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中国の報復関税はWTO違反だ

本丸の通商法301条に対しても更なる「牽制球」を発表

2018年4月5日(木)

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中国は4月4日、米国産の大豆や航空機など106品目に25%の関税をかけると発表した。同2日に発動した、ワインやナッツ類など120品目に15%、豚肉など8品目に25%の報復関税に続く措置。だが、米国だけでなく、中国のこれらの措置もWTO違反である。

中国が米国に報復関税。貿易戦争の懸念が高まっている(写真=AP/アフロ)

 中国は4月4日、米国産の大豆や自動車、航空機など106品目(総額500億ドル)に25%の関税をかける方針を発表した。米国が検討している通商法301条に基づく中国に対する制裁関税への対抗措置。4月2日には、ワインやナッツ類、果物など120品目に15%、豚肉など8品目に25%の関税を上乗せする報復関税を発動済み。後者は米国が通商拡大法232条に基づいて鉄鋼に25%。アルミニウムに10%の追加関税をかけたことへの対抗措置だが、まさに「目には目を」の実行だ。

中国の報復関税は単なる「見せ球」

 しかし、これは「貿易戦争」の単なる前哨戦だ。

 4月2日に発動した報復関税の対象は30億ドルで、追加関税の総額はたかだか6.5億ドルに過ぎない。これは米国が中国の鉄鋼・アルミにかけた追加関税相当分である。本丸はこの後、米国が発動を予定している通商法301条に基づく制裁だ。それを牽制するために、もしも発動されれば、それに応じて今回の報復関税とは比べ物にならない報復関税を本気で発動する構えだ、とのファイティング・ポーズを見せるための「見せ球」だ。

 米国は通商法301条に基づく制裁の発動を6月以降に先送りしている。それはそれまでの間に中国と交渉して取引するという思惑があるからである。

 トランプ政権は「制裁」というこん棒を振りかざして相手国を脅して、取引する手法を露骨に繰り広げている。制裁が目的ではなく、取引が目的である(参照:輸入制限で日本を除外しないトランプの頭の中)。4月3日に1300品目のリストを公表したのも、そのためだ。中国もそれを分かったうえで、トランプ政権による脅しの効果を減殺するために、30億ドル分の報復関税の発動に加えて、新たに通商法301条に対する報復関税リストを公表した。

WTO違反の可能性が大きい

 しかも、中国はこの報復関税は世界貿易機関(WTO)のルールを順守したものであることを強調している。米国がWTO違反の措置を繰り出すことと対比して、中国の正当性を世界にアピールする狙いだろう。そうすることにより、WTOを重視する日本と欧州を味方に引き入れて、米国を孤立させる「孫子の兵法」だ。その結果、本来は中国の過剰生産が根本的な問題である鉄鋼問題を、「中国問題」ではなくWTO違反を繰り出す「米国問題」にすり替えることができる。なかなかしたたかである。

 しかし、本当に中国の報復関税はWTOのルールを順守したものだろうか。

 多くのメディアは中国の説明を鵜呑みにして気づいていないようだが、よくみればWTO違反の可能性が高い。

 少々専門的な話になるが、中国は米国の通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミの関税引き上げをWTO上のセーフガード(緊急輸入制限)とみなして、WTOのセーフガード協定に基づいて報復関税を発動するとしている。中国は米国が発動したセーフガード措置によってマイナスの影響を受けるので、そのマイナスの影響を埋め合わせる補償措置をとれる。それが今回の報復関税だとの理屈だ。

 しかし、セーフガード協定によれば、相手国と協議をしたり、WTOに通報をしたりする必要がある。こうしたセーフガード協定に規定された手続に従わず、一方的に報復することはWTOの認めるところではない。

 それにもかかわらず「WTOのルールに従っている」と強弁するところが中国らしい。相手国である米国のWTO違反の措置に対する対抗策なので、相手国からWTOに提訴される心配がないからだろう。日本のような真面目な国は到底真似することができない。これを鵜呑みにして疑問を差し挟まない報道ぶりも問題だ。

 この問題の本質は、超大国の米中双方がWTO違反の一方的措置の応酬をしてWTOが有名無実化され、世界の貿易秩序が危機に直面することだ。その最大のダメージを受けるのが、米中ではなく日本である。米中間の貿易戦争は、日本にとってひとごとではない。

コメント18件コメント/レビュー

「財務省出身者と違って経済産業省出身者はまっとうな
見識をもってるものだなと、経産省を見直した」
経産省が官邸を牛耳っていると聞きますよ。。(2018/04/06 11:43)

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「中国の報復関税はWTO違反だ」の著者

細川 昌彦

細川 昌彦(ほそかわ・まさひこ)

中部大学特任教授(元・経済産業省米州課長)

1955年1月生まれ。77年東京大学法学部卒業、通商産業省入省。「東京国際映画祭」の企画立案、山形県警出向、貿易局安全保障貿易管理課長などを経て98年通商政策局米州課長。日米の通商交渉を最前線で担当した。2002年ハーバード・ビジネス・スクールAMP修了。2003年中部経済産業局長として「グレーター・ナゴヤ」構想を提唱。2004年日本貿易振興機構ニューヨーク・センター所長。2006年経済産業省退職。現在は中部大学で教鞭をとる傍ら、自治体や企業のアドバイザーを務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

「財務省出身者と違って経済産業省出身者はまっとうな
見識をもってるものだなと、経産省を見直した」
経産省が官邸を牛耳っていると聞きますよ。。(2018/04/06 11:43)

まともに真実を報じることのできないマスコミに存在価値あるのか?(2018/04/06 08:15)

コメントありがとうございます。筆者より補足させていただきます。

米国の通商拡大法242条、通商法301条いずれの一方的措置も当然、WTO違反です。そのことは累次の拙稿でも触れており、皆さんの間では共通認識だと思って、敢えて強調しなかった次第です。米中双方の一方的措置を問題にしていることは中身を読んでいただければお分かりいただけると思います。

ただタイトルも「中国の報復関税もWTO違反」とした方がよかったですね。

一部で誤解も生じているようなので、念のため申し添えます。(2018/04/05 18:49)

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