入れてきたのと同時に、現実には価値観や出自を同じくする暗黙の ”ゲーテッドソサエティ” が形成され強化されてきました。
そして、その本音の発露が今回のトランプ当選に繋がったと見るアメリカ人の友人が何人かいました。

筆者と同じく私も日本企業の現地駐在員でしたが、外国人はもちろんのこと同じアメリカ人でもその存在に気づにくい強固な絆で結ばれた彼らソサエティのメンバーに建前でいくら多様性を説いても、表面上は同意しながら本音の部分では拒絶するだけです。
そしてそれは翻ってみれば日本に住む日本人にも全く同じことが言えます。本音では同質性の方が多様性より良いのです。

そういう現実を互いに認められれば、今後トランプのアメリカに対して多様性を維持するよう期待する愚とは無縁に独立国家同士の健全な関係になれるでしょうし、逆に言えばこれまでは健全な関係ではなかった、ということです。(2016/11/29 13:24)

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「私の見たアメリカとこれからの日米関係」の著者

中鉢 良治

中鉢 良治(ちゅうばち・りょうじ)

産業技術総合研究所理事長

1977年、東北大学大学院工学研究科博士課程修了。同年、ソニー入社。2005年、同社取締役代表執行役社長に就任。2013年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

アメリカ社会では日本のバブルの頃よりずっと前から少なくとも建前上は積極的に多様性を受け入れてきたのと同時に、現実には価値観や出自を同じくする暗黙の ”ゲーテッドソサエティ” が形成され強化されてきました。
そして、その本音の発露が今回のトランプ当選に繋がったと見るアメリカ人の友人が何人かいました。

筆者と同じく私も日本企業の現地駐在員でしたが、外国人はもちろんのこと同じアメリカ人でもその存在に気づにくい強固な絆で結ばれた彼らソサエティのメンバーに建前でいくら多様性を説いても、表面上は同意しながら本音の部分では拒絶するだけです。
そしてそれは翻ってみれば日本に住む日本人にも全く同じことが言えます。本音では同質性の方が多様性より良いのです。

そういう現実を互いに認められれば、今後トランプのアメリカに対して多様性を維持するよう期待する愚とは無縁に独立国家同士の健全な関係になれるでしょうし、逆に言えばこれまでは健全な関係ではなかった、ということです。(2016/11/29 13:24)

アメリカのパートナーは結構ですが、今必要なのはそういったふわふわとした綺麗事ではなく
トランプとディールするための具体的な方策なのでは?
今回、アメリカの労働者階級の怒りと、中産階級の転落への不安が投票結果に表れたわけですが、
日本として、彼らにどういったメッセージを届けるかが重要なのではないですか?
寂れてしまった炭鉱から石炭を買ってあげるのでも、高効率・低汚染の石炭発電技術を供与するのでも良いですが、
途上国援助の場面では頻繁に草の根の民衆に届く援助をという話が出るのに、
アメリカ相手だと、途端に抽象的な話に終始してしまっているのが気になります。(2016/11/29 12:36)

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