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外来種の駆除を保全の目的にしてはならない理由

森林総合研究所 鳥類学 川上和人(3)

2018年4月7日(土)

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鳥の研究に魅せられて、無人島で過酷な調査を行い、鳥の進化の妙に思いをはせ、ベストセラーをものす。そんなマルチな活躍を続ける注目の鳥類学者、川上和人さんの研究室に行ってみた!

(文=川端裕人、写真=内海裕之)

 海鳥が、森を作る。

 海鳥が、海で魚やイカなどを食べて、陸上でフンをすることで、栄養となるリンや窒素を森にもたらす。川上さんの研究で、そんな物質循環のビジョンが見えてきた。

 そこで疑問に思うのは、こういった物質循環のありようが、森林にどのような変化を与えるのかということだ。海鳥がいるのといないのとでは、島の植物をはじめとする生き物の体を形づくる元素の「同位体比」が違うと前回書いた。ただ、それらは化学的には同じ物質だから、見た目も同じだ。もっと目に見える違いは出てくるのか。

 ぼくの素朴な疑問に対して、まず本当に目で見える大きな違いがあると川上さんは請け合った。

「これは、南硫黄島の近くの北硫黄島と比べるとすぐにわかります。人が住んで、ネズミが入って、ミズナギドリの仲間がいなくなった北硫黄島の森林って、もう見た目で南硫黄島の森林と違うんです。どんな違いだと思います?」

小笠原の鳥の生態を研究している川上和人さん。

 海からの物質輸送があったほうが栄養豊かなのだろうから、それがない北硫黄島は森林が貧弱であるとか、そういう方向であろうとぼくは予測した。

 しかし、見事に外れた。「逆」なのである。

「海鳥がいて島中で繁殖すると、あたりを踏み荒らして、地面は荒れた状態になるんです。森の中も林床の植物がまばらになります。一方で、海鳥がいなくなると、栄養分は十分に蓄積されている状況で踏み荒らすやつらがいなくなって、植物がすごく育ちます。見た目としても、そっちのほうが豊かな森というふうに見えます。つまり、海鳥がいない方が豊かに見えちゃうってことなんです。我々も、南硫黄島の調査をすることではじめてそういう認識を得て、今では共通認識にはなってきていると思います。そういう目で見たら、たとえば、御蔵島には森の中でオオミズナギドリが繁殖しますけど、踏まれてあまり林床に植物がない状態ですからね」

ミズナギドリがいる南硫黄島の森。(写真提供:川上和人)
ミズナギドリがいなくなった北硫黄島の森。(写真提供:川上和人)

コメント2件コメント/レビュー

奥が深いわー。目からうろこ!(2018/04/10 08:18)

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「外来種の駆除を保全の目的にしてはならない理由」の著者

川端 裕人

川端 裕人(かわばた・ひろと)

文筆家

1964年、兵庫県明石市生まれの千葉育ち。日本テレビの記者を経て作家に。『夏のロケット』が第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞、「SFマガジン」で「青い海の宇宙港」を連載中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

奥が深いわー。目からうろこ!(2018/04/10 08:18)

外来種は取り除き「本来の」生態系を取り戻すべし、と思っていたところに、「外来種の駆逐を保全の目的としてはならない」と言われて、目からウロコの体験をなさったんだと思います。

ならば、さらに一歩引いて、「生態系の保全ってなに?」「本来の生態系を取り戻したいのはなぜ?」「種が絶滅するのはどうして良くないの?」 . . . というところを追求してみては頂けませんか?

いままでのことろ、種が絶滅して嫌なのは感情の問題である、という答しか、まともな答を聞いたことがありません。「多様性」も気分的に語られるのしか聞いたことがない . . .

こういう議論は一切やめて、人類がこれから何千年も繁栄するにはどういう環境が良いか、という人間中心功利主義の方が、建設的な「環境改善」(「保全」ではなくて)ができそうな気もします。ある種の生物は絶滅させたほうが人間にとって良い環境ができるというようなことだって答としてあるかも知れない。

科学としての生物学は大いに推進すべきですが、気分的な環境工学(「保全」も工学です)に多大な努力を振り向けるのはどうなんだろう、と常々思っていまして、それに対する説得力のある反論が聞きたいところです。(2018/04/09 14:17)

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