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「渡り職人」と「番頭」がひらく農業の未来

農業法人の宿命「社員が辞める」で始まるチームづくり

2016年11月11日(金)

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 今回のテーマは、農業のスキルをいかに組織として高めるかだ。家族が寝食をともにしながら田畑を耕す家業と違い、人が辞め、新しい人が入る。人を育てることで、経営の質が上がる。その人も、いずれは辞めていく。ヒトの体が新陳代謝をくり返しながら成長していくように、いかに経営のアイデンティティーを保つか。企業的な経営へと進む農業界全体の課題だろう。

 紹介するのは、茨城県土浦市で有機野菜を生産している久松農園だ(2015年1月16日「絶対引っくり返されない経営とは」)。脱サラし、農業を始めた久松達央さんは、たった1人で野菜をつくり、宅配などで販路を広げ、会社を立ち上げて従業員を雇うまでになった。ブログや著作で情報発信しているカリスマ農家だ。

組織を一からつくり直す

 冒頭で、「企業的な経営」を強調したが、久松さんが目指しているのは「小さくて強い農業」だ。売り上げを増やし続けてたくさんの従業員を雇い、大規模なサラリーマン組織をつくることではない。一方で、ときに家族の無償の労働に頼る家業とも違う。久松さんを中心とした小回りの効くチームといったほうがいいかもしれない。

 取材のきっかけは、久松農園のメンバーが秋に入れかわったことにある。ここ数年、生産現場を支えてきた2人のスタッフが9月末で退職したのだ。

 そのうちの1人は群馬県で10月に就農した。2年前に入社したときから、独立することを前提にしていた。初志を貫徹する力をつけることができたことは、農園の成果と言っていいだろう。久松さんも「自分の農園をつくり、腕を磨いていく人をみるのは気持ちがいい」と話す。貴重な戦力がいずれ会社を去ることは、「就農希望者」を抱える農業法人の宿命なのかもしれない。

 「たんに欠員を補充するという発想ではもろい。組織を一からつくり直そう」。そう思った久松さんは、営業や企画が中心だった自らの仕事の仕方をいったん改め、今年の年明けから農場長として現場にもどった。就農希望者を支援する場として新たに研修生を受け入れるとともに、人の募集も始めた。

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「「渡り職人」と「番頭」がひらく農業の未来」の著者

吉田 忠則

吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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