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新卒社員に「頑張らない」のすすめ

部下の心を折る管理職は、だめな管理職です

2018年5月9日(水)

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仕事ができると「思う」ことと、実際に仕事が「できる」こととは違う

 武蔵野は社員の心理状態を把握することにとても熱心な会社です。だから各種アンケートは頻繁に取るし、いわゆる分析ツールの類もしばしば実施しています。こうした調査の結果から「これこれの施策は社員の評判は悪いようだ」と思えば即座に改善しますし、「どうもAさんとBさんとは相性がよくないようだ」と判断すればどちらかを配置替えにしたりもする。

 そうする理由は簡単です。社員が現状に満足していなければ、お客様満足のための努力もできるはずがないからです。お客様満足のための努力ができなければ会社は傾いていくしかない。すなわち従業員満足はお客様満足に直結します。これは意外に見過ごされがちな点だと思うのではっきりと書いておきます。経営者や管理職は、部下がどういう気持ちで働いているかを常に気にかけておくべきです。

 さて、ここからが本題。新卒社員にも当然、アンケートの類はしています。内定期間中に「あなたは仕事ができるほうだと思いますか?」と質問すると、まず90パーセントくらいが「できる」「できると思う」「できるように努力したい」と、前向きな答えを返してくる。ところが入社一カ月もして(つまりまさにいま現在、というわけですが)同じことを質問すると、もう全員が「自分がこんなに仕事ができない人間だとは思わなかった」と、ネガティブな回答になる。これは毎年そうです。

 入社前、頭で漠とイメージしていた「仕事」と現実のそれとが違うのは当然のことですから、いざ社会人となって自信を喪失するのもまた当然です。もとよりわが社は新人に対しては、(新人ですから当然なのですが)そんなに難しい仕事をさせているわけではありません。それでも仕事ができると「思う」ことと、実際に仕事が「できる」こととは、天と地ほどの違いがあるのです。

 「(わが社の新人には)そんなに難しい仕事をさせているわけではありません」についてもう少し詳しくお話をいたしますと、武蔵野では配属がどこになろうが最初は必ずダスキン事業を経験するルールになっています。このダスキン事業は、ご契約くださっているお客様のところへ定期的にお伺いしてモップなりマットなりを交換し、代金を頂戴してくるだけの、じっさい単純極まりないビジネスモデルです。

新人は、まるで仕事ができない人材だと心得よ

 にもかかわらず「こんなに仕事ができないとは思わなかった」と回答するようになるということは……、そうです。あなたの下についた新卒社員だったら、もっと強く同じことを思っているはずなのです。なんとなれば武蔵野は天下に隠れもなき名門落ちこぼれ企業、一方あなたは(あるいはあなたの会社は)、わが社よりもっと複雑で困難な仕事をしているに違いないのですから。

 あなたはこのことをよくよく理解し、彼ら新人が自信をなくさないよう常に心を砕いてやる必要があります。

 このあたりの機微がわからない管理職は、「どうしてこんなこともできないんだ」などと感情的な罵倒をしてしてしまう。すると昨今の「ストレス耐性」の少ない社会人一年生はどうなるか。まあ季節的なことでいえば五月病にもなるでしょうし、病をこじらせれば職場にいづらくなって辞めもするでしょう。あなたは「使えない厄介者がいなくなってせいせいした」と思うかもしれませんが、実はこれは大きな「痛手」です。というのは、これは過去の当連載でも書いたことですが、これからの管理職は「いかに部下の退職を少なくできるか」が腕の見せどころになるからです。

 単純に、考えてもごらんなさい。この空前の人材難の時代、会社は大変な手間とコストとを投じて新卒を採っているのですよ。あたら獲得した人材をむざむざと「折る」ような真似をする管理職が、経営幹部から評価されるはずがないではありませんか。つまり「どうしてこんなこともできないんだ」と考える管理職と、「(新人は)こんなこともできなくて当たり前だ」と考える管理職とでは、今後大きな差が開くということです。

コメント4件コメント/レビュー

ハツラツとした新人が毎年入社しますが、
成長を期待しすぎて詰め込み過ぎると、逆にめげてしまうように思います。
小山社長が言うくらいの接し方がちょうど良いのでしょう。大変参考になりました。(2018/05/16 10:01)

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「新卒社員に「頑張らない」のすすめ」の著者

小山 昇

小山 昇(こやま・のぼる)

株式会社武蔵野 社長

1948年山梨県生まれ。76年に武蔵野に入社し、89年から現職。赤字続きの同社で経営改革を断行。2000年、2010年に日本経営品質賞を受賞。ダスキンの加盟店業務の傍ら、550社以上に経営を指導。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ハツラツとした新人が毎年入社しますが、
成長を期待しすぎて詰め込み過ぎると、逆にめげてしまうように思います。
小山社長が言うくらいの接し方がちょうど良いのでしょう。大変参考になりました。(2018/05/16 10:01)

>あたら獲得した人材をむざむざと「折る」ような真似をする管理職が、
>経営幹部から評価されるはずがないではありませんか?
損得で邪魔になれば喜んでするのが日本です。

>新卒社員は、なにしろあなたの会社に入社しおおせたくらいですから、
>基本的な能力が劣っていることはまず考えられない
大企業なら謎のコネで入社してくる謎の高学歴を持つゴミの様な新入社員がたまに来るので、
能力も常識もない事はありますけどね。
※高卒の二十歳前の臨時社員がすぐに出来る程度が1年たっても出来ない程


>新卒社員のあなたへ――「理不尽や不条理とうまくつきあいなさい」
ここに書かれている程度は、高校卒業後のバイト期間中に教えて貰うまでもなくやっていましたね。
私の場合はメインが郵便局の配達でしたが、現金書留も販売もしてましたが、1回同伴しただけでクレームなく熟していましたね。

>社会や会社は、言ってみれば理不尽や不条理の集合体です
全く同意しますが、私が感じた事は社会とはなんとも無関心で自由なんだな
と言う事でしたね。
私にとっては学校生活も十分、理不尽で不条理でしたよ


語るべき規範が自社の成功体験からしかないのでしょうが、
底が浅すぎて、全く心に響きません。(2018/05/09 16:53)

「どうせあなたの職業人生はあと40年くらいはあるのですから、いまはむしろ「消耗しないこと」に気持ちを全振りするべきです。」なんと力強い言葉であろうか!(2018/05/09 14:19)

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