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解雇の金銭解決ルールはなぜ日本でも必要か

「日本は解雇規制が厳しすぎる」という誤解を解く

2017年6月1日(木)

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「解雇規制が厳しすぎる」という批判は根強いが…

 厚生労働省の「透明かつ公平な労働紛争解決システム等のあり方に関する検討会」の最終報告書が5月31日に公表された。

 これは欧州の主要国で普及している、解雇の金銭解決ルールを日本にも初めて導入するものである。この報告書は、法曹界・学界の専門家や労使団体の代表者などが1年半かけて審議した検討会での議論をまとめたもので、今後、労働政策審議会での検討を経て、速やかな法制化に結びつくことが期待されている。

 日本の解雇規制に関しては多くの誤解がみられる。まず、現行法について「解雇規制が厳しすぎる」という批判は的外れである。むしろ個別労働紛争に関する明確なルールを欠くことから、裁判官の判断にばらつきが生じやすい「判例法」に依存せざるを得ないのが現状であり、効率的な規制作りが求められている。

 他方で、明確な解雇ルールを策定すると「カネさえ払えば会社は自由に社員を解雇できるようになる」という批判も妥当ではない。これは既に、「十分な補償もなしに解雇されている」中小企業の労働者の現状から目を背けるものだからだ。

 この解雇の金銭解決ルールを導入し、労使双方にとって補償金の相場を明確にする目的は2つある。第1に、長期の裁判に訴えられず迅速な労働局あっせん等を利用する中小企業の労働者の受け取れる補償金の増加で、大企業の労働者との間の不公平の是正である。第2に、万一の解雇コストに関する予測可能性を高めることで新規投資を促進し、正規社員の雇用機会拡大に結びつけることである。

 現行の雇用慣行は元々、法律に基づくものではなく、戦後の高い経済成長期に、熟練労働者の確保という企業の必要性から成立したものである。長期的な雇用保障と年功賃金の組み合わせで労働者の生活を安定させ、企業の利益が長期的に労働者に還元される労使の円満な関係を通じて日本経済の発展に大きな貢献を果たした。しかし、その過去の成功体験自体が経済社会環境の変化に対応した労働市場改革を阻む大きな要因となっている。

 特定の企業だけに依存した雇用保障は、その代償として慢性的な残業や転勤など無限定な働き方と一体的で、とくに女性の活用を阻む大きな障害となる。また、低成長期に企業倒産や整理解雇のリスクが高まるなかで、欧州主要国のように、雇用契約の終了時に企業が労働者にどう補償するかの明確な手続きを法律で定めておくことは、企業と大部分の労働者にとって共通した利益と言える。

日本の解雇法制の問題点

 現行の労働基準法には、組合活動や育児休業等に関する差別的な解雇の禁止を除けば、30日分の賃金に相当する解雇手当を支払うとしか規定がない。しかし、それだけでは雇用保障の社会的慣行に反することから、裁判所が「使用者には解雇権があるが、それを濫用してはならない」という解雇権濫用法理を生み出した。

コメント5件コメント/レビュー

不偏不党,公平であるかのような書きぶりながら,「大企業の労組が悪い」という強烈な読後感を与える,素晴らしい筆力ですね.さすが元経企庁のお役人.国民の生活をより困窮させようが,長期的に日本の経済が停滞しようが,短期的に大企業がより儲かる方策しか考えられないのですね.
当然のことながら,問題の本質は大企業の労組などではありません.最初のコメント者が指摘しているように,「年功賃金」が問題です.それと,賃金抑制策として中途半端に「裁量労働制」を取りいれたことなども今の歪みの原因です.あ,それと新卒一括採用.
やるとするなら,新卒一括採用の禁止(いわゆる「総合職」というポストでの採用禁止),年功賃金の禁止を企業に課してからでないと,企業を利するだけです.それと,「年功賃金」で採用されて,生産性が高い時期が終わった時点(45歳くらい)で解雇される人には,本来もらえるはずだった「年功分」を反映させないと,不公平です.生産性の高い時期を,本来支払われる金額より不当に安く働かされていたわけですから.(2017/06/01 12:00)

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「解雇の金銭解決ルールはなぜ日本でも必要か」の著者

八代 尚宏

八代 尚宏(やしろ・なおひろ)

昭和女子大学特命教授

昭和女子大学グローバルビジネス学部長・特命教授。国際基督教大学卒業後、旧経済企画庁を経て上智大学教授、日本経済研究センター理事長、国際基督教大学教授等を経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

不偏不党,公平であるかのような書きぶりながら,「大企業の労組が悪い」という強烈な読後感を与える,素晴らしい筆力ですね.さすが元経企庁のお役人.国民の生活をより困窮させようが,長期的に日本の経済が停滞しようが,短期的に大企業がより儲かる方策しか考えられないのですね.
当然のことながら,問題の本質は大企業の労組などではありません.最初のコメント者が指摘しているように,「年功賃金」が問題です.それと,賃金抑制策として中途半端に「裁量労働制」を取りいれたことなども今の歪みの原因です.あ,それと新卒一括採用.
やるとするなら,新卒一括採用の禁止(いわゆる「総合職」というポストでの採用禁止),年功賃金の禁止を企業に課してからでないと,企業を利するだけです.それと,「年功賃金」で採用されて,生産性が高い時期が終わった時点(45歳くらい)で解雇される人には,本来もらえるはずだった「年功分」を反映させないと,不公平です.生産性の高い時期を,本来支払われる金額より不当に安く働かされていたわけですから.(2017/06/01 12:00)

なるほど、要するに大企業・優良企業であるほどしっかりとした労組が存在し、その労組が経営陣と交渉したり闘争した結果得た労働者の利益は手厚い。しかし、当然のことながらその利益はそういった大企業や優良企業に勤務する労働者にしか適用されない。

一方、労組も形成できないような中小企業における労働者を救おうと法を定めようとすれば、その水準は大企業労組がこれまで獲得してきた水準を下回るため、大企業労組としては今まで獲得した権利を下回るような法を制定されては既得権が侵されると反対する。

結果として、中小弱小企業労働者を救うための法に対する最大の抵抗勢力は大企業労組およびその代表者たる連合などの労働団体、さらにその支持を受ける民進党等の諸政党になるということか。

つまり、労働者も条件の良い企業に勤める上級労働者と、条件が悪い企業に勤める下級労働者に分断されてしまっており、既存の労組および政治勢力は上級労働者の味方であって下級労働者の味方ではなく、時には敵にすらなるという救いようのない現実が見えてくる。これは根深い。どうすればよいかは分からないが、まずは現状を知ることが第一歩なのだろう。(2017/06/01 09:49)

肩書きだけで産業界の代弁者であることが明確にわかる。
これだけリーマンショックを皮切りに、グローバリズムが世界中にトラブルを巻き起こしているのにいまだその手の方法論に間違いがないと信じられる人が私は不思議でならない。
 日本の失われた20年とうのはバブル期の経営者の本業外の不動産投資などの無駄遣いが根本原因で、年功序列とか日本的雇用慣習によるものではなかったのに、どういうわけがグローバリストは雇用環境に原因があることに固執する。
 確実に雇用に関しては派遣法改正などで緩ませてきたのによくなりましたか?むしろ不安を増長させて財布のひもがますます固くなり悪くなったのではありませんか?
 それどころかトップの無駄遣いの問題という本当の問題に注目しなかったがために、東芝の上スティングハウス買収などという誤りから苦境に陥ってしまったではありませんか?(2017/06/01 08:36)

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