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痛みを伴う「年金抜本改革」を誰が言い出すのか

「年金カット法案」を巡る与野党攻防は茶番劇

2016年12月2日(金)

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11月25日、民進党などが反対する中、与党は衆院厚生労働委員会で年金制度改革関連法案の採決に踏み切った。その後、29日に衆院本会議で可決され、参議院に送られた。(写真:つのだよしお/アフロ)

「反対しました」という形が欲しい

 野党が「年金カット法案」とレッテルを貼る年金制度改革関連法案が11月29日、衆議院本会議で可決され、参議院に送られた。国会会期は12月14日まで延長されており、政府・与党は何とか今の国会で成立させたい意向だ。年金支給額の新たな改定ルールを盛り込んだ今回の法案には、民進党、自由党、社民党、共産党の野党4党が反対。自民党と公明党、日本維新の会などが賛成した。野党は衆議院での法案通過を阻止するために、衆議院厚生労働委員会の丹羽秀樹委員長の解任決議案と、塩崎恭久厚生労働大臣に対する不信任決議案を提出。否決されると、民進党、自由党、社民党は本会議場から退出、法案の議決には加わらなかった。

 会期末が迫るとしばしばみられる「茶番劇」である。民進党は、「年金カット法案をいい加減な審議で通すことに断固反対だ」としているが、民進党が求めるように審議時間を増やせば今国会での成立は絶望的になる。また、審議時間を増やしたからといって民進党が賛成に回る可能性はまずない。「年金の減額につながる法案に私たちは反対しました」という形が欲しいのだ。

抜本改革を議論するというのは結局、問題の先送り

 民進党はさらに「今の高齢者から将来の世代まで、まともな額の年金をもらえるように抜本改革に今すぐ取り組むべきだ」とも主張している。これは正論だ。年金制度の抜本改革の議論は今すぐにでも着手すべきだが、だからといって、抜本改革の議論を始めて今国会で成立することなどあり得ない。今回の法案を止めて、抜本改革を議論するというのは、結局は問題の先送りになるだけだ。

 それは民進党の議員の多くも十分に分かっている。年金の支給額を抑制しなければ、今の制度がもたないことも十二分に理解している。

自民党など与党の主張にもウソ

 一方で、自民党など与党の主張にもウソがある。衆議院での討論で、自民党は「法案は、公的年金制度の持続可能性を高め、将来世代の年金水準を確保することによって、将来的にも安心な年金制度を構築するためのものだ」と述べたが、この法案で将来にわたって安心な年金制度になるわけではない。これもマヤカシなのだ。長年政府は、「百年安心プラン」といった言葉を使って、年金制度にマクロ経済スライドという仕組みを導入すれば、制度は持続可能だと言い続けてきた。

 2004年の法改正で、毎年年金掛け金を引き上げる一方で、経済情勢で年金支給額を増減できるようにしたのだ。年金給付を減らして将来世代に回すなど制度全体で「完結」するようにはなっているが、あくまで机上の論理。実際には年金制度は維持できたとしても、高齢者がその年金の金額で生活できなくなったり、逆に、若年層が年金掛け金の負担に耐えられなくなる可能性は十分にある。制度を司る厚生労働省は安心かもしれないが、生活者の不安は解消されない。

コメント3件コメント/レビュー

日本の年金は、基本的に賦課方式である。十分な経済成長がない限り、年金受給者増大の下では、年金財政は必然的に苦しくなる。根本の解決法は、高い経済成長と賃金上昇の実現であるが、これが叶わなかったことが、年金カット法案提出の背景である。経済成長が低迷する限り、更なるカット法案が今後目白押しとなろう。
前回の年金改革が「百年安心」を謳ったものであることを考えると、この年金カット法案は経済を浮揚し損ねた失政の付けを年金受給者に回すものでもある。
また、厚生年金の平均支給額は月15万円足らずである。ゆとりのある高齢者はそんなに多くない。政府は勤労世代の負担を抑えることができると言っているが、私的扶養を増大させる年金カットは、社会連帯による負担から家族間・親族間共食いに転換させるだけである。社会保険料と税だけが負担ではない。
年金などは再分配の技術問題に過ぎず、これだけを取り上げ、世代間の公平を言い募るのは、不必要な対立を煽るものである。国民は、その生産したGDPの中で生活しており、その拡大がない限り、生活水準向上はない。政府支出減少を招く社会保障削減は財務省を喜ばせるが、GDP減少に繋がる場合がある(2016/12/02 20:22)

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「痛みを伴う「年金抜本改革」を誰が言い出すのか」の著者

磯山 友幸

磯山 友幸(いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

ジャーナリスト。1962年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞で証券部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め2011年3月末に独立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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日本の年金は、基本的に賦課方式である。十分な経済成長がない限り、年金受給者増大の下では、年金財政は必然的に苦しくなる。根本の解決法は、高い経済成長と賃金上昇の実現であるが、これが叶わなかったことが、年金カット法案提出の背景である。経済成長が低迷する限り、更なるカット法案が今後目白押しとなろう。
前回の年金改革が「百年安心」を謳ったものであることを考えると、この年金カット法案は経済を浮揚し損ねた失政の付けを年金受給者に回すものでもある。
また、厚生年金の平均支給額は月15万円足らずである。ゆとりのある高齢者はそんなに多くない。政府は勤労世代の負担を抑えることができると言っているが、私的扶養を増大させる年金カットは、社会連帯による負担から家族間・親族間共食いに転換させるだけである。社会保険料と税だけが負担ではない。
年金などは再分配の技術問題に過ぎず、これだけを取り上げ、世代間の公平を言い募るのは、不必要な対立を煽るものである。国民は、その生産したGDPの中で生活しており、その拡大がない限り、生活水準向上はない。政府支出減少を招く社会保障削減は財務省を喜ばせるが、GDP減少に繋がる場合がある(2016/12/02 20:22)

広く薄く相続税、ですか。
とるに越した事はないでしょうけど、そんなものじゃ焼け石に水では。
現金を多額に残していればともかく、家しか残してないような人
さらにこれからは不動産すらない人も続々とでるしょうし
そこからとったところでどれほどになるのか。
結局広く薄くと言えば消費税しかないですよね。
まぁそれを意識して、でも消費税と言うと叩かれるから
「広く薄く」なんて言ってるんだと思いますけど。

個人的には消費税で構わないと思うというか
他に方法がないですけど
自民党も民主党も馬鹿げた党利党略ではなく
これに関しては超党派で対応して頂きたいものです。(2016/12/02 10:14)

あなた方は―、錬金術師か!? ぼく? 私?とおとぼけを決めている面々が霞が関にうようよ。2%のインフレ化が成就できたのかい、就労率上昇に付け替えて宣うのでなく、掲げた賃金はキチンと上がったのかい。グローバル化経済とか称する出来の悪い錬金しかやれないで、立法府だと言いつつ法律を弄るだけが能のように、いい加減な予測や試算をして見せて素朴な民を騙すような施策はいただけない。錬金なら目下アメリカのトランプ氏に見習い中だが、乱高下の激しいニッポンの年金は生活費として当てにせず、支給年金は素直に頂戴してせっせと国債を購入しろと、天からも示唆に富む声なき声が聞こえる昨今である。こうすれば又試算と予測は大きく外れ失政の誹りを免れない。びっくり箱から飛び出た次期大統領氏に早々会えた、話した、握手した等々、自らの威令はさて置き郎党の先人を相務めるような図は如何なものか。これではいつまで経っても先の大戦の終結は見込めまいというものだ。今の政治家(屋)は、法律の根本を尋ねず、自分で創る事が一寸も出来なくて、手元にあるものの見直し手直しのみ、これではよい制度・政治は望むべくもない。記述にある試算は3者組織に―案に加えて、三千三百万老人の計画経済・生活設計が不能化するので元々支給分である原資から徴収に取りはぐれがないからと天引きもなしにして欲しいが如何。(2016/12/02 07:50)

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