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油絵とは何か?~アートの本質を語る画家に会う

2017年1月28日(土)

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 油絵とは何か? 中堅美術家の仕事を顕彰する展覧会の会場で、技法の本質を問うこんな根源的なテーマについて語る画家に出会った。東京・新宿の東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の「クインテットIII」展に出品している堀由樹子さんだ。

 「油絵には、見たそのままの風景ではなく、見て触発されたものなどが入ってくるのです」

「クインテットIII」展会場で自作の解説をする堀由樹子さん

 堀さんが描いているのは、住んでいる場所の近くで見られる森の風景である。ピカソやミロといった個性的な美術作品に日頃から親しんでいる人の中には、堀さんが言ったことは当たり前じゃないかという人もいるかもしれない。

堀由樹子《森の午後》(2016年、4点組)展示風景

 では、堀さんの次の言葉を加えると、どうだろうか。

 「油絵の具は乾いては塗り、乾いては塗りの繰り返しです。(屋外の風景などは)描いているうちに、状況が変化するのです」

描く対象は常にうつろう

 何時間あるいは何日もかけて描いている間に、日の光の当たる方向や強さ、気温、湿度、鳥や虫の去来、風による木々の動きなどにおいて、現実の森にはさまざまな変化が起きる。つまり写真のように一瞬の姿を捉えるメディアと油絵は、本質が異なっているのである。そして時間をかけて描く間に、ごく自然に想像力や創造力が入り込んでくる。記憶の風化や美化、あるいはその逆の現象が起こることもあるだろう。それがこのメディア特有の魅力につながるわけだ。

 実は、堀さんは先ほどの言葉を、会場に並んだ自分の素描作品と油彩画を比較する中で話していた。素描作品はこの場合、画家が出かけた先で見た印象を紙に“記憶”させるためのスケッチを思い浮かべればいいだろう。急いで描いたがゆえに写実性に欠けたとしても、そこには見た風景を忘れないようにしたいという意識が働いている。対して、油絵を描く上では表現を広げる方向に意識が動くのだ。

堀由樹子さんの素描作品の展示風景

 出品作を見ると、樹木がぼわぼわと広がって山を覆う様子を表した描写が物語る通り、見た目に忠実に森を描いているわけではまったくない。むしろ、モチーフとしての木々は彼女が表現しようとしたものの影のようなものなのだろう。柔らかで温かみがあふれ出た色使いなどから、彼女がどんな気持ちで森と向き合っていたかが伝わってくる。堀さんの言葉と作品は、油絵の具象画の本質を分かりやすく教えてくれる。

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「油絵とは何か?~アートの本質を語る画家に会う」の著者

小川 敦生

小川 敦生(おがわ・あつお)

多摩美術大学美術学部芸術学科教授

日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社後、日経アート編集長や同社編集委員を経て、日本経済新聞社文化部へ。美術担当記者として多くの記事を執筆。2012年4月から現職。専門は美術ジャーナリズム論。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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