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非核化の義務を負うのは「米朝」でなく「北朝鮮」

「核」より「お家の事情」が優先

2018年6月14日(木)

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完全な非核化よりお家の事情

 米朝両首脳はともに、国内の「抵抗や批判」にさらされる共通の悩みを抱える。そのため、批判を抑えるための「ライブ・ショー」を共演した。米国では、11月の中間選挙に向けた選挙戦がすでに幕を開けた。中間選挙で共和党が勝利しないと、トランプ大統領は議会で弾劾されるかもしれない。支持率を上げる必要がある。

 だから会談は、米国の夜のテレビニュースに間に合うように、日本時間午前10時(米東部時間午後9時)に始まった。米テレビは、いずれも緊急生中継で大々的に報じた。会談後の記者会見も、朝のモーニングショーに間に合うよう午後5時過ぎに設定された。米テレビは、特集で報じた。

 トランプ大統領にとって今回の首脳会談は、「核問題解決」よりも「中間選挙対策」が大きな目的だった。中間選挙で負ければ、大統領弾劾の危機に直面し、核問題も解決できない。

 一方、金正恩委員長も国内の「抵抗勢力」による「暗殺」や「クーデター」の危険が常にある。軍部の中には、口には出さないが「核放棄反対」「米帝の首魁と会談するなどとんでもない」との空気がある。それを抑えるために、米韓合同軍事演習の中止などの成果がほしい。だから、トランプ大統領は「米韓合同軍事演習中止」に言及してあげた。

朝鮮半島の非核化は「北朝鮮の非核化」

 共同声明は、当初期待されたCVIDに、まったく触れなかった。これに対して「成果がない」との声が聞かれる。トランプ大統領は、記者会見で「そこまで時間が足りなかった」と正直に述べ、米朝高官による交渉を直ちに開始すると語った。

 それでも、共同声明には注目すべき表現があった。声明は「金正恩委員長が『朝鮮半島の完全な非核化』を再確認した」と2度も触れた。板門店宣言においてこれまでの北朝鮮の「朝鮮半島の完全な非核化」は、南北朝鮮が共に行うとの表現で合意されていた。

 この表現は、完全な非核化は北朝鮮だけが行うのではなく、韓国も行うとの意味を含んでいた。韓国は核兵器を保有しないが、北朝鮮は「米国の核の傘」の撤去を求めた。これは、米国がグアムに配備する核の撤去をも含む表現であった。つまり、北朝鮮の立場は、「朝鮮半島の非核化」は、米国がアジア太平洋で非核化することも含んでいた。

 米朝首脳会談の共同声明は、北朝鮮によるこの解釈を明確に退けた。共同声明は、「北朝鮮が朝鮮半島の非核化」を約束したと表現している。「米国と北朝鮮は、朝鮮半島の非核化を約束した」とは、表現していない。完全な非核化をする主語は、「北朝鮮」だけであった。これは、「朝鮮半島の完全な非核化」は金正恩委員長が取り組み実行する、との意味になる。「米国の核の傘」問題は、なくなったのだ。

 この結果、共同声明は「朝鮮半島の完全な非核化」との表現を使ってはいるが、「北朝鮮の非核化」を意味することになる。そのうえで、ポンペオ米国務長官が「できるだけ早い日程で」北朝鮮高官と交渉に入ると明記しており、「核交渉」は継続される。これが、「非核化」についての首脳会談の唯一の成果であろう。

コメント25件コメント/レビュー

専門知識も正確な情報に触れる立場にもない自分としては、これまでの北朝鮮の約束破りの歴史しか知らないので、今後実際にどんな行動をとるのかをもって判断するしかない。

独裁国家においては、 国家国民の利益≠独裁者の利益 であることも多いので、誰の視点でとらえるか?によっても成否の解釈は違ってくる。
それだけに多様な見方や解説に接する事ができることこそ、情報を得る自由の証だろう。北朝鮮側は金委員長マンセーしか許されていないのだから。

国民からの糾弾も選挙による落選も無く、失敗のツケは国民が黙って受け入れさせ、国民の生命財産を守る事を最優先しない国の元首の外交が、それらがある民主主義国家の元首のそれよりも指導力に富んでいるように見える現象、またそれを持ち上げる報道には注意が必要に思う。(2018/06/17 00:05)

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「非核化の義務を負うのは「米朝」でなく「北朝鮮」」の著者

重村 智計

重村 智計(しげむら・としみつ)

東京通信大学教授 早大名誉教授 韓国同徳女子大客員教授

1945生まれ早大法卒。79年毎日新聞ソウル特派員、89年同ワシントン特派員。この間、韓国高麗大、米スタンフォード大留学。北朝鮮に傾斜する日本の朝鮮問題報道を変えた記者の一人。金芝河釈放、ベン・ジョンソンのドーピングなど多くの特ダネ報道。著書は「日韓友好の罪人たち」(風土デザイン研究所)など多数。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

専門知識も正確な情報に触れる立場にもない自分としては、これまでの北朝鮮の約束破りの歴史しか知らないので、今後実際にどんな行動をとるのかをもって判断するしかない。

独裁国家においては、 国家国民の利益≠独裁者の利益 であることも多いので、誰の視点でとらえるか?によっても成否の解釈は違ってくる。
それだけに多様な見方や解説に接する事ができることこそ、情報を得る自由の証だろう。北朝鮮側は金委員長マンセーしか許されていないのだから。

国民からの糾弾も選挙による落選も無く、失敗のツケは国民が黙って受け入れさせ、国民の生命財産を守る事を最優先しない国の元首の外交が、それらがある民主主義国家の元首のそれよりも指導力に富んでいるように見える現象、またそれを持ち上げる報道には注意が必要に思う。(2018/06/17 00:05)

この共同声明はNon-binding,すなわち法的拘束力のないものですね。
ということは、一見北朝鮮は半島非核化の実行責任を負ったかに読めますが、実際にやるかどうかは今後にかかっている。しかしながら今までの成績から判断するに、信頼すべき証拠は一切見当たらない。
米メディアの評価が否定的なのは、その辺りにあるかと思います。全てまた見せ掛けだけに終るのではないかと。(2018/06/16 15:58)

会談の成果についてトランプ批判を前提にした頓珍漢な解説が多い中で正鵠を得た内容だと思いました。問題はまさに両国の国内事情であると確信します。(2018/06/15 07:20)

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僕は独裁だとは思っていないんですよ。 だって、業績を見てください。 赤字はないですよ。ずっと、よりよくしてきた。

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