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衛星写真で景気が分かる

米投資家が頼るAIスタートアップ

2017年11月25日(土)

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 衛星写真を解析することで、原油生産量や小売業の客足などをいち早く割り出す――。米国の投資家はSF映画のような手法を駆使して投資判断をしている。彼らが頼るのはシリコンバレーのAI(人工知能)スタートアップ、米Orbital Insightだ。2017年11月に日本進出を発表した同社の凄さに迫ろう。

 2016年第1四半期を境に、サウジアラビア政府が発表する原油貯蔵量の数字が現実の数字と乖離し始めた。同国の原油貯蔵量は政府が発表したデータよりも、本当はずっと多い――。英国の経済紙「Financial Times(FT)」は2017年11月上旬、政情不安で揺れる中東の大国の“秘密”を暴く記事を掲載した。

 サウジアラビア政府と言えば、外国人の入国を厳しく制限するなど秘密主義で知られる。そんな同国政府がひた隠しにする原油貯蔵量データを報道機関に明かしたのは、匿名の政府要人か、石油メジャーか、それとも大国の情報機関か。実はFTが記事で言及した“ネタ元”は、米マウンテンビューに本社を構えるスタートアップのOrbital Insightだった(図1)。

図1●サウジアラビア政府発表の原油貯蔵量(緑)とOrbital Insightの予測量(青)
出典:米Orbital Insight
[画像のクリックで拡大表示]

 Orbital Insightは、衛星写真をAIによって解析することで、地球上で展開されるさまざまな経済活動の最新状況を割り出すサービスを提供する。原油貯蔵量であれば、世界中にある2万4000個以上の原油タンクの「浮き屋根」に着目する。原油タンクの屋根は固定式ではなく、原油の上に浮いている。そのため原油タンクを上から観察すると、石油タンクの壁面の影の大きさから浮き屋根の高さが分かり、そこから原油タンクの残量が分かる(図2)。

図2●原油タンクの影の形
出典:伊藤忠商事/スカパーJSATのプレスリリース
[画像のクリックで拡大表示]

 同社は原油タンクの影の大きさなどから残量を割り出す画像解析エンジンを機械学習ベースで開発。米DigitalGlobeや欧州Airbus、米Planet Labsといった民間の衛星会社から購入した世界中の衛星写真を分析することで、原油タンクの残量を月次や週次といった高頻度で割り出している。

半分しか知られていなかったサウジの原油タンク

 そもそも経済協力開発機構(OECD)に加盟するような先進国は、原油貯蔵量などの経済統計を正確に発表しているが、サウジアラビアのようなOECD非加盟国の場合は、政府が発表する経済統計が不正確だったり、そもそも原油タンクの数や場所自体が明らかにされていなかったりする

 例えば、Orbital InsightのAIが衛星写真をもとにサウジアラビアの原油タンクをくまなく探し回ったところ、石油業界の調査会社が過去に割り出した数の2倍に相当する原油タンクが同国にあることが分かった。さらに2014年以降の衛星写真を解析すると、AIが導き出した同国の原油貯蔵量と、サウジアラビア政府が国際機関のJODI(Joint Organizations Data Initiative)に報告してきたデータとに不整合があることが判明した。

 サウジアラビア政府は原油価格が下落し始めた2016年第1四半期から現在までの間に、同国の原油貯蔵量が25%も減少したというデータを公表していた。しかし実際には、同国の原油貯蔵量は減少するどころか増加していたのだ。Orbital Insightのような民間企業が政府機関よりも正確なデータを算出することで、投資家はより正確なデータに基づいて投資判断ができるようになった。

コメント1件コメント/レビュー

 いやいやこういった技術はすでに米ソ冷戦時代に開発され、研ぎ澄まされたものの一つ。偵察衛星が写す写真からミサイルサイロなどの大きさを測り、赤外線の輻射による小麦等の作柄を計測して、アメリカの穀物戦略に活用していた。
 記事から思うに、おそらくGPSなどと同じ、技術の民間移転だろう。こういった技術を先行的に普及させて、世界的な標準(レギュレーション)を固定化し、主導権を握り続けるアメリカの戦略にそった、むしろ常識的な動きと思う。
 どこでも政府にはカネがないが、こういった切り売りで政府へカネを移し、同時にこれからのビジネスを管理し続けるという、グローバリゼーションの一環。
 日本の”ものづくり”など、こういった戦略もなく、個人技能に任せているんだから当然劣化は加速する(人口が減れば教える人が減り、若者が一人前になれなくなる。)カネがないから、手抜きで済ませようとする日本と、カネがないからこそ売れるしくみと工夫でカネを手に入れようとする周辺世界との違い。(2017/11/25 09:33)

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「衛星写真で景気が分かる」の著者

中田 敦

中田 敦(なかだ・あつし)

シリコンバレー支局

1998年慶應義塾大学商学部卒業、同年日経BP社に入社。ITproや日経コンピュータを経て、2015年5月からパロアルトに開設したシリコンバレー支局を拠点に、シリコンバレーの最新事情を取材中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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 いやいやこういった技術はすでに米ソ冷戦時代に開発され、研ぎ澄まされたものの一つ。偵察衛星が写す写真からミサイルサイロなどの大きさを測り、赤外線の輻射による小麦等の作柄を計測して、アメリカの穀物戦略に活用していた。
 記事から思うに、おそらくGPSなどと同じ、技術の民間移転だろう。こういった技術を先行的に普及させて、世界的な標準(レギュレーション)を固定化し、主導権を握り続けるアメリカの戦略にそった、むしろ常識的な動きと思う。
 どこでも政府にはカネがないが、こういった切り売りで政府へカネを移し、同時にこれからのビジネスを管理し続けるという、グローバリゼーションの一環。
 日本の”ものづくり”など、こういった戦略もなく、個人技能に任せているんだから当然劣化は加速する(人口が減れば教える人が減り、若者が一人前になれなくなる。)カネがないから、手抜きで済ませようとする日本と、カネがないからこそ売れるしくみと工夫でカネを手に入れようとする周辺世界との違い。(2017/11/25 09:33)

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