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プロ農家の「しょーがねー」に秘めた決断力

天候にあらがう農の原点

2016年11月18日(金)

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 今年の8~9月の長雨と台風は、各地の田畑に深刻な爪痕を残した。スーパーの店頭では消費者が、我が目を疑う高値のレタスを目の当たりにした。今回のテーマは、この天候不順のなかで新規就農者がなにを学んだかだ。

 紹介するのは、東京都瑞穂町で野菜をつくっている井上祐輔さんだ。就農5年目の31歳。高校を卒業して車の修理会社に就職したが、農業をやりたくて会社を辞め、茨城県の農業関係の学校に入り、有機農業を勉強した。

ベテラン農家から臨機応変の栽培技術を学ぶ井上祐輔さん(東京都瑞穂町)

 いったん仕事を辞める決断ができたのは、300万円ほど貯金があったからだ。本人は「あまりお金を使わなかったので」と話すが、貯蓄ができるというのは、個人事業である農業を始めるうえで重要な資質だ。農業学校で2年間学んだあと、さらに東京都立川市の農家で1年間研究し、26歳で就農した。

 栽培しているのは、ネギやニンジン、ジャガイモ、ホウレンソウなど。「カレー食材や給食食材って言われているものです」というが、ようは変わり種の品種ではなく、ふつうの野菜を中心につくり、生計を立てているということだ。農場でのイベント用にヒマワリもつくっている。これが台風でやられた。

イベント前に台風直撃

 例年なら秋口に、ヒマワリ畑で花を収穫したり、花から種をとったりするイベントを開く。井上さんは「築120年以上」という広い庭付きの古民家を借りて住んでおり、かまどで料理をつくってふるまうのもイベントの魅力の1つ。参加費用は約3000円だ。

 ヒマワリのタネでつくった油は後日、参加者にプレゼントする。農薬も化学肥料も使わない有機栽培で育てたヒマワリの種を、溶剤を使わず、専門のNPOに頼んで「力任せに絞る」というシンプルな方法で油をつくるのが売りだ。油を追加で買う参加者もいるという。

 今年もこのイベントを告知した矢先に、台風が畑を直撃し、ヒマワリをなぎ倒した。イベントを待つことはできなかった。泥につかると花が腐ってしまうからだ。2万本のヒマワリ畑の前に両親と立ちすくみ、「これを3人で終わらせられるのか」と途方に暮れたという。まだかろうじて立っている7000本を収穫し、ハウスで乾燥させた。

井上さんが住む古民家のかまど。イベントではここで料理をする(東京都瑞穂町)

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「プロ農家の「しょーがねー」に秘めた決断力」の著者

吉田 忠則

吉田 忠則(よしだ・ただのり)

日本経済新聞社編集委員

1989年京大卒、同年日本経済新聞社入社。流通、農政、行政改革、保険会社、中国経済などの取材を経て2007年より現職。2003年に「生保予定利率下げ問題」の一連の報道で新聞協会賞受賞。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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