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郵政改革に大逆行、ゆうちょ預金の限度額撤廃

民業圧迫で、TPP違反で、アベノミクスにも反する

2018年3月19日(月)

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国鉄しかり、電電公社しかり、公的企業の民営化は必ず「分割・民営化」でなければならない。だが、郵政公社については政治的な妥協から実現できなかった(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 政府の郵政民営化委員会は3月中にも、ゆうちょ銀行の預金限度額を撤廃する見通しだ。これは退職金などまとまった額の資金を預けたいという利用者のニーズに、現行の1300万円の限度額が障害となっていることや、資金を分割する業務処理のコスト高、などが理由として挙げられている。

 これに対して、他の金融機関から預金シフトが生じるなど民業圧迫であり、ゆうちょ銀行の民営化が十分に進んでいない現状では時期尚早との批判がある。

 しかし、これは単に郵政族と銀行界との利害対立といった、国内政治の枠内を超えた問題である。

 まず、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の原則に反するなど、グローバル経済の視点も重要である。

 また、本来、何のための郵政民営化だったのかという本質的な観点で考えてみる必要がある。アベノミクスの成長戦略にも反し、過去の郵政三事業改革の歴史の針を、大きく昔に戻すものといえる。その意味では預金限度額の撤廃はもとより、政治的な落しどころとしての限度額のさらなる引き上げも、安易に認めるべきではない。

防ぐべき巨大な民間企業

 小泉純一郎政権(2001年4月~2006年9月)において、郵政公社の民営化が最重要の政策課題であった。

 これは国が巨大な金融機関を経営することで、民間の金融機関との公平な競争を妨げるとともに、民間資金を非効率な公共事業に吸い上げる役割を果たしているという、日本の構造問題を解決するのが目的だった。すなわち、日本の金融サービス産業の健全な発展を促すためには、郵政公社の民営化が必要という論理であった。

 日本に限らず、巨大な公的企業を民営化する際には、絶対にしてはいけない原則がある。それは官の独占企業を、単に民の独占企業に変えることである。

 これを防ぐためには、公的企業の民営化は、必ず「分割・民営化」でなければならない。日本国有鉄道(国鉄、現JR)や日本電信電話公社(現NTT)の民営化には適用されたが、郵政公社については政治的な妥協から実現できなかった。

 代わりに、郵政公社の組織内で、銀行業や保険業という「機能分割」にとどまったことが大きな違いである。このため179兆円の預金量(2016年度末)と、民間メガバンクトップの三菱東京UFJ銀行の1.3倍の規模のゆうちょ銀行は、巨大な官製銀行のままで民営化されるという、最悪の結果になってしまった。

 当時、経済学者の一部には、仮に郵政公社の形態のままでも、郵便貯金の限度額を大幅に引き下げ、少額預金のみを取り扱う金融機関にすれば、その弊害は小さいという見方もあった。

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「郵政改革に大逆行、ゆうちょ預金の限度額撤廃」の著者

八代 尚宏

八代 尚宏(やしろ・なおひろ)

昭和女子大学特命教授

昭和女子大学グローバルビジネス学部長・特命教授。国際基督教大学卒業後、旧経済企画庁を経て上智大学教授、日本経済研究センター理事長、国際基督教大学教授等を経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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