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「甘い飲み物は体に悪い」のウソ?ホント?

ケンブリッジ大学 栄養疫学 今村文昭(4)

2018年11月24日(土)

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「健康によい食事」や「体に悪い食べ物」など、健康情報のなかでも人気の「食」の話。だがそれだけに、極端だったり矛盾したりする話も多く、何を信用していいのか分かりにくいのも確かだ。そこで、食と健康にまつわる根拠(エビデンス)を提供する栄養疫学の専門家として、世界的に活躍する今村文昭さんの研究室に行ってみた!

(文・写真=川端裕人)

 前々回は、今村さんが行った「エルカ酸と心不全との関係についてのコホート研究」をひとつの事例として見た。

 社会集団を観察して、どんな要素が病気などの因子になっているのか見定める研究がどう行われるか、代表的な研究デザインであるコホート研究をざっくりと理解できたのではないかと思う。もっと知りたくなった人は疫学入門書を手にとってくださればと思う。

 そして、このようなエビデンスが蓄積してくると、それらを統合しようというモチベーションが生まれる。まずは、議論に役立ちそうな研究を抽出する系統的レビュー(システマティック・レビュー)が行われ、複数の研究を統合して分析するメタアナリシスへと続く。系統的レビューとメタアナリシスは、それらの性質上セットになっている場合が多い(ただ、メタアナリシスを伴わない系統的レビューもあるし、系統的なレビューに基づかないメタアナリシスもあるので、そこのところは注意)。

 では、今村さんが行った系統的レビュー・メタアナリシスの実例を見せてもらおう。

「いわゆる加糖飲料、砂糖が入ったソフトドリンクと糖尿病についての研究です。ケンブリッジ大学がヨーロッパの他の国々の研究機関と一緒に運営にかかわっているEPICコホートの研究を含む17の研究成果をまとめて、母集団は数十万人くらいの規模になりました。日本での研究も3つ入っています」

 今村さんがテーブルの上に差し出したのは、2015年、医学のトップ論文誌の一つである「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)」に掲載されたものだった(※1)

今村さん自身が行った「甘い飲み物」と糖尿病のリスクに関する研究を例に、系統的レビューとメタアナリシスについて詳しく解説してもらおう。

 加糖飲料(砂糖が入ったソフトドリンク)の摂取が糖尿病を患うリスクとどれだけ関係しているか推定するのに加えて、ダイエット飲料(人工甘味料が入ったソフトドリンク)とフルーツジュース(濃縮還元を含む100%のもの)についても検証している。

 そのためには、まずどんな方法で「系統的レビュー」をするのか。今村さんが見せてくれた「探索戦略(Search Strategy)」の文書では、最初はネットで検索すると書いてあった。誰もが思いつくような「戦略」だ。ただし、Googleで「ググる」わけではなく、PubMedやOVIDといった医学、公衆衛生領域の論文を集積した専門的なサイトを対象にする。恣意的に選んでいないことを示すために、ブラウザのバージョンと使った検索式まで示してあった。

(※1)Imamura F, O’Connor L, Ye Z, et al. Consumption of sugar sweetened beverages, artificially sweetened beverages, and fruit juice and incidence of type 2 diabetes: systematic review, meta-analysis, and estimation of population attributable fraction. BMJ. 2015;351:h3576.
https://doi.org/10.1136/bmj.h3576

コメント8件コメント/レビュー

科学的根拠という言葉自体が多く使われるようになってきたものの、本当にそのエビデンスが信頼できるものなのかを判断するには、質の高い専門家が必要でしょう。残念ながら、日本では医者であろうと栄養士であろうとそこまでの教育を受けた人は多くないと思います。実際私が話をした栄養士はウキペディアに載っている情報を「エビデンス」と言っていましたから…

この記事は研究に携わっていない人には少し難しいかもしれませんが、非常によく説明できていて素晴らしいです。もっともっと多くの人に読まれるといいと思います。(2018/12/09 07:18)

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「「甘い飲み物は体に悪い」のウソ?ホント?」の著者

川端 裕人

川端 裕人(かわばた・ひろと)

文筆家

1964年、兵庫県明石市生まれの千葉育ち。日本テレビの記者を経て作家に。『夏のロケット』が第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞、「SFマガジン」で「青い海の宇宙港」を連載中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

科学的根拠という言葉自体が多く使われるようになってきたものの、本当にそのエビデンスが信頼できるものなのかを判断するには、質の高い専門家が必要でしょう。残念ながら、日本では医者であろうと栄養士であろうとそこまでの教育を受けた人は多くないと思います。実際私が話をした栄養士はウキペディアに載っている情報を「エビデンス」と言っていましたから…

この記事は研究に携わっていない人には少し難しいかもしれませんが、非常によく説明できていて素晴らしいです。もっともっと多くの人に読まれるといいと思います。(2018/12/09 07:18)

ううむ。
私も、『糖尿病になるリスクは加糖飲料を飲んでいると10%上がる。ダイエット飲料だと8%、フルーツジュースだと7%上がる。証拠の強さには各々差がある。』と読みました。

読み違いがあるのでしょう。(2018/12/03 13:34)

"このあたりは、栄養疫学分野の知見が、一般にとても関心を持たれており、研究の内容が曲解されつつ独り歩きしてしまう一つの実例だ。それにしても、論文の中での解釈とは反対の意見があたかも研究結果のように語られてしまうのは、かなりつらい。"
これは他の分野でもよくあることですね。
特に地球温暖化関係で国連IPCC報告を全部読んでみると、研究者たちは一生懸命、「データからの因果関係は必ずしも明白ではありません」と言っているのに、委員会のまとめやら新聞記事では「明らかだ!」と言い切ってしまっていたり。(2018/12/01 09:54)

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保岡 興治 元法相、自民党憲法改正推進本部特別顧問