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仙人のような画家、熊谷守一は理系男子だった

2018年1月13日(土)

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カメラで高速度撮影をしたような瞬間

 理論好き、実験好き、好奇心旺盛……この辺りが「理系男子」と呼ばれるための条件と考えればいいだろうか。天文少年などの場合には、学問の世界で星の世界を覗き見るようなロマンを突き詰めたいという願望を持っていることを加えてもよさそうだ。

 熊谷が「理系少年」だったことを端的に物語っている作品がある。タイトルは《雨滴》。水たまりに降った雨が跳ね返った様子を描いたような絵だ。蔵屋さんは、「現代の高性能カメラで高速度撮影をしたような瞬間を捉えた絵ですね」と指摘する。実際には、水しぶきなどを観察しても、肉眼ではなかなか把握できない。熊谷はいったいどんな目を持っていたのだろうか。

熊谷守一 《雨滴》(1961年、愛知県美術館 木村定三コレクション)

 熊谷が観察の人だったことは間違いない。晩年は、庭を歩くのが日課だった。普通なら数分で歩ける広さを数時間かけて巡ったという。庭には樽などを転用したイスが十数個あり、熊谷は「天狗の腰掛け」と呼んでいた。散歩の途中で腰を下ろして休んでは、目に入るものを観察していたようだ。

 蝶や花の絵などはそんな経緯で描かれたのだろう。時にはむしろを土の上に敷いて寝転がり、目線の高さで動く蟻を観察した。自宅の跡に建っている豊島区立熊谷守一美術館の壁には、蟻をモチーフにした熊谷の作品があしらわれている。蟻は、庭をめぐる熊谷の日常の象徴でもあったのだ。晩年の熊谷を撮った写真家の藤森武氏に熊谷は、「蟻は左の2番目の足から動き始める」と言ったという。常人の目で捉えるのは難しい。なんという観察力なのだろう。それは《雨滴》の観察眼とも通じる。「理系男子」たるゆえんである。

会場風景。蜘蛛や蟻をモチーフにした作品が並んでいるコーナーから

コメント1件コメント/レビュー

熊谷が、観察力、分析力に優れていて、それが作品に活かされているという説は納得出来るが、観察力・分析力に優れていることが理系というのは短絡ではないか。文系の人は観察力・分析力が劣るのか。本稿は、熊谷が理系であったというエピソードを伝えている点で興味深い読み物であった。(2018/01/13 11:26)

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「仙人のような画家、熊谷守一は理系男子だった」の著者

小川 敦生

小川 敦生(おがわ・あつお)

多摩美術大学美術学部芸術学科教授

日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社後、日経アート編集長や同社編集委員を経て、日本経済新聞社文化部へ。美術担当記者として多くの記事を執筆。2012年4月から現職。専門は美術ジャーナリズム論。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

熊谷が、観察力、分析力に優れていて、それが作品に活かされているという説は納得出来るが、観察力・分析力に優れていることが理系というのは短絡ではないか。文系の人は観察力・分析力が劣るのか。本稿は、熊谷が理系であったというエピソードを伝えている点で興味深い読み物であった。(2018/01/13 11:26)

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齋木 昭隆 三菱商事取締役・元外務次官