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米朝首脳会談の即断が招いた中国の心変わり

米国が仕掛ける貿易戦争に反発

2018年4月2日(月)

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夫人と共に中国に歓待された金正恩委員長(左から2人目)。左隣は李雪主夫人。右隣は習近平国家主席、一番右は彭麗媛夫人(提供:KNS/KCNA/AFP/アフロ)

 中国の習近平国家主席は3月28日、中朝首脳会談を終えた直後にドナルド・トランプ米大統領に電話をかけ、中朝首脳会談について報告した。超大国の首脳が協力して北朝鮮問題に対応しているようにみえるが、習近平国家主席の真の目的は「米中貿易戦争の危機回避」である。トランプ大統領が米朝首脳会談を即断したこと、および米中貿易対立が深まったことで、「非核化」での協力関係が揺れている。朝鮮半島をめぐる国際政治の新しいゲームの始まりだ。日本「乗り遅れ論」が指摘されているが、それに惑わされてはいけない。

 中国は昨年の米中首脳会談を境に「北朝鮮の非核化実現」に方針を変えた。中国政府高官は「非核化を約束しない限り、指導者の訪中を認めない」と北朝鮮に伝えた、と明らかにしていた。このため金正恩委員長は訪中できなかった。

 ところが中国首脳は、北朝鮮問題と貿易問題に対する米国の振る舞いを見て、方針を変えた。トランプ大統領による最近の反中的な姿勢に反発し、親北朝鮮へと姿勢を変えたのだ。

 中朝首脳会談で習近平国家主席は、これまで使っていた「北朝鮮の非核化実現」との表現を「朝鮮半島の非核化実現」に変えた。加えて、金正恩委員長の「朝鮮半島非核化への努力」との言葉を受け入れた。北朝鮮の指導者は非核化「実現」を約束したのではなく、「努力」すると述べただけなのに認めたのだ。

 「北朝鮮の非核化」は、北朝鮮に非核化実現を迫る言葉だ。一方、「朝鮮半島の非核化」は、韓国や在韓米軍の非核化も伴うから、両国が受け入れるまで北朝鮮はなお核開発を続けることができる。米韓軍は戦術核兵器を持たない。しかし、大陸や海を越える戦略核兵器を北朝鮮に向けている、と北朝鮮は主張できる。

 中国は、北朝鮮指導者の訪中や首脳会談について、米大統領に直接説明することはなかった。中国は、長い歴史の中で、朝鮮半島の国家を自国の影響下にある小国とみなしてきており、他国の関与を許さなかった。

 トランプ大統領はツイッターで「金正恩氏からの伝言を習近平氏から受け取った。『私との会談を楽しみにしている』とのことだ」とつぶやいた。中朝首脳会談の報告というのは口実で、中国製品に高関税を課せば貿易戦争になる、北朝鮮の非核化について協力するのは難しくなると示唆したはずだ。

北朝鮮が抱く恐れを利用して、米国の武力攻撃を牽制

 中朝関係は、2月までは最悪の状態にあった。金正恩委員長は、権力者のトップに就いて以来7年も中国を訪問しなかった。それなのに、突然、訪中したのはなぜか。

 中朝首脳会談が急遽実現した謎を解く鍵が、中国側が発表した会談内容にあった。金正恩委員長は次のように述べた。「朝鮮半島の情勢は、重要な変化が起きている。情義の上でも道義の上でも、私は時を移さず、習近平総書記と対面して状況を報告すべきでもあった」。これは 明らかに「これまで訪中せず、すみませんでした」との意味だ。

 また金正恩委員長は「我々の訪問提案を快諾した習近平主席に感謝する」とも語った。北朝鮮は、南北首脳会談と米朝首脳会談の提案について、事前に中国に説明しなかった。中国は相当に怒っていた。

 中国のテレビは首脳会談報道で、習近平国家主席のくつろいだ様子と、北朝鮮の若い指導者が緊張した表情でメモを取る場面を、繰り返し流した。北朝鮮が中国の指導下にあると思わせる演出だ。

 その代わり、非公式の訪中にもかかわらず、金正恩委員長をトランプ大統領並みに歓迎・歓待した。さすがだ。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が訪中した時の応接とは比較にならなかった。文在寅大統領との会談や祝宴には、中国首脳部のわずかな幹部しか同席しなかったのに、金正恩委員長との席には北朝鮮側より多くの高官が居並んだ。

 北朝鮮は、トランプ大統領が「米朝首脳会談受け入れ」を即断したことに衝撃を受けた。対話派であるレックス・ティラーソン米国務長官の解任と、軍事攻撃を主張するジョン・ボルトン元米国連大使の大統領補佐官起用に、軍事攻撃の恐れを強くしたため、首脳会談を提案したという。

 習近平国家主席は、北朝鮮の恐れをふまえて、中朝首脳会談に応じた。反中に傾き貿易戦争を仕掛けるなら、北朝鮮問題では協力できないとの意向を米国に向けてにじませた。中朝首脳会談で「平和的解決」を強調することで、米国による軍事攻撃を牽制したのだった。

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「米朝首脳会談の即断が招いた中国の心変わり」の著者

重村 智計

重村 智計(しげむら・としみつ)

東京通信大学教授 早大名誉教授 韓国同徳女子大客員教授

1945生まれ早大法卒。79年毎日新聞ソウル特派員、89年同ワシントン特派員。この間、韓国高麗大、米スタンフォード大留学。北朝鮮に傾斜する日本の朝鮮問題報道を変えた記者の一人。金芝河釈放、ベン・ジョンソンのドーピングなど多くの特ダネ報道。著書は「日韓友好の罪人たち」(風土デザイン研究所)など多数。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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