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戦争と暮しを雑誌で見せた花森安治

2017年4月1日(土)

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 雑誌『暮しの手帖』を戦後ほどなく創刊し、名物編集長として名を馳せた花森安治(1911~78年)は、文章の執筆から誌面デザインまで雑誌の制作を総合的に手がけたマルチプレイヤーだった。東京の世田谷美術館で開かれている「花森安治の仕事」展に出かけて、その仕事ぶりがよく分かった。

 中でも感心したのは、花森自身が毎号描いていたという『暮しの手帖』の表紙絵である。表紙をコレクションするために毎号雑誌を買う人がいたのではないかとさえ思わせる出来映えだ。

《(美しい)暮しの手帖》1世紀1号(創刊号)
( 発行:衣裳研究所、1948年9月20日刊、暮しの手帖社蔵)
『暮しの手帖』は100号ごとに「世紀」でくくっている。1~100号が「1世紀」、次の号は2世紀1号とされている

 1948年刊行の創刊号の表紙絵は、赤いタンスに茶色い棚、緑の椅子などが柔らかなタッチと色彩で描かれ、ポットや照明スタンド、鍋、花瓶、鏡、傘などが載ったり立てかけられたりしている。モチーフにしたのは今なら簡単に手に入りそうなものばかりだが、終戦直後の混迷の時期を過ごす多くの人にとって、こうした華やかな絵は“夢の暮し”の風景と映ったことだろう。

 この雑誌で「理想の暮し」を目指した花森は、当初、誌名にも「美しい」という形容詞を小さなロゴで添えて『美しい暮しの手帖』とした。その頃、「暮し」という言葉には暗いイメージがあり、その払拭を狙ったともいう。あるいは「暗し」と音が通じることもそんな空気をふくらませていたのだろうか。

《中吊り広告「暮しの手帖 1 世紀 99 号」》
(デザイン:花森安治、1969 年 2 月 1 日刊行用、世田谷美術館蔵)

 花森の表現は、ただ理想的な“暮し”の空気を醸し出しているだけでなく、それぞれのモチーフがまるで体温を有する生き物のようにも感じられる。写実的な表現や写真とは違った創造的な“絵”の力を見出すことも可能だろう。読者の皆さんはどうお感じになるだろうか。

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小川 敦生

小川 敦生(おがわ・あつお)

多摩美術大学美術学部芸術学科教授

日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社後、日経アート編集長や同社編集委員を経て、日本経済新聞社文化部へ。美術担当記者として多くの記事を執筆。2012年4月から現職。専門は美術ジャーナリズム論。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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