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年齢とともに変わる時間の価値

2016年12月27日(火)

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「ニュートンのリンゴ」の苗木を譲り受けた産総研のリンゴの木

 日本は世界一時間に正確な国だと言われている。飛行機や新幹線の出発が少しでも遅れようものなら、客室乗務員が丁寧にお詫びのアナウンスをする。日本人は時間が好きな国民なのかも知れないが、西洋にも「Time is money.(時は金なり)」ということわざがある。時間は二度と取り戻すことのできない貴重なものであるという認識は洋の東西を問わず共通である。ヨーロッパ赴任の長かった上司の口ぐせが「タイム・イズ・もうねェ」だったことを思い出す。

 日常当たり前のように使っている「時間」だが、その概念は人により、また使われ方により様々である。物理的な時間を考えると、日時計や水時計、砂時計の時代から、振子時計となった近代まで、時は一定の間隔で刻まれているものと考えられてきた。人類が秒のレベルで時間を意識した当時、その基準は地球の自転、すなわち「1日=8万6400秒」を基にしていた。地球を、その一回転が決して狂うことの無いコマに見立てたのである。ところがこのコマ、案外気まぐれで季節変動があることが分かり、1956年には地球の公転に基づく定義に変更されている(1年=31556925.9747秒)。その後さらに高い精度を出せる原子時計の研究が進み、1967年にはセシウム原子の固有振動の周期に基づく秒の定義になって今日に到っている。

 つまり時間の決定は、望遠鏡を覗く天文学者から、原子の振動という振り子を得た物理学者の手に委ねられたという訳である。同時に我々は自然の揺らぎに身を任せるので無く、機械が刻む時刻で身を律することを選んだということになる。ニュートンは何にも影響されない天体運動の調和から時間を読み解いたのだが、その一方で物理学者は出来る限り精密に「等間隔」な時間を計測しようと努力を重ねており、その努力は今日も続いている。セシウム原子時計の精度は発明当時(1955年)100年に対して1秒相当だったが、今日では数千万年に対して1秒というレベルにまで至っている。それでも時間に関わる物理学者たちは歩みを止めることはない。

 世界の物理学者がしのぎを削る舞台で今、300億年に対して最大でも1秒しか狂わないという究極の原子時計が日本から生まれようとしている。これは香取秀俊教授(東京大学)の提唱する光格子時計というもので、いわば原子を光で作ったゆりかご(格子)で支えることで、振り子としての原子のゆらぎを劇的に少なくする、という技術である。その実現には多くの日本の研究所が関わっている。産業技術総合研究所もその一つである。宇宙の創成から現在まで138億年と言われているので、この間連続して時計を動かしたとしても1秒も狂わないというものである。

 少し堅い話が続いて恐縮だが、これほどの精度になると、アインシュタインの相対性理論が唱える時空のゆがみの影響を、日常世界で観測できるようになる。一般相対性理論によれば、重力が強いほど時間はゆっくりと進むと言われている。地上の重力の大きさは、標高や周囲の地形、地下の構造などの影響を受ける。超精密時計があれば、地上で僅か1センチメートルの高さに相当する重力ポテンシャルの変化でも、時間の差として測れることになる。例えば建物の1階(重力が強く時間がゆっくりと進む)と2階(重力が弱く時間が速く進む)では、時計の進み方が違うことを、比較的容易に観測できてしまうというのである。

コメント3件コメント/レビュー

私は時間の流れをどのように感じるかは、ニューロンの活動に依存しているのではないかと考えています。子供の頃は毎日が学習でニューロンの回路をつくる動きが激しい。一方大人になるとルーティンが増えて回路補強は行われても、新回路作成は減る。新しい回路をつくる時間を脳は一定と感じるとすれば、子供時代の方が圧倒的に新回路を多くつくるので、したがって時間も長く感じると。
楽譜を見てそれを指の運動に変換するのは回路作成に良いと聞き、ピアノを習い始めましたが、面白いのは、遅々として上達しない。ええ、時間のたつのが、恐ろしくここだけ遅い。きっと回路作成が3歩進んで2歩さがる状態にある。 仕事では5年前と3年前のことが数ヶ月でおこったように感じているのに。(2016/12/27 23:44)

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「年齢とともに変わる時間の価値」の著者

中鉢 良治

中鉢 良治(ちゅうばち・りょうじ)

産業技術総合研究所理事長

1977年、東北大学大学院工学研究科博士課程修了。同年、ソニー入社。2005年、同社取締役代表執行役社長に就任。2013年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

私は時間の流れをどのように感じるかは、ニューロンの活動に依存しているのではないかと考えています。子供の頃は毎日が学習でニューロンの回路をつくる動きが激しい。一方大人になるとルーティンが増えて回路補強は行われても、新回路作成は減る。新しい回路をつくる時間を脳は一定と感じるとすれば、子供時代の方が圧倒的に新回路を多くつくるので、したがって時間も長く感じると。
楽譜を見てそれを指の運動に変換するのは回路作成に良いと聞き、ピアノを習い始めましたが、面白いのは、遅々として上達しない。ええ、時間のたつのが、恐ろしくここだけ遅い。きっと回路作成が3歩進んで2歩さがる状態にある。 仕事では5年前と3年前のことが数ヶ月でおこったように感じているのに。(2016/12/27 23:44)

 年齢とともに変わるのは年間の日数と、一日の時間数とでは逆相関になっているような気がします。一年の経過を見ると子供の頃の方がじっくり時間が過ぎるというのは中鉢先生のご指摘の通りだと思いますが、一日の時間経過を思い出すと、子供の頃は一日があっという間に過ぎるのですが、長じて仕事に向かっていると一日が長い。ところが、夜寝る前になって思い返してみると、今日一日何をして過ごしてきたのか思い出せない、というのは不思議な逆説です。
 学習効果、周期の理解というのが明日を迎えるドキドキ感や、一日を終えた後の感激をなくしてしまうのかもしれません。
 いつもながら、立ち止まって考える材料をいただくエッセイ、感謝いたします。(2016/12/27 16:26)

11段説は感覚的には人間にあっているような気がする。
「タイムイズもうねェ」は結構昔からあるのだなぁと。
しかし白い手帳を今でも送ってくれるとはなんと余裕の会社だろう。
ただ、現実には社員には希望者しか配られない。私もここ数年はもらっていない。
部署によっては庶務が一括手配するところもあるようだが。(2016/12/27 08:54)

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