• ビジネス
  • xTECH
  • クロストレンド
  • 医療
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

ビール安売規制強化とインフレ誘導の無理筋

魅力的商品には消費者は金を使う、脱デフレに近道なし

2017年3月14日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

物の値段は本来、消費者がどれだけの価値を認めるかによって決まるはずだ。このところ、価格を人為的に引き上げようとする政府の動きが目立つが、消費者や経済へのプラス効果は薄い。

 チラシからキリンのビールだけが消えた──。首都圏が地盤の酒類ディスカウント店チェーンのチラシに最近、異変が起きた。各メーカーの多種多様なビール類の商品写真が並ぶ中、キリンだけが掲載されていない。このチェーンの担当者に理由を聞くと、キリンビールの意向で取引条件が変わり、安値で提供できなくなったという。

 キリンは具体的な内容は明らかにしていないが、1月から各社との取引条件を見直している。メーカー、卸、小売り、それぞれが適正な利益を確保するという大義名分の下、キリンは販売促進費などの支出を絞る方向とみられる。企業を疲弊させる安売り競争に歯止めをかける狙いがある。

 全国のチラシを調査・分析するチラシレポート(東京・中央)によると、キリンの「一番搾り」(350ミリリットル6缶)のスーパーでの平均価格は2月第4週に1103円。前年同期比で7週連続で上昇した。対照的に、アサヒビールの「スーパードライ」は1084円で、前年同期比でも価格下落が続いている。キリン製品がチラシに登場する、延べ店数も減っており、2月第4週の一番搾り(6缶)は同4分の1、「のどごし生」(同)は同4割にとどまった。

 2005年にもキリンは価格政策やリベートの見直しなど、ビール業界の取引改革を先導して安売り阻止に動いたが、小売り大手の反発や業界内の足並みの乱れから、自社にだけ販売のマイナス影響が大きいという事態となった。だが「今回こそは他のメーカーもキリンと同様に動くことが、期待できる」(証券アナリスト)との見方が出ている。

安売り規制は消費者置き去り

 なぜなら今、業界には、国税庁などの大きな規制強化の動きに連動しようという思惑があるからだ。昨年5月、過度な安売りの撲滅を目指して酒税法などの改正法が成立し、今年6月に施行される。これに合わせ財務省と国税庁は新たな公正取引基準を定めた。悪質な安売りの継続に対しては、小売店の販売免許を取り消す罰則も盛り込む。

 だが今回の規制は問題が多い。参院選を控える自民党議員らが、票田である中小酒販店の要望を受けて立法を急いだ。現状でも独占禁止法の「不当廉売」を公正取引委員会が取り締まる仕組みがある。スーパーなどの攻勢に苦しむのは電器店や青果店も同じだ。酒販店だけを保護する理由は薄い。

 税収として重要な酒税は、出荷段階でメーカーが納める。国税庁には、安売りで流通各段階の利益が薄くなると、税徴収の基盤が危うくなるとの懸念があるようだ。だからといって、規制強化によって、小売店が萎縮して競争を控えれば、消費者の負担が増す。

 「政治の力を感じる。値付けに慎重にならざるを得ない」。大手食品スーパーの首脳は、国税当局の動きに神経をとがらせる。一方、日々の店頭をみれば「顧客の節約志向は強まっている」といい、簡単には値上げできない。

コメント2件コメント/レビュー

松下幸之助氏の言葉で印象に残っているものとして「厚利多売」というのがあった。この記事で「厚利」は良いとして,「多売」につながるのだろうか。なんとなく,「安易」な方向に流れていないだろうか。これが,時代の潮流なのだろうか。疑問が残る。そもそも,消費が足りないのが問題だとすれば,「買いたい」という気持ちを起こさせるのが本道。マーケティングなどで対症療法的に「買いたい気持ち」を起こさせたとしても「流れ」にまではならないだろう。地道な対策が必要なはずだ。「買えない」気持ちの根っこは「不安」だろうか。経済・社会の根底にある「不安」を取り除く施策が必要だというのが,記者氏の「想い」であるならば共感できる。(2017/03/14 12:05)

オススメ情報

「ニュースを斬る」のバックナンバー

一覧

「ビール安売規制強化とインフレ誘導の無理筋」の著者

鈴木 哲也

鈴木 哲也(すずき・てつや)

日経ビジネス副編集長

日本経済新聞社で小売業、外食のほかビール、化粧品、衣料など消費財関連を幅広く取材してきた。03~07年はニューヨークに駐在。企業報道部デスクなどを経て、15年10月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

松下幸之助氏の言葉で印象に残っているものとして「厚利多売」というのがあった。この記事で「厚利」は良いとして,「多売」につながるのだろうか。なんとなく,「安易」な方向に流れていないだろうか。これが,時代の潮流なのだろうか。疑問が残る。そもそも,消費が足りないのが問題だとすれば,「買いたい」という気持ちを起こさせるのが本道。マーケティングなどで対症療法的に「買いたい気持ち」を起こさせたとしても「流れ」にまではならないだろう。地道な対策が必要なはずだ。「買えない」気持ちの根っこは「不安」だろうか。経済・社会の根底にある「不安」を取り除く施策が必要だというのが,記者氏の「想い」であるならば共感できる。(2017/03/14 12:05)

詳細な数字は判りませんが安売り合戦の規制は良いのではと思います。
消費者の負担になるのは仕方ないとは言いませんが、メーカーの報奨金とかで大手小売りは安売りしても利益を出せるけどメーカーはコスト増で疲弊、中小小売は安売り合戦には参加できないから負けていく。消費者の為という大義名分で大手小売りだけが利益を上げている構造はもはや駄目だろうと感じています。(2017/03/14 10:04)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

妥当な内容の商品ばかりが並んでも、 お客様は喜んでくれない。

大倉 忠司 鳥貴族社長