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「ソフトウェア後進国」日本が採るべき3つの策

テクノロジーの地政学:シリコンバレーvs中国・総括

2018年11月14日(水)

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 「Software is Eating the World」。

 この言葉が示すように、近年はソフトウェアの進化が製造業や金融業などさまざまな産業に影響を及ぼしています。そこで、具体的に既存産業をどのように侵食しつつあるのか、最新トレンドとその背景を専門外の方々にも分かりやすく解説する目的で始めたのが、オンライン講座「テクノロジーの地政学」です。

 講座を運営するのは、米シリコンバレーで約20年間働いている起業家で、現在はコンサルティングや投資業を行っている吉川欣也と、Webコンテンツプラットフォームnoteの連載「決算が読めるようになるノート」で日米のテクノロジー企業の最新ビジネスモデルを解説しているシバタナオキです。我々2名が、特定の技術分野に精通する有識者をゲストとしてお招きし、シリコンバレーと中国の最新事情を交互に伺っていく形式で講座を行ってきました。

 今回ご紹介するのは、全12回で行ってきた講座の総括です。これまで、「人工知能」「次世代モビリティ」「ロボット産業」「FinTech・仮想通貨」「Agri・Food Tech」「小売」とさまざまな産業がソフトウェアに侵食される(既存産業のルールが破壊される)様子を紹介してきました。そこで、最後は吉川とシバタが講座運営を通じて学んだことを基に、日本企業の置かれた現状と取るべき変化の道筋をまとめたいと思います。

※「テクノロジーの地政学」過去の連載一覧はこちら

シリコンバレーと中国が世界経済を牛耳る時代に

 なぜ、我々2人がオンライン講座「テクノロジーの地政学」を始めることにしたのか? 最後の総括でこれを記すのは順不同ではありますが、本連載のベースとなったオンライン講座を始めた理由を明かしていなかったので、今回は改めてこの点から説明したいと思います。

 「10年前の中国と今の中国は別物。今の中国をしっかりと見ておかないと、変化のうねりに乗り遅れる」

 「テクノロジーの地政学」は、吉川さんのこんな言葉をきっかけに始まりました。もともと吉川さんは2000年の初めごろからシリコンバレーと中国を往復するようになり、PC・通信機器メーカーのファーウェイ(Huawei)やレノボ(Lenovo)、ZTEなどに営業をしていました。2010年代に入ると、今度はモノづくりのために深セン市や東莞(とうかん)市にある工場を毎月のように訪問。そして近年は、ご自身が立ち上げた4社目の会社ゴールデン・ホエールズ社(Golden Whales)や、投資ファンドのGWベンチャーズを通じて、中国の有望スタートアップに出資をするようになっていたそうです。

 そのための視察を兼ねて、中国の主要都市に何度も出張に行く中で、吉川さんは中国のテクノロジー産業がみるみる成長していく過程を目の当たりにします。その勢いは「四半期ごとに目に見えて進化している」ほどで、シリコンバレーでインターネット産業が勃興した1990年代のドットコム・バブルの時以上だと言います。

 しかし、中国のテクノロジー動向はまだまだ公開情報が少なく、「何がどれくらいすごいのか?」を詳しく把握するのが難しい。そこで、私シバタも中国の最新動向を学びたい、吉川さんに教えてほしいと考え、2018年6月~9月の期間限定で共同のオンライン講座サロン「テクノロジーの地政学」を始めることにしたのです。

 講座を産業ごとに「シリコンバレー編」と「中国編」に分けて行ったのも、この中国の勢いをシリコンバレーと比較しながら説明するためでした。

 前提として、少し前まで「IT産業の先駆者」として語られていたシリコンバレーは、すでにあらゆる産業に影響を及ぼすようになっています。例えば米グーグルが2018年10月に発売したスマートフォン「Pixel3」シリーズは、人工知能の搭載で各種機能が格段に進化しています。中でもカメラ機能の一つである「トップショット」は、シャッターを押す前後の画像も自動で撮影・解析することで、後から目つぶり写真などを回避できるようになっている。

スマートフォン「Pixel3」シリーズでは、人工知能が自動で「目つぶり写真」を避けてくれる

 これはソフトウェアがカメラを進化させた好例で、もうカメラメーカーのデジタルカメラを上回っているとさえ言えます。

 他にも、自動車の性能をソフトウェア・アップデートで向上させる仕組みを取り入れたEVメーカーの米テスラは、今では歴史ある自動車メーカーから真似される立場となっています。グーグルとテスラの事例は、シリコンバレーの企業群がIT以外の産業でも競争原理を変え始めている確かな証拠です。

 対する中国のテクノロジー産業は、中国政府やIT御三家のBAT(検索大手のバイドゥ、EC大手のアリババ、SNS大手のテンセント)による多額の出資を受けながら、シリコンバレーを凌駕する勢いで急成長しています。本連載でも、すでに人工知能開発の資金調達額やEVの販売台数、モバイル決済の取引総額などで世界一の地位を確保していると説明してきました。

EC事業から始まった中国のアリババは、今では人工知能開発やFinTech、ロボット産業などにも影響を及ぼすようになった(写真はアリババ創業者のジャック・マー氏)

 読者の中には、まだ「中国は安かろう・悪かろうな製品ばかりだ」と思っている方がいらっしゃるかもしれません。しかし、もうそれは過去の話。例えば皆さんも使っているiPhoneは、部品の多くを中国で製造しています。この事実だけでも、中国のテクノロジーが世界基準になっていることがお分かりになるでしょう。

 世界の産業地図は、シリコンバレーと中国が作り出す「ソフトウェア経済圏」によって大きく書き換えられようとしているのです。それゆえ、自動車産業や製造業、金融業、小売業などの大企業で働く人たちは、シリコンバレーだけではなく中国のテクノロジー動向も意識しておく必要があります。

 シリコンバレーの進化はとどまるどころか加速していますし、中国が欧米や日本の後追いをしていた時代はとうの昔に終わっている――。我々2人も、今回の講座に協力してくれたゲスト解説の方々に話を伺いながら、この事実を痛感させられました。そして多くの面で、日本企業はこの「ソフトウェア経済圏」に乗り遅れているとも感じています。

 では、日本企業がここから巻き返すには、何をすればいいのでしょうか?

コメント3件コメント/レビュー

若い人たちに対して「かつての日本が世界に誇れる技術立国になれたのは、」あーだこーだと言っていますが、今の人たちが享受できるその恩恵はどこにあるんでしょうか?技術立国にした人たちは自らが十二分にその恩恵を享受したはずです。ですが経済や社会を好き勝手に変質させておいて、成長停滞後に生じた問題の後始末は後の世代に、という態度では困るわけです。

あと、戦後の破壊された経済から立ち直った時期の人々を評価しすぎるのも違和感があります。確かに非常に高いレベルまで伸びましたが、巨大な市場においてゼロからスタートすれば誰だって高成長を達成できます。ビジョンなき成長の結果が今の日本社会でしょう。もちろん、最近社会人になった人やこれから社会人になる人は売り手市場ですので、停滞していても恩恵を受けられるとは思いますが。

逆に言うと、過去の成長をGDPの観点だけから評価せず、「技術立国にした人たち」にも足りない部分が大いにあった、そのような部分をかつての自分たちよりも優秀な今の若い人たちには取り組んでもらいたい、という謙虚な態度を示すことは考えられなかったのでしょうか?今の若者を作ったのは「技術立国にした人たち」であることを忘れるべきではないと思います。(2018/11/14 17:43)

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「「ソフトウェア後進国」日本が採るべき3つの策」の著者

吉川 欣也

吉川 欣也(よしかわ・よしなり)

Golden Whales Inc. 創業者兼CEO

現在、Miselu社とGolden Whales社(米サンマテオ)の創業者兼CEO、GW Venturesのマネージングディレクターを務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

シバタ ナオキ

シバタ ナオキ(シバタ・ナオキ)

AppGrooves / SearchMan共同創業者

自らシリコンバレーにてスタートアップを経営する傍ら、「決算が読めるようになるノート」も執筆中。経営者だけではなく、ビジネスパーソン(特に技術者)にも最新の決算が読めるノウハウを伝授。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

若い人たちに対して「かつての日本が世界に誇れる技術立国になれたのは、」あーだこーだと言っていますが、今の人たちが享受できるその恩恵はどこにあるんでしょうか?技術立国にした人たちは自らが十二分にその恩恵を享受したはずです。ですが経済や社会を好き勝手に変質させておいて、成長停滞後に生じた問題の後始末は後の世代に、という態度では困るわけです。

あと、戦後の破壊された経済から立ち直った時期の人々を評価しすぎるのも違和感があります。確かに非常に高いレベルまで伸びましたが、巨大な市場においてゼロからスタートすれば誰だって高成長を達成できます。ビジョンなき成長の結果が今の日本社会でしょう。もちろん、最近社会人になった人やこれから社会人になる人は売り手市場ですので、停滞していても恩恵を受けられるとは思いますが。

逆に言うと、過去の成長をGDPの観点だけから評価せず、「技術立国にした人たち」にも足りない部分が大いにあった、そのような部分をかつての自分たちよりも優秀な今の若い人たちには取り組んでもらいたい、という謙虚な態度を示すことは考えられなかったのでしょうか?今の若者を作ったのは「技術立国にした人たち」であることを忘れるべきではないと思います。(2018/11/14 17:43)

28年前,広州から香港に向かう列車で見た,夜の深釧はこうこうと明かりがともるだけの無人の町の様でした。今は全く違う町になっているのでしょう。当時は広州の町から一歩出れば観光地でもトイレに扉が無い「未開」とさえいえる「ド田舎」でした。街中の喧騒はものすごく,あの活気からも想像はされるのですが,中国の発展の速度は驚異的です。おそらく想像を絶するところにあるでしょう。だから,実際に肌感覚に基づいて書かれているこうした記事は重要であり,示唆に富んでいると思います。若い方へのアドバイスも納得できます。優秀な若者が,積極的に外得出ていくべきだと思います。地政学で言えば,日本を「海洋国」とみるか,「大陸周辺(リムランド)国」とみるかで見方が変わるかもしれません。ソフトウェアの流通では海底ケーブルが大きな役割を晴らしており,このネットワークがどのように構成されているか,プロトコルや規約の統治がまだまだアメリカに中心がある現状を考えたうえで中国の力を正当に重視し評価する必要が有るでしょう。そのためにも「人脈」の確保は最重要課題の一つであり,現地の人材と対話できる多様なスキル,職責の人材が必要なことは間違いないでしょう。それでも軸足はアメリカ側においてよいと思うのですが甘いのでしょうか。(2018/11/14 13:02)

日本企業が変化に対応できていない点には同意しますが3つの提言は実現すれば未来を変えうると思うものの、実現には否定的です。大企業は現在の自分の姿(20世紀の成功モデル)をどう修正すべきかと言う視点で検討しており、その考え自体が変化の妨げになっていることを自覚してはいません。もっとも誰も自身の立ち位置を踏まえず何もないところから話をスタートすることは出来ないので避けられない事ですから、踏み出すべき出発点をすでに見誤っているというジレンマから抜け出せない(自覚もない)のは無理からぬことです。僅かに、企業本体から断ち切った別組織で新たなスタートを模索させる試みも始まっているようですが、そうした新たな芽が育ってきたときに、既存企業がそれをどう扱うか(吸収しようとして潰すのか、自身をそこに同化できるのか)は未知数ですし、その行く末を見定めているゆとりは無いはずです。新興勢力が既存企業と置き換わる新陳代謝でしか、日本の産業界の刷新は実現しないと感じます。(2018/11/14 11:55)

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保岡 興治 元法相、自民党憲法改正推進本部特別顧問