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博学多才な鳥類学者は、どのように誕生したのか

森林総合研究所 鳥類学 川上和人(4)

2018年4月14日(土)

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川上さんの最初の研究テーマはメグロだった。

「学部生時代は林学の学科だったんですが、生物サークルで鳥を見てきたことから、鳥についての卒論を書きたいと思って樋口広芳先生という鳥類の先生に相談しに行きました。すると『川上くん、小笠原でメグロの調査をしないか』って言うんです。メグロというのは、特別天然記念物にもなっている鳥で、小笠原で一番保全上の価値が高いとされていました。樋口先生自身が10年前に調査して、その後にどうなっているか調べる必要があったんです。僕は小笠原ってどこにあるのかも知らなかったんですけど、予算もあるっていうし、すぐに『行きます』と言って行きました。6カ月間、かすみ網でメグロを捕獲して足輪をつけて、放して観察して、卒論はかなり基礎的なデータを取るだけで終わってしまったんですが、修士でも研究を続けて、博士課程に入ったところで森林総研に入って今に至ります」

 この時、川上さんが体験したのは、これまでやってきたバードウォッチングとは全く違う鳥の観察の仕方だった。

「メグロだけをひたすら何百時間、見続けるわけじゃないですか。単に見てるだけじゃなくて、いろんなことが気になってくるわけです。例えば、小笠原にはいろんな島がありますけど、そのうちにメグロが今いるのは3つだけなんです。飛べる鳥なのに、2キロとか3キロの海も越えずに、生まれた島にずっといる。じゃあ、なぜ遠くまで飛ばないようになったんだろうかって、進化について考えるようになって、あとは生態系の中で鳥って何の役に立ってるのかっていうのを考えるのも楽しくなってきました。鳥を守れとかよく言いますけど、実際に守りたいのは、実はひとつの種ではなくて、例えば生態系の中の多様性であったり、生態系の構造であったりとかするわけです。じゃあ、その種が絶滅したら一体何が起こるのかが、すごく重要になってくるんです。とすると、鳥って何の機能があるのか。鳥が絶滅したときに、一体何が起こるのか考えるが楽しくなっていきました」

 川上さんが、進化への関心と生態系への関心を同時にいだき、研究室では骨の標本を作って、細かな骨の違いから進化の妙に思いをはせたり、過酷なフィールドに出かけては、生態系の中での鳥の機能を考えたりするのには、こんな経緯と背景があった。

 なお、小笠原の元々の生態系を知るという意味では、非常に意義深い発見を学部生時代にすでに成し遂げているとのことで、それについても軽く触れておこう。

コメント1件コメント/レビュー

とてもユニークな視点と研究で、目が見開かされる気がします。
最近ネットでは「池のかいぼり」番組のバッシングが盛んです。曰く、外来種を駆逐する目的でかいぼりをしても、適切な運用がされていないがために、在来種も犠牲になる等々。日本古来の生態系維持という錦の御旗ですが、そもそも人間が住み着いただけで既存生態系が乱れる島嶼域の様子を見るに、自然のダイナミズムと寛容性はそんな単純なものではないのかもしれない、と思わされます。続きがとっても楽しみです!(2018/04/16 16:02)

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「博学多才な鳥類学者は、どのように誕生したのか」の著者

川端 裕人

川端 裕人(かわばた・ひろと)

文筆家

1964年、兵庫県明石市生まれの千葉育ち。日本テレビの記者を経て作家に。『夏のロケット』が第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞、「SFマガジン」で「青い海の宇宙港」を連載中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

とてもユニークな視点と研究で、目が見開かされる気がします。
最近ネットでは「池のかいぼり」番組のバッシングが盛んです。曰く、外来種を駆逐する目的でかいぼりをしても、適切な運用がされていないがために、在来種も犠牲になる等々。日本古来の生態系維持という錦の御旗ですが、そもそも人間が住み着いただけで既存生態系が乱れる島嶼域の様子を見るに、自然のダイナミズムと寛容性はそんな単純なものではないのかもしれない、と思わされます。続きがとっても楽しみです!(2018/04/16 16:02)

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