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トランプに屈しないイスラム教徒のロンドン市長

テロによる偏見を跳ね返したカーン氏の素顔

2016年5月17日(火)

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ロンドンで、イスラム教徒の市長が誕生した。サディク・カーン氏、45才。テロの脅威がなくならず、キャメロン首相までもが根拠なきネガティブキャンペーンを展開したが、逆風にも屈せず57%の得票率を獲得した。人権派弁護士として同性愛者への理解もあるカーン氏が、高まる社会の分断リスクに挑む。

サディク・カーン氏は、イスラム教徒として初めて、ロンドン市長に選出された。(代表撮影:ロイター/アフロ)

 「私の名前はサディク・カーン。ロンドン市長だ!」

 5月7日、ロンドン市民の前に姿を現した野党労働党のサディク・カーン氏(45才)が高々と宣言すると、大きな歓声が沸き起こった。ロンドン市長選は熾烈な選挙戦が繰り広げられた。結果は、イスラム教徒であるカーン氏が57%を獲得し、見事に当選した。ロンドンでは、総人口の約12%をイスラム教徒が占めていると言われる。投票率は45.3%だったから、イスラム教徒以外の多くの市民が、カーン氏を支持したことになる。

 「私のような者が、ロンドン市長になれるなど夢にも思わなかった」。投票結果が発表され、市長に選出された直後のスピーチで、カーン氏はこう述べた。

 カーン氏のこれまでの軌跡は、絵に描いたようなサクセスストーリーである。両親は、1960年代にパキスタンからイギリスに移り住んできたイスラム教徒の移民だ。カーン氏は70年に、8人兄妹の5男としてロンドンで生まれた。父親はバスの運転手で、母親は針子をして家計を支えた。一家は自治体の運営する低所得者層向けの公営住宅に暮らしながら、カーン氏は大学で法律を学び、人権派弁護士となる。ロンドンの特別区議会議員も務め、2005年には国会議員になった。

 順調に弁護士、そして政治家としてのキャリアを積んできたように見えるが、それだけでイスラム教徒であるカーン氏がロンドン市長になれたわけではないだろう。テロへの脅威が高まる中でも、イスラム教徒への偏見に屈しなかったカーン氏自身、そして、ロンドン市民の強い意思が、今回の勝利の背景にある。実際、同じスピーチの中でカーン氏は、今回の選挙戦を振り返り、「私はロンドンが、恐怖ではなく希望を、分断ではなく結束を選んだことを誇りに思う」と熱く語った。

偏見に基づくネガティブキャンペーンも

 世界屈指の国際都市ロンドンには、常にテロの脅威が付きまとう。英国の国際テロ警戒レベルは依然として、5段階のうち「攻撃の可能性が高い」ことを意味する上から2番目だ。

 いつテロが起こるかもわからない危険を抱え、市民が一致団結しなければならない状況にもかかわらず、今回のロンドン市長選挙では、逆に社会を分断しかねないキャンペーンを張る陣営があった。それが、カーン氏の対抗馬だった、与党保守党候補のザック・ゴールドスミス氏である。

 ゴールドスミス氏の生い立ちは、カーン氏とは対照的だ。ロスチャイルド一族の妻を持ち、自身は大富豪の息子。名門イートン校に入学するも、薬物問題で退学処分になったこと以外は、「生粋のおぼっちゃま」を彷彿とさせる。

 カーン氏同様、ゴールドスミス氏も、ロンドン市民の最大の懸念事項である住宅不足の改善などを公約に掲げていたが、具体的な政策に乏しく、カーン氏にリードを許していた。不利な状況に焦ったのか、ゴールドスミス陣営は、イスラム教徒であるカーン氏が過激派と結びついていることを印象づけるような戦略に打って出た。

コメント9件コメント/レビュー

いつまで安定した状況が続くのかが気になるところです。
大規模なテロ事件や移民と住民の諍いが多発(個人的に移民はその地域のルールや秩序に従うべきだと思いますが、必ずしもそうではないのが現状です)してもロンドン市民は平然としていられるか・・・ドイツは既に紛然と状況に陥っています。
カーン氏にしても、ロンドン市民の圧倒的な支持を得て当選したわけではありませんし、ロンドン市民も移民の悪影響を大きく受けている状況ではない(但し一部スラム化や社会保障へのフリーライディング、若者の雇用問題などが噴出している)という事情もあるでしょう。
また、イギリス自体がある旧植民地からの移民によりある程度移民国家になっており、耐性があるという事情も鑑みるべきかもしれません。
いずれにせよ、問題が起きた(恐らく起きるでしょう)際にどのように対応していくのかを注視したいと思っています。
個人的には、(そのような問題が発生しておらず、事態の収拾能力も不明であるのに)カーン氏の当選自体を「善いこと」と謳う風潮に違和感を覚えざるを得ません。(2016/05/18 09:50)

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「トランプに屈しないイスラム教徒のロンドン市長」の著者

伏見 香名子

伏見 香名子(ふしみ・かなこ)

フリーテレビディレクター(ロンドン在住)

フリーテレビディレクター(ロンドン在住)。東京出身、旧西ベルリン育ち。英国放送協会(BBC)東京支局プロデューサー、テレビ東京・ロンドン支局ディレクター兼レポーターなどを経て、2013年からフリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

いつまで安定した状況が続くのかが気になるところです。
大規模なテロ事件や移民と住民の諍いが多発(個人的に移民はその地域のルールや秩序に従うべきだと思いますが、必ずしもそうではないのが現状です)してもロンドン市民は平然としていられるか・・・ドイツは既に紛然と状況に陥っています。
カーン氏にしても、ロンドン市民の圧倒的な支持を得て当選したわけではありませんし、ロンドン市民も移民の悪影響を大きく受けている状況ではない(但し一部スラム化や社会保障へのフリーライディング、若者の雇用問題などが噴出している)という事情もあるでしょう。
また、イギリス自体がある旧植民地からの移民によりある程度移民国家になっており、耐性があるという事情も鑑みるべきかもしれません。
いずれにせよ、問題が起きた(恐らく起きるでしょう)際にどのように対応していくのかを注視したいと思っています。
個人的には、(そのような問題が発生しておらず、事態の収拾能力も不明であるのに)カーン氏の当選自体を「善いこと」と謳う風潮に違和感を覚えざるを得ません。(2016/05/18 09:50)

実のところカーン氏がロンドン市長に選ばれたときには大変驚きました。他民族との直接的接触を長年経験しているロンドン市民とそうではない東京市民との基本的な差を見た気がしました。以前に何処かの新聞で「ISのテロ行為がイスラムに傷を付けている」との発言を読みましたが、ISとイスラム教は別ものであると考えております。難しいことでしょうがISイコールイスラム教ではなく、きちんと線引きをして理解しなければいけないとの思いを強く致しました。(2016/05/18 08:31)

ロンドン市民って大したもんですね。(2016/05/17 19:22)

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齋木 昭隆 三菱商事取締役・元外務次官