• ビジネス
  • xTECH
  • クロストレンド
  • 医療
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

外国人が買う1万円のイチゴ、その先を考えよ

JTB・高橋広行社長に聞く「食と農」の可能性

2018年7月20日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 農業政策の目的は何か――。この連載を続けながら最近、とくにそのことを考えるようになった。今回はインバウンド(訪日外国人)を対象にしたJTBの旅行ビジネスがテーマなのだが、本題に入る前に農政について考えてみたい。

 そもそも農政は何のために必要なのか。例えば、農業は長い間、規制改革の対象とされてきた。農家の経営を株式会社に衣替えできるようにし、企業参入を促し、農協に改革を迫る。今国会では農地法が改正され、植物工場を造りやすくすることも決まった。

 筆者が初めて農業を取材したのは、1990年代半ばのことだ。そのとき、「育成」と言う言葉が政策のキーワードになっていることに、強い違和感を覚えた。民間である農家の経営を、政策で育てるとはどういうことか。何という上から目線!だが、政府による保護を強く求める農業界の姿を見ると、育成の対象とされるのも仕方がないように感じた。

 あれから20年以上たち、育成という言葉はあまり聞かなくなった。企業的な農業経営は今や当たり前になり、中には県の中小企業団体の代表を務める農家まで登場した。幾度もの挫折を経て、企業の農業ビジネスもだいぶ洗練されてきた。農協の意識改革も進みつつある。

 それではこの先、農政は何を課題にすべきなのか。農家の数が今よりずっと多く、しかも1つの選挙区から複数の代表が選出される中選挙区制のもとでは、「農家の票」には大きな意味があった。だが小選挙区制に代わり、農家数も劇的に減って、農家の政治パワーは弱まった。

 そこで引き続き、農政が必要だと考えるなら、政策のよって立つ基盤を再考する必要がある。「農家のための農政」から「国民のための農政」への転換だ。政策の目的もおのずと食料政策にシフトする。日本が国民への食料の安定供給を考えるべき時期に入ったことも、政策のシフトを促す。

 こう書くと、「日本は石油を輸入に依存しているのだから、食料問題だけ考えても意味がない」と思う人もいるだろう。正論だ。機械化が進んだ農業は今やガソリンが枯渇すれば成り立たないし、海外から食料を調達する経済力を失えば、日本人の食生活は破綻する。食料を輸入できる経済力は今後も必要だ。

 一方で、日本はシンガポールのような「都市国家」ではない。人口減少時代に入ったとは言え、1億人を超える国民を抱える以上、食料を100%海外に依存するわけにはいかない。国民に一定の食料を供給するポテンシャルの維持は、安全保障の観点からもどうしても必要になる。海外から輸入できる経済力と農地の保全という「二兎を追う」戦略が求められるのだ。

 だがここで、大きなジレンマに直面する。現状で日本は食料問題が顕在化しているどころか、大量の食料を日々捨てている「飽食の国」だ。農家が栽培技術と経営力を高めて生産を増やせば、食品過剰がさらに深刻になり、経営の足を引く。そこで、食料の供給能力を維持するには、新たに2つの戦略が必要になる。「輸出」と「農地のサービス業的利用」だ。

 最近、JTBの高橋広行社長にインタビューする機会があった。取材の目的は足元の旅行需要を聞くことにあったが、いつのまにか話題の中心は「食と農」に移っていた。高橋氏は、その中で「農業にはまだまだチャンスがある」と強調した。ではそろそろ、インタビューの中身に入ろう。

インタビューに応じるJTBの高橋広行社長

コメント2件コメント/レビュー

私は農家の出身ではありませんが、父が旧国鉄の職員で田舎の駅の助役や駅長として転勤生活を送ったため、こども時代に農村生活を体験しました。学校に農繫休暇があったり、田植えや草取り、稲刈りの体験をしました。また、1反歩ほどの農地でいろいろな野菜を栽培することの手伝いをしましたので、農業の魅力に取りつかれ、今でも庭で家庭菜園を耕し、野菜の自給に努めています。栽培、収穫、味うことには大変な価値があります。このことを農村地域の活性化の手法としていきたいと努力していますが、肝心の農家や周囲の商店・企業などが乗ってこないことに苦労します。農業が観光の対象になりえることは既に事例が多いですし、事業を進めるためには市場に結びついたパートナーの重要性を感じています。その点でこの記事は大変参考になりました。(2018/07/20 15:16)

オススメ情報

「ニッポン農業生き残りのヒント」のバックナンバー

一覧

「外国人が買う1万円のイチゴ、その先を考えよ」の著者

吉田 忠則

吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

私は農家の出身ではありませんが、父が旧国鉄の職員で田舎の駅の助役や駅長として転勤生活を送ったため、こども時代に農村生活を体験しました。学校に農繫休暇があったり、田植えや草取り、稲刈りの体験をしました。また、1反歩ほどの農地でいろいろな野菜を栽培することの手伝いをしましたので、農業の魅力に取りつかれ、今でも庭で家庭菜園を耕し、野菜の自給に努めています。栽培、収穫、味うことには大変な価値があります。このことを農村地域の活性化の手法としていきたいと努力していますが、肝心の農家や周囲の商店・企業などが乗ってこないことに苦労します。農業が観光の対象になりえることは既に事例が多いですし、事業を進めるためには市場に結びついたパートナーの重要性を感じています。その点でこの記事は大変参考になりました。(2018/07/20 15:16)

個人的には就農体験がこれからのインバウンドを支えるヒントの一つになるのではないか、と考えています。例えば、放置された棚田を手入れしインバウンド就農体験の場とする。田を耕す体験、苗を植える体験、稲の生育状況を発信し、コメの収穫体験をする。自分がかかわった稲がきれいな棚田の景観を作り出すとか、うれしくないですか?年間を通し場の提供、発信をするなどまだまだやれることはいくらでもあると思います。(2018/07/20 09:19)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

旅行業だけを追いかけて大きな成長が 見込める時代ではなくなりました。

高橋 広行 JTB社長