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関空冠水で考える…空港民営化は万能薬なのか

公共財の自覚どこへ 関空運営会社の経営陣

2018年9月20日(木)

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 訪日需要が好調だ。日本政府観光局(JNTO)によると、2018年1月から6月までの訪日客は1590万人と、前年同期比で15.6%増を記録し、4月には過去最速で累計1000万人を突破した。近年は中国からのクルーズ船などもあるが、多くは空の便で日本を訪れている。

 旺盛な訪日需要を背景に、航空会社や空港運営会社の業績も改善している。成田国際空港会社(NAA)の18年3月期純利益は前年同期比41.7%増の359億1800万円、関西国際空港と大阪国際空港(伊丹空港)を運営する関西エアポート(KAP)も同67%増の283億円と、大幅な増益となっている。

 こうした中、近年相次いでいるのが空港民営化だ。先駆けとなったのは関空と伊丹。いずれも国が出資する空港会社の管轄下にある「会社管理空港」だったが、16年4月1日から純民間企業の関西エアポート(KAP)が運営している。これを皮切りに18年4月には神戸と高松の2空港も民営化を果たした。直後の5月には、19年4月の民営化を目指す福岡空港の運営権について、優先交渉権者が決まった。さらに新千歳空港を核とする北海道7空港の民営化についても、2019年7月をめどに運営会社を選定する。

 筆者は当連載で以前、空港民営化の問題点を指摘した(記事はこちら)。当時、関空に就航する航空会社の関係者から聞こえてきたのは、民営化前なら「あうんの呼吸」で進んでいたプロモーションや空港の施設運営が思うように進まなくなっている、という悲痛な声だった。

 あれから1年が過ぎた今も、残念ながら状況は好転していない。重ねて言うが、消費者にとってサービス向上につながるとされている「民営化」は、こと空港運営の手法としては、「万能薬」とは言い切れない側面があるのだ。9月4日の台風21号により滑走路の冠水など大きな被害を被った関空では、KAP経営陣が早期の暫定再開案を打ち出せなかった。現在は事実上、国主導での復旧作業が進んでいると言っても過言ではない。運営会社の業務と責任として、災害からの復旧も含まれるにもかかわらずだ。

関空を出発する再開初便となったピーチの新潟行きMM143便(写真:吉川 忠行、以下同様)

 今年4月、民営化3年めに突入した関空と伊丹の運営実態と、台風21号の被害に対するKAP経営陣の不十分な初動対応から、改めてこのことを問いたい。

民営化後に生じた「公共性」への温度差

 3空港の民営化は、国や自治体に所有権を残したまま運営権を売却する「コンセッション方式」で実施。KAPはオリックスと仏空港運営会社ヴァンシ・エアポートのコンソーシアムが設立したもので、株式はオリックスとヴァンシが40%ずつ同率で持ち、関西を拠点とする企業・金融機関30社が残り20%を保有している。

 2017年度の旅客数が、国際線と国内線合わせて前年度比12%増の2880万2506人と、3年連続で過去最高を更新した関空。このうち国際線は14%増の2190万人と6年連続で前年度を上回り、開港以来の年度合計として、2000万人を初めて突破した。さらに外国人に絞ると、68.5%を占める2190万人。日本人が海外へ向かう空港というよりは、訪日客の玄関口としての存在感が増している。これは同時に、訪日客を増やしていきたい政府にとって、関空が戦略的に重要な位置にあることも意味している。

コメント36件コメント/レビュー

>(2018/09/22 04:55)

国際線・長距離線が関空に移管して使用機材が小さくなったのと、機体(のエンジン)自体が改良で低騒音化したため騒音が小さくなり、飛行機側の問題が小さくなったこと、
加えて、
地元経済の空港への依存度が大きく、廃港にしたときの悪影響が大きいこと、跡地の利用について、あれだけの土地・整備したインフラを有効に使える別のものが見当たらない、ということから誰も廃港を言えなくなったのです。

廃港にすべき、というのはよいのですが、なんかいいアイデアありませんかね?

関西人が困ってもいい、とは言うけど、安易にやると国が痛むんですよ。どうせ国主導でないとできないことなんでね。(2018/09/27 13:22)

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「関空冠水で考える…空港民営化は万能薬なのか」の著者

吉川 忠行

吉川 忠行(よしかわ・ただゆき)

Aviation Wire編集長

ライブドアで同業初の独自取材部門「ニュースセンター」立ち上げに参画。ライブドア事件も内側から報じる。退職後はAFP通信社等で取材を続け、2012年2月Aviation Wire創刊。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

>(2018/09/22 04:55)

国際線・長距離線が関空に移管して使用機材が小さくなったのと、機体(のエンジン)自体が改良で低騒音化したため騒音が小さくなり、飛行機側の問題が小さくなったこと、
加えて、
地元経済の空港への依存度が大きく、廃港にしたときの悪影響が大きいこと、跡地の利用について、あれだけの土地・整備したインフラを有効に使える別のものが見当たらない、ということから誰も廃港を言えなくなったのです。

廃港にすべき、というのはよいのですが、なんかいいアイデアありませんかね?

関西人が困ってもいい、とは言うけど、安易にやると国が痛むんですよ。どうせ国主導でないとできないことなんでね。(2018/09/27 13:22)

覚悟という言葉がキーワードと感じました。首都圏や地方都市で、個人商店や地場の企業が経営していた店がチェーン店に代わってしまうケースが目立ちます。その中で採算が合わないと短期間で撤退し、空き店舗や空き地に代わってしまうことも多いと感じます。捨てることができない、逃げることができないということは、経営や営業を続けるうえで、少なくともそうしたサービスを必要としている人たちにとっては、重要でしょう。安易な民営化には、そうした「市場の失敗」に対して無自覚であるという問題が潜んでいるわけですね。(2018/09/24 10:29)

>> JR北海道が「経営再建」の御旗の元、公共交通機関としての使命を見ないようにしている

これは違います。

・道内長距離輸送を、他の公共交通機関である高速バスにとられてしまった。
・ローカルな公共交通としても、バスのほうが維持が容易である。

公共と名前がつけば、なんでも維持できるというものではありません。(2018/09/22 19:00)

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