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世界の画家の手本になった『北斎漫画』

2017年11月4日(土)

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 版画にも肉筆画にも数々の名作を残した江戸時代後期の浮世絵師、葛飾北斎。世界的に知られることになったきっかけは、明治時代に入って大量の浮世絵版画が欧米に流出したことにあった。数々の絵師による斬新な構図や色彩表現が欧州の画家やコレクターを驚かせる。その中で、北斎には極めて特殊な流出品があった。『北斎漫画』である。国立西洋美術館で開かれている「北斎とジャポニスム」展は、『北斎漫画』が欧米に極めて大きな影響力をもたらす存在だったことがよくわかる展覧会である。

(左)エドガー・ドガ《踊り子たち、ピンクと緑》1894年 吉野石膏株式会社(山形美術館寄託)(右)エドガー・ドガ(鋳造:エブラール)《背中に手をあて、右足を前に出して休息する着衣の踊り子》1896‐1911年(鋳造1919‐21年) ニイ・カールスベア・グリプトテク、コペンハーゲン
国立西洋美術館で開かれている「北斎とジャポニスム」展会場風景。踊り子をモチーフにしたドガの絵画作品や彫刻作品と、それらの発想源になった『北斎漫画』が2つの作品の間に展示されている

 『北斎漫画』はまず、通常の浮世絵版画ではなく、製本された書籍である。また、「漫画」という呼称から連想されるストーリー性のある絵の集合体とは異なり、「絵手本」すなわち画家が絵を描くための手本としてたくさんのモチーフを載せた全15編の画集である。

葛飾北斎『北斎漫画』初編より(1814[文化11]年、浦上蒼穹堂) 絵手本として多様なモチーフが載っている

 さまざまなポーズの人物、種類豊富な植物、百面相の顔、妖怪や幽霊など載っているモチーフは極めて多様だ。激しい流れの中を泳ぐイノシシや日本にはいなかったはずのゾウ、妙に足が長い外国人や、人魚や河童などの空想上の動物、さらにはさまざまなものを吹き飛ばす風のいたずらの描写などもある。形を写すための手本として機能しただけでなく、新たに絵を描くための発想源としての役割も果たしたのではないだろうか。

 「北斎とジャポニスム」展は、北斎の作品が19世紀の欧州の画家の刺激になり、現地で多様な表現を開花させたことを検証する内容だ。モネやドガ、ゴッホ、ロートレックなどフランス印象派とその周辺の画家から、スイスとドイツで活動したパウル・クレーや北欧の画家、さらにはエミール・ガレのガラス工芸に至るまで、さまざまな影響を多くの実物や資料の比較展示によって知ることができる。中でも特に感心したのが、発想源として『北斎漫画』が展示されている例が非常に多かったことだった。

コメント5件コメント/レビュー

>『ドガの踊り子』は、一般によく取る姿勢であり、北斎の影響とするのは、考えすぎに思われます。『メアリー・カサットの「少女の絵」』も同様と思います

浮世絵の模写が残されているゴッホや「ラ・ジャポネーズ」を描いたモネと較べてドガやカサットへの影響は指摘しづらいのは確かですね。ただ、この時期「人体の思いがけない動き」「一瞬の姿態」に対する画家の関心が高まったのは明らかです。恐らくは「写真技術」の向上があるでしょう。露光時間の短期化で「スナップッショット」的な予想外の動作が可視化され、また大胆なトリミングや俯瞰等の自在なアングル等、それまでの絵画では見られなかった効果を目の当たりにして、それをどうやってキャンバス上に移すか多くの画家が考えたに違いありません。そこに恰も写真のようなスナップショット、トリミング、アングルを具備した北斎はじめとする浮世絵がやってきたのですから、何らかの影響を受けたことは想像できます。北斎や広重は西洋絵画の透視図法を学び駆使しており「西洋画に近い」作家ですので、その点からも欧州の画家には受け容れられ易かったと思います。
「西洋古典絵画+写真技術(+浮世絵)=近代絵画」という同時代的な流れになるでしょうか。(2017/11/08 10:10)

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「世界の画家の手本になった『北斎漫画』」の著者

小川 敦生

小川 敦生(おがわ・あつお)

多摩美術大学美術学部芸術学科教授

日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社後、日経アート編集長や同社編集委員を経て、日本経済新聞社文化部へ。美術担当記者として多くの記事を執筆。2012年4月から現職。専門は美術ジャーナリズム論。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

>『ドガの踊り子』は、一般によく取る姿勢であり、北斎の影響とするのは、考えすぎに思われます。『メアリー・カサットの「少女の絵」』も同様と思います

浮世絵の模写が残されているゴッホや「ラ・ジャポネーズ」を描いたモネと較べてドガやカサットへの影響は指摘しづらいのは確かですね。ただ、この時期「人体の思いがけない動き」「一瞬の姿態」に対する画家の関心が高まったのは明らかです。恐らくは「写真技術」の向上があるでしょう。露光時間の短期化で「スナップッショット」的な予想外の動作が可視化され、また大胆なトリミングや俯瞰等の自在なアングル等、それまでの絵画では見られなかった効果を目の当たりにして、それをどうやってキャンバス上に移すか多くの画家が考えたに違いありません。そこに恰も写真のようなスナップショット、トリミング、アングルを具備した北斎はじめとする浮世絵がやってきたのですから、何らかの影響を受けたことは想像できます。北斎や広重は西洋絵画の透視図法を学び駆使しており「西洋画に近い」作家ですので、その点からも欧州の画家には受け容れられ易かったと思います。
「西洋古典絵画+写真技術(+浮世絵)=近代絵画」という同時代的な流れになるでしょうか。(2017/11/08 10:10)

『必要以上に北斎を神格化しているような気がします』とコメントしておられる方がいて、「私と似たようなことを感じている人がいるんだ」と、ちょっとほっとしました。ここのところ、あちらこちらで北斎が取り上げられて賞賛されているのを見ていて、うれしい反面、漠然とした不安も感じていたので。ここまで褒めそやされてしまうと、絵を見る時に先入観が入ってしまうんじゃないか、「この絵を良い絵と思わなければいけない」という圧力のようなものが生まれてしまわないか……。江戸の庶民は、彼の絵を芸術作品として鑑賞していたわけではなく、娯楽として気軽に楽しんでいたはず。それぐらい気軽に眺めて、感じたままを自由に言えるような空気が欲しいです。
 しばらく前に、芥川龍之介が随筆の中で彼の絵を「大嫌いだ」と断言しているのを知り、その時は「なぜそこまで」と驚きましたが、今は逆に、実に素直な感想だなあと思ってます。もっとも、私自身は彼の絵が好きですが。浮世絵に対する漠然としたイメージが変わったのは、彼のおかげです。
「北斎が西洋に大きな影響を与えた」とよく言われますが、彼もまた西洋画を学び、そこから影響を受けています。「お互いに影響を与え合っていた」というのが正解なんじゃないでしょうか。(2017/11/06 12:52)

久しぶりに 西洋美術館にも出かけたくなる。

そんなコラムでした。(2017/11/05 14:13)

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