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「注文だ。収穫してくれ」では現場は回らない

農業、トヨタの「カイゼン」に出会う(2)

2017年1月20日(金)

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 前回に続き、家業からどうやって企業に脱皮するかが今回のテーマだ。紹介するのは、約6年間務めた大工の仕事を20代前半でやめ、実家で就農した宮野義隆さん(2017年1月13日「なぜ水田でレンコン?『3K仕事に商機あり』」)。父親や兄がつくっていたコメではなく、選んだ作物はレンコンだ。

 雑草が生い茂る耕作放棄地を手作業で開墾し、水の張ったレンコン畑で極寒の季節に収穫するなど、仕事は予想以上にきつかった。だが、苦労のかいがあり、コメよりずっと高い収益を実現できた。宮野さんがつぎに直面した課題が、会社という組織づくりだった。

スタッフも望んだ法人化

 宮野さんが兄の一(はじめ)さんとともに、農事組合法人のOne(金沢市才田町)を設立したのは、2013年だ。レンコンを収穫しながら、ふとスタッフの将来のことが頭をよぎった。「自分は農業を続ければ、老後も何とかなる。でも、彼らはこの先どうなるんだろう。このままでは何の保証もない」。

 そのことをスタッフに話すと、「個人経営より会社のほうがいい」という意見で一致した。法人化すれば、年金などの福利厚生を社員に提供することができる。中小企業にとって、社会保障の負担は軽くはないが、それに耐えきれないような経営に甘んじるつもりもなかった。規模拡大も視野に入れ始めていた。

 少し前に亡くなった父親の英喜さんの言葉も背中を押した。「一と義隆は2人で一人前だ。一緒にやったほうがいい」。「2人で一人前」は親心の表れで、ようは「力を合わせて家業を発展させてほしい」という意味だろう。そこで、兄が手がける稲作とレンコン部門を一緒にし、会社を立ち上げた。

 稲作と一緒になることは、従業員にとってもメリットがあった。レンコンの農閑期の6~7月に、スタッフが田んぼの作業を手伝っていたからだ。組織をひとつにすることで、通年雇用の形が整う。

 当然のことだが、形だけ会社にしただけで、組織がうまく回るわけではない。「会社というものがわかっていない」。そんな思いをつのらせていた宮野さんにとって、2016年は転機の年となった。

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「「注文だ。収穫してくれ」では現場は回らない」の著者

吉田 忠則

吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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