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1980年、黙殺された「北朝鮮拉致事件」特報

「アベック3組ナゾの蒸発 福井、新潟、鹿児島の海岸で」

2017年2月28日(火)

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 NHK-BS「アナザーストーリーズ」のプロデューサー、久保健一は1997年にNHKに入局、初任地は鹿児島だった。希望通りの配属だ。できるだけ遠くに行きたいと思い、鹿児島、釧路、高知の順に希望を出していた。沖縄を避けたのは人気が殺到するだろうから、札幌を避けたのは大都市だからだ。

地元紙の小さな記事

 その鹿児島で、地元紙にときおり載る小さな記事が気になった。行方不明になった息子を探す家族のニュースだ。周囲に聞くと、どうやらその男性は、北朝鮮に拉致された“らしい”。

 拉致現場とされる吹上浜にも行ってみたが、ここから他国へというイメージが湧かない。そもそもなぜ、日本人を力尽くで連れ去るのか。身代金を要求するわけでもなく、犯行声明を出すわけでもない拉致の目的は何なのか。

 取材してみたい。そう考えたが、「お前の手には負えないよ」と言われた。

 なぜ証拠がないのに“らしい”と言えるのか。何も分からないのに“手に負えない”と言えるのか。

 結局、久保は取材をしなかった。

 一歩先が闇だと直感していたからだ。まずはこういったことを調べ、この人たちに話を聞いて、それからほかの取材対象を探して、という先の見通しが、全く立たない。一歩歩き出すと、そこは真っ暗で、どの方向にどれだけ長い道があるのか分からない。それ以前に、道があるかどうかも分からない。“手に負えない”とはそういうことなのだろうと思った。

 だからこそ、2002年に、5人の拉致被害者が帰国したときには衝撃を受けた。「なぜあのとき、自分は取材しなかったのか」という思いは今も心にくすぶっている。そして、これを最初に公のニュースにできた人は、どうやってそこに至ったのかを知りたいと思った。

 3月1日(水)21時~の「アナザーストーリーズ」では北朝鮮による日本人の拉致を取り上げる。

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「1980年、黙殺された「北朝鮮拉致事件」特報」の著者

久保 健一

久保 健一(くぼ・けんいち)

NHK プロデューサー

1972年、千葉生まれ。平成9年NHK入局。「プロジェクトX~挑戦者たち~」「プロフェッショナル仕事の流儀」などの制作に携わる。現在、NHKエデュケーショナルにて「アナザーストーリーズ~運命の分岐点~」や「世界入りにくい居酒屋」などを担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

片瀬 京子

片瀬 京子(かたせ・きょうこ)

フリーライター

1972年生まれ。東京都出身。98年に大学院を修了後、出版社に入社。雑誌編集部に勤務の後、2009年からフリー。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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