• ビジネス
  • xTECH
  • クロストレンド
  • 医療
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

米朝出直し、矛を収めた米国の「地政学」的事情

あいまいな米朝合意が導く「戦域核による抑止論」

2018年6月7日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

トランプ米大統領が6月1日、一度は中止を表明した米朝首脳会談を当初の予定通り12日に実施すると発表した。北朝鮮の“泣き”を受け入れて開催を再度決めたにもかかわらず、米国は条件面で譲歩したように見える。その背景に何があるのか。地政学的視点の重要性を説く秋元千明・英国王立防衛安全保障研究所アジア本部所長に話を聞いた。

(聞き手 森 永輔)

金正恩委員長の側近、金英哲氏(左)をクルマまで送って出たトランプ米大統領(右から2人目)(写真:AP/アフロ)

ドナルド・トランプ米大統領が6月1日、米朝首脳会談を当初の予定通り12日に実施すると発表しました。それは良いとして、その後の展開は不思議な様相を呈しています。米国が条件を緩和しているように見えるからです。トランプ大統領は訪米した金英哲(キム・ヨンチョル)氏に非核化は「ゆっくり進めてください」と発言。「『最大の圧力』という言葉はもう使いたくない」「対話が続いている間、追加制裁はしない」と語ったことも報じられています。

 トランプ大統領は5月24日に同首脳会談の中止を表明。これに対して北朝鮮はわずか8時間後に反応。金桂官(キム・ゲグァン)第1外務次官が「わが方はいつでも、いかなる方式でも対座して問題を解決していく用意があることを米国側にいま一度明らかにする」(朝鮮中央通信5月25日)とまるで泣きを入れるような談話を発表しました。ここから12日開催に向けた再調整が始まりました。

秋元:北朝鮮の核問題は2つの軸で見る必要があります。1つは非核化そのものです。

 この点について、米国の姿勢に変化はないと思います。「CVID(完全で検証可能かつ不可逆的な非核化=Complete, Verifiable, and Irreversible Dismantlement)」を求める意思にブレはありません。「一括」 での実現を求めていた非核化について、最近では時間をかけて実現するような表現をしていますが、そもそも非核化は短期間でできるものではありません。たった1回の会談で非核化に関する全ての事項に合意し、その実現のための行動計画でも合意するのは困難です。

 非核化の実現にかかる期間をCIA(米中央情報局)は6カ月、国務省は2年程度としています。もっとも、これは北朝鮮がもし本気で非核化に応じればの話であり、私は懐疑的です。

秋元千明(あきもと・ちあき)氏
英国王立防衛安全保障研究所アジア本部(RUSI Japan)所長。 早稲田大学卒業後、NHKに入局。30年にわたって軍事・安全保障分野の報道に携わる。1992年、RUSIの客員研究員に。2009年に同アソシエイトフェローに指名された。2012年にNHKを退職し現職に就く。大阪大学大学院で招聘教授、拓殖大学大学院で非常勤講師を務める

 通常の首脳会談なら、こうした点を詰めて合意できるとの確証を得てから、首脳会談の開催を決断します。しかし、今回の場合、3月8日に韓国の特使、鄭義溶(チョン・ウィヨン)大統領府国家安保室長がトランプ大統領と会談し、金委員長がトランプ大統領との会談を熱望していると伝えると、同大統領がその場で受け入れてしまいました。つまり詰めの作業が後回しになってしまったのです。この点を考え合わせれば重要な問題が未解決のまま先送りされることになる可能性は否定できないでしょう。

 「『最大の圧力』という言葉はもう使いたくない」という発言は確かに腰が引けているように聞こえますが、1週間後に首脳会談が控えているのです。この段階で交渉相手を刺激するような発言をするのは賢明ではありません。

朝鮮戦争の終結にも米国は触れていますね 。

秋元:これも象徴的な意味しかないと考えます。朝鮮戦争の終結は、休戦協定が結ばれた時から将来の目標としてずっと掲げられてきましたし、事実上戦争はずっと前に終わっています。ただし、在韓米軍の撤退の口実として使われないよう警戒する必要があります。

コメント10件コメント/レビュー

 「中国が南シナ海の環礁を埋め立て軍事拠点化し、緩衝地帯を築くのは、南シナ海を足場に将来、外国へ進出しようというものではなく、自国の周辺に友好国や同盟国が存在しないから、安全地帯を作っておきたいのです。北朝鮮に対してもそうです」の部分を除き、ほぼ賛成。
 中国について、非常に甘いのは何故か? 個人的事情か?欧州の影響か?(2018/06/07 18:56)

オススメ情報

「混迷する朝鮮半島」のバックナンバー

一覧

「米朝出直し、矛を収めた米国の「地政学」的事情」の著者

森 永輔

森 永輔(もり・えいすけ)

日経ビジネス副編集長

早稲田大学を卒業し、日経BP社に入社。コンピュータ雑誌で記者を務める。2008年から米国に留学し安全保障を学ぶ。国際政策の修士。帰国後、日経ビジネス副編集長。外交と安全保障の分野をカバー。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

 「中国が南シナ海の環礁を埋め立て軍事拠点化し、緩衝地帯を築くのは、南シナ海を足場に将来、外国へ進出しようというものではなく、自国の周辺に友好国や同盟国が存在しないから、安全地帯を作っておきたいのです。北朝鮮に対してもそうです」の部分を除き、ほぼ賛成。
 中国について、非常に甘いのは何故か? 個人的事情か?欧州の影響か?(2018/06/07 18:56)

>「『最大の圧力』という言葉はもう使いたくない」

私には、これは、「もう使わせるなよ」という脅しに聞こえるが如何だろうか。

>国境を接した北朝鮮が親米政権になるなど悪夢です。

その為に、赤化統一連合国化した朝鮮半島を新たな緩衝地帯にする腹ではないか?そして韓国は自ら猛ダッシュでその方向に爆走しているように思えてならない。

トランプ大統領は、手ぶらで帰国するようなタマとは到底思えない。会議が決裂する事も充分想定して置くべきだろう。

あとはトリックスターたる我らが文大統領だが……近年まれに見る「無能な働き者」がどれだけ怖いか、後の歴史の教科書に深く刻まれる事になるだろうか……(2018/06/07 17:34)

現状の日本の大手マスコミ報道の論調を一蹴してるのには、笑えてしまいます。

さて、コラムを読んで思ったのは、トランプ大統領が12日に、何を求めているのかが、益々分かりにくくなりました。

当初は、直接、金正恩に最後通牒を突きつけるためと言われましたが、現状の北朝鮮のドタバタ劇を見ると、既に金正恩には米国の本気は理解しているようです。
では何故、トランプ大統領は12日開催に拘るのか?

シャングリラ会合でも分かるように、日米連携の対中包囲網は形を見せ出していることと関係があるのでしょうか?
いっそ、金正恩が12日の会談を利用して第三国への亡命を米国に打診している方が納得いきます。

もし、米国が北爆を開始したら、日本国内でテロ活動が起こると分析している方もいましたが、現在、どうなるのか全く予断を許さない状況です。
そのような中で少しでも、大手マスコミ報道には無い情報を提供をしている日経オンラインには、本当に期待しております。(2018/06/07 15:47)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

影響力がある方々の発信力や突破力につないで実現にこぎ着けるほうが多かった。

保岡 興治 元法相、自民党憲法改正推進本部特別顧問